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アメリカでのビジネス・仕事

現地情報誌「ライトハウス」が人気コラム「アメリカ人と共に働く技術」をはじめ、起業・独立、マーケティングに関する情報など、アメリカでのビジネスに役立つ情報をご紹介。

ライトハウス編集部
ライトハウス編集部

184)バッファをなくせ!

マーケティング講座

こんにちは!阪本啓一です。
スリムに体質強化


25分減った!

愛用の腕時計。長く使ってきたので、革のベルトがボロボロになり、かわいそうな姿になってしまいました。なかなかベルト交換の機会がありません。ぐずぐずしているうちに年月が過ぎ、はっきり覚えていないのですが、「ボロボロ歴2年」くらいのひどいありさま。

一念発起し、ミーティング前に時間を無理矢理こじあけ、デパートの時計修理コーナーへ飛び込みました。ベルトを選び、いざ付け替えてもらおうとすると「30分いただいております」。時計を見ると15分後には出ないと、アポイントに間に合いません。その旨を伝えると、スタッフは後ろのちょっとした仕切りがなされている小部屋の小窓を開け、修理担当者と相談しているようでした。

「わかりました」。

結局、5分足らずでベルト交換は済みました。私は急いで仕事してもらったことにありがとうを言い、そこを立ち去りました。30分が5分になったことがうれしかった。


バッファ

ベルト交換後のミーティング・テーマがTOCでした。TOC(Theory of Constraints)とは制約理論とも呼ばれ、システム全体の最も弱いところを制約として探し出し、そこを集中して改善、解決することで全体最適を目指すマネジメント手法です(エリヤフ・ゴールドラット博士が提唱)。

プロジェクトを構成する各工程それぞれに納期があります。土木工事もプロジェクトといえます。それぞれの工程を担当する下請会社が20社あるとして、20社がリレーして全体工事を完成させます。工程1が終わったら工程2へ、工程2が終わったら3へ…。

元請会社は全体の工事計画を立てる時、各社に、「何日かかる?」と必要な納期を見積もってもらいます。すると、みんな真面目だから、必ず余裕をみた納期を言います。この「余裕」を俗に「サバを読む」と言いますが、TOCでは「バッファ」と呼びます。3日でできるのを「何かあったらいけないから」と5日と言う。

話をシンプルにするため、関係する全20社が全部同じ5日と見積もったと仮定します。すると20社×5日=100日の工程ができあがります。あくまで施工計画の段階では。ところが、「ホントのところできるかできないか五分五分でいいからギリギリ詰めたら何日かかる?」と聞くと「3日」と答が出たとします。当初の5日−3日=2日。これがバッファ。全社同じとすると20社×2日=40日の余裕ができます。全体工期100日が60日になるわけです。この40日の余裕を「みんなのバッファ」、あるいは「親方の隠し財産」的イメージで「親方バッファ」と呼びます。しかも、「五分五分でいいから」という条件で出してもらったバッファなので、半分にしてもいい。よって、親方バッファ40日は半分の20日になります。

ここで時計のベルトを思い出しました。あれはお客様の期待を裏切らないための、デパートサイドのブランドを保護するバッファだったんだと。でも、お客(つまり私)が望むものは「速度」だったのです。実際に施工を始めると、3日で終わってしまう。だってほんとは3日なんですから。ところが、5日と初めに言っていると、2日めの施工が何らかの理由で遅れたとしても「まだ3日ある」と思ってしまう。「3日しかない!」だと「今日と明日で何とかしなきゃ」となる。真面目で責任感の強い人ほど、「もらった工程5日をきっちり使って、良い品質に仕上げねば」となります。


会社の中はバッファだらけ

そう思ってみると、会社の中はバッファで満ちています。プロジェクトの納期、書類提出納期、お客様へ納品する納期、この原稿の締切(笑)…。現場の小さなバッファがマネジメントにまで上がっていく時にはかなり増幅されてしまうことが容易に予想できます。

バッファは別の表現をすると時間ですから、タイムイズマネー、それだけ余計な経費がかかっていることになります。つまり、経営体質を向上させるためには、社内のバッファをなるべくそぎ落とし、スリムな体質にしましょう。仕事の納期精度を高めるためには、仕事のやり方を全体的に見直す必要があります。ひいては、各人の仕事力も上がります。

*参考:阪本啓一公式フェイスブックページ2012/2/11付記事

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