働く
JOB

アメリカでのビジネス・仕事

現地情報誌「ライトハウス」が人気コラム「アメリカ人と共に働く技術」をはじめ、起業・独立、マーケティングに関する情報など、アメリカでのビジネスに役立つ情報をご紹介。

ライトハウス編集部
ライトハウス編集部

185)おもてなしの条件

マーケティング講座

こんにちは!阪本啓一です。

商売すべておもてなしです!

今日は、「おもてなし」についてお話しましょう。どんなビジネスでも、顧客とのこころのパイプを通わせることが第1。商品(製品・サービス)を売る前に、顧客との関係性を耕す必要があります。そのために、「おもてなし」の精神は不可欠です。

おもてなしのために必要な条件が2つあります。第1に「自発的」、第2に「見渡し」です。


自発的

LAのトーランスにあるミヤコ・ハイブリッドホテルのロビーで、人を待っていました。玄関近くに立っていたアメリカ人ホテルスタッフが急に、ベルデスク裏(私の側からは見えます)に置いているスプレーを持って、玄関を出、スーツケースを運ぶ道具の金属アーチ部分を磨き始めたのです。そこまでの身のこなし、秒速。誰かに指示されたわけではありません。ガラス越しに、気になる箇所があったのでしょう。自発的に動いていました。

私はこの姿を見て、びっくりしました。大変申し訳ないですが、サービス業に携わっているアメリカ人で、自発的にことを起こす人をこれまで見たことがありませんでしたので。むしろ何か頼むと、「それは私の担当じゃない」「○○に聞いてみてくれ」と言われるのがオチでしたから。

おもてなしの心がゆきわたっているとされる日本のホテルでも、よほどの所でないと、このような「自発的行動」に出会えるのは、珍しくなってしまっています。

同じホテル。外出から戻り、夕方の打ち合わせまで、部屋でひと仕事しようと自室に行くと、どうやらまだ掃除が終わっていないようです。と、そこへあわてた様子のメイドさんが、道具の入ったカートを押して廊下をこっちに向かって来ます。私が話しかける前に彼女は「申し訳ございません!お部屋の掃除、まだですよね?」と汗をふきふき、話しかけてきます。私はびっくりして、「構いませんが、何時には終わってますか?それまで1階のビジネスセンターで仕事してますから」と聞くと、「15分から20分以内には、必ず!」。

彼女は、私が外出先からいったん部屋に戻ることは知らないはずです。にもかかわらず、「ゲストが部屋の前でたたずんでいるという意味」を秒速で理解し、次にメイドとして自分のやるべき行動を思い描いて、遠くから廊下をダッシュしてきたのです。これも、「自発的」な行動で、感動しました。

「△×をしてください」と言われてするのは当たり前です。かゆいところを先行してかいてあげた時、初めてお客さんに感動が生まれます。自発的な行動ができる組織文化をきちんと築いているところが、ミヤコ・ハイブリッドホテルのブランドとしての強みです。


見渡し

自分のやるべき行動だけしか視界に入っていない人は、案外多いものです。

空港バゲージクレーム、荷物が出てくるベルトコンベアー近くに、係の人がいました。彼女が一心不乱に取り組んでいるのは、車いすの組立てです。何もこんなに人が集まっている場所でやらなくてもいいのに、と思いながら見ていると、コンベアがガタン、という音と共に動き出し、荷物が流れ出始めました。

と、カメラの三脚みたいな棒状の荷物が入口にひっかかって、コンベアから落ちてしまいました。荷物待ちのお客さんたちは「あ〜あ、落ちちゃったよ、あれ」と言っています。車いすに取り組んでいるスタッフの背中あたりで起こっている「事件」ですが、彼女はまったく気づきません。つまり、「見渡し」ができないのです。目では見えなくても、音や気配で感じられるはず。「自分はなぜこの場所にいるのか」という自分の仕事の定義をしっかりする。その時、全体への目配り心配りのある広い視界がある人とない人では、おもてなしの行動に大きな差が生まれます。

自発的に行動し、視界を広く「今、自分がなすべきことは何か」わかる人。おもてなしの条件です。組織全体の目標に取り入れ、事例発表会をするなどし、日常の取り組みとしましょう。

阪本さんの新著書が発売中!
『ビジネスチャンスに気づく人の57 の法則』(日経ビジネス人文庫)


(2012年4月1日号掲載)