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アメリカでのビジネス・仕事

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ライトハウス編集部
ライトハウス編集部

186)ホスピタリティ

マーケティング講座

こんにちは!阪本啓一です。

ブランドの理想形とは?

前回の「おもてなし」に続いて、「ホスピタリティ」についてお話ししたいと思います。「おもてなし」に代表される「サービス」と「ホスピタリティ」はどう違うのか。


サービス<ホスピタリティ

サービスの場合は、提供する人(主体)と提供を受ける人(客体)がはっきり分かれています。

レストランでのフロアスタッフの丁寧な接客サービスをイメージしてみてください。スタッフがゲストに対してサービスを提供し(主体)、ゲストはサービスを受け取っていますね(客体)。ホスピタリティの場合は、この主体と客体が相互依存で、主客の区別がない状態です。

お気に入りの美容室。自分の気に入った髪型は、この店のAさんでしかできない!Aさんは私の髪質や、伸びてきた時の状態まで把握してくれているから、そのような全体を把握した上で、髪をセットしてくれる。Aさんにとって私は大切なお客様で、店の経営や宣伝について相談に乗ってくれる。口コミで人も紹介してくれる。つまり、お互いになくてはならない存在なわけです。

私にとって、横須賀のT歯科がまさにこの状態で、「一筋縄ではいかない」私の歯の状態を全部把握してくださっているから、全幅の信頼を置いています。いざとなったら電話でも相談できる。T歯科にとっても私はマーケティングや人材育成の点で相談相手。と言っても、お金をいただくクライアントというわけではありません。私とT歯科、互いに「なくてはならない存在」なのです。

JOYWOWのクライアントに向き合う姿勢も、理想としているのは、ホスピタリティの状態です。互いに、「なくなっては困る!」という。

つまり、集合のベン図にすると、大きな円がホスピタリティで、中にサービスの小円が入るイメージです。不等号にするとサービス<ホスピタリティ。


唯一無二/意味がある

ホスピタリティをマトリックス(座標軸)にしてみました(左図)。顧客にとってその商品(製品・サービス)が唯一無二であり、かつ意味があるもの。右上の象限にある☆マークが理想の状態です。

巣鴨信用金庫の「がんじがらめの安心口座『盗人御用』」というサービスは、「おばあちゃんの原宿」とされる巣鴨を拠点とするだけあって、高齢者へのホスピタリティを目指して開発されたものです。キャッシュカードは発行せず、開設支店で、本人が窓口に行かないとお金が出せません。さらに、合言葉を設定します。預金を引き出そうと窓口に行くと、合い言葉を聞かれます。「好きな歌手?うーんと、誰だったかなあ。氷川きよし?違う?えーっと」当然ながら、合言葉なんて、忘れます(笑)。ご高齢者に限らず私たちですら、パスワードを忘れるのはしょっちゅう。しかし、そこがいいのです。こうして窓口でスローにやりとりしていく中で、「山田さん、本当にお孫さんですか?よろしければ私、念のためにお孫さんに連絡取ってみましょうか?」とテラーが預金者(山田さん)に提案する。そうです。振込詐欺を防止するためなのです。この商品そのものが、顧客にとって唯一無二であり、意味があります。つまり、図の☆マークになっています。

この商品の波及効果は大きく、テレビで報道されたのを始め、新規口座開設、他大手銀行からの乗り換え、預金増額、キャッシュカード盗難の経験がある若いお客様の契約など、直接的な成果につながりました。


ブランドの理想形

図の☆マークになることは、言い換えればブランドの理想形です。つまり、強いブランドは唯一無二であり、顧客にとって意味あるものなのです。

阪本さんの新著書が発売中!
『ビジネスチャンスに気づく人の57 の法則』(日経ビジネス人文庫)

(2012年4月16日号掲載)