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現地情報誌「ライトハウス」が人気コラム「アメリカ人と共に働く技術」をはじめ、起業・独立、マーケティングに関する情報など、アメリカでのビジネスに役立つ情報をご紹介。

ライトハウス編集部
ライトハウス編集部

183)関係を発明する

マーケティング講座

こんにちは!阪本啓一です。
新しい関係と習慣を売りましょう!


関係の発明

スターバックス創業者ハワード・シュルツは、「革新(イノベーション)とは、商品を見直すことではなく、関係を見直すこと」と言っています。私はこの考えを一歩進めて、「売れるビジネスのコツは、新しい関係の発明」と考えています。スターバックスは、人とコーヒーショップの関係を発明しました。家庭でもない、職場でもない、第3の場所(サードプレイス)というプレイスの発明。また、スターバックスで提供されるコーヒーの味も独特です。

1998年1月、LAからマイアミへトランジットする際、時間つぶしに入った空港内のお店で初めて口にした時、「何じゃこりゃ!?」と思ったものです。日本ではまずお目にかかれない初めての味で、正直、おいしいとは思えませんでした。しかし、「味」というものは習慣化するもので、今となっては、ほぼ毎日、スタバのlow fat milkで作ったラテを飲まないでは落ち着かないようになってしまっています。つまり、「コーヒーの味と人との関係=おいしいと人が思うコーヒーの味」の発明です。そして、プレイスと味の発明はやがて習慣に転化します。「スタバに行く習慣」が日本のビジネスパースンの中でできあがっています。ライフスタイルの発明とも言えます。

iPhoneは成熟化していた携帯電話と人間の新たな関係を発明しました。つまり、タッチパネルによる操作、ピンチアウト(指で拡大する)、小型パソコンとしての使用法、デジタルカメラの代用品(デジカメより画素数が良かったりします)、動画も撮れて、その場でFacebookにアップしたりクラウドに保管できる…。

アマゾンは物販に検索を取り入れることで、ショッピングと人との関係を発明しました。いまやアマゾンは本のネット販売業とは言えません。検索と決済機能が優れたショッピングモールです。

検索といえばグーグル。グーグルは、ネット上の情報と人間との新しい関係=使いやすい検索を発明したのです。

Facebookは人と人とのネットワークに新しい関係を発明しました。

カップヌードルはインスタント麺の使い方、食べ方の発明です。

東レが開発した合成繊維シルックは丸洗いできて色あせもしない着物を実現しました。それまでの着物は汚れると、縫い目をいったんほどいて反物に戻し、洗ってからまた仕立て直す面倒臭さがありました。シルックは、「簡単に家庭の洗濯機で丸洗いできる」ことを実現することによって、気軽に着物を着ることができるようにしました。つまり、人と着物の新しい関係を発明したのです。


成熟した市場こそ可能性が

疲れがたまると私は、Shanti という推拿(すいな)整体サロンに行きます。いわゆる整体マッサージなのですが、ただマッサージするのではありません。身体全体の「流れ」を看て、的確にツボを施術してくれます。力はほとんど入っていません。なのに、終わると生まれ変わったように元気になるのです。頬が紅潮するくらい。施術してくれるオーナーのMeg Haさんはテコンドーの世界的な選手でした。オリンピックにも出場するべくヨーロッパで「道場破り」をやっていた人なのですが(笑)、故障でキャリアを転換したそうです。

Shantiの提供するサービスは、マッサージというと思いっきり押したりもんだり…、と思っていた私にとってはまったく違う世界観なのです。日本は犬も歩けばマッサージ店とヘアサロンに当たります(笑)。つまり、成熟した市場なのです。にもかかわらず、Shantiは人と身体ケアとの関係を新しく発明しました。

成熟した市場ほど、新しい関係を発明するのに適しています。なぜなら、「マッサージとはこういうものだ」というステレオタイプが生活者・顧客の頭脳にできあがっているから、新しい関係の提案はわかりやすいのです。

馴染みのあまりない分野、たとえば「マダガスカル料理」というジャンルがあったとします。マダガスカル料理はポピュラーとは言えません。つまり、生活者・顧客の脳内に情報がほとんどない。ないから、新しくレストランができたとしても、それが「新しい関係の発明」かどうか、よくわからない。

成熟した市場であっても、ビジネスチャンスは「新しい関係/習慣の発明」で生まれます!

(2012年3月1日号掲載)