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ライトハウス編集部
ライトハウス編集部

6)ココアでわかる市場の反射神経
【市場の反射神経】

マーケティング講座

みなさん、こんにちは! 阪本啓一です。
人間と同じく、ビジネスにも反射神経が必要なことをご存知ですか?


テレビの威力

 木曜日夜、テレビのバラエティー番組で、ココアがいかに身体にいいかを紹介していました。曰く、毛細血管を拡げるので、血液の循環が良くなる。身内に脳関係の病気をやったことのある人には特におすすめである。手足の冷え性に効く。朝の目覚めがすっきりする。二日酔いにならない。腸を活性化するので女性が気になる便秘とおさらば。お肌がツルツルになる。まさにいいことづくめです。

 ココアに含まれているポリフェノールには、体内の有害な活性酸素と結びつき、活性酸素が体内細胞を傷つけることを防ぐ「抗酸化作用」があります。また、同じくココアに含まれている遊離不飽和脂肪酸(オレイン酸やリノール酸など)が、ピロリ菌の細胞膜に作用し、菌を結果的に溶かしてしまう効果もあるようです(ピロリ菌は胃がんの原因になる有害な菌です)。そして、ココアだけでは苦いので、太らないオリゴ糖を一緒に飲むと、効き目がより良くなる、とも報道されていました。

 早速ココアとオリゴ糖を飲んでみよう、と、翌金曜日、オフィスの近くにあるスーパーへ買いにでかけました。普段ココアはコーヒーのある棚に地味に並んでいます。ところが、棚に残っているのはミルクや砂糖などが製造段階で既に配合されているタイプのものばかりで、油脂分の少ない、混ざりっ気のないピュアココアは売り切れていました。オリゴ糖は通常、砂糖や塩のコーナー(こちらも、ふだんは地味なコーナーです)に置いてあるのですが、姿を消していました。店員さんに聞くと、「すみません。皆さん、テレビをご覧になったらしく、すぐに売り切れてしまいました」とのこと。さすが、テレビの威力ですね。


四軒のうち、たった一軒〜市場の反射神経

 翌土曜日、休みなので、自宅近くのスーパー四軒を見てみました。すると、いずれの店もピュアココアは売り切れており、「混ざりものココア」なら大量に在庫がありました。オリゴ糖のあったのはたった一軒だけでした。他の店は「申し訳ございません。ただいまオリゴ糖は品切れ中です」のPOPと一緒に、棚が空っぽです。

❶市場の反射神経

 この結果をどう見るか。私は市場への反応力= 反射神経を見ます。店にとって、木曜日のテレビ放映終了の夜8時から、現在の土曜日午後2時まで、時間は42時間あったわけです。ところが、一店以外は皆、「世の中ピュアココアやオリゴ糖がないときにはうちもお手てつないで一緒にアウトです」と言っています。そんなことでどうしますか。おそらく一事が万事、他のことでも反射神経が同様なのでしょう。

❷担当者の熱い思い

 市場の潮の流れが自分にプラスに働いてきてくれているときに、逃さず販売機会を最大ギリギリまで活用する力。それは具体的には、会社の仕入れ力なのかもしれません。しかし、それよりもっと大きいことは、棚を任されている担当者の熱い思いで決まるものだと思うのです。市場がココアで熱くなっていることがわかった段階で、「では、あなた(担当者)は何をしましたか?」。こう質問してみたら、この店の市場への反射神経が測れるはずです。

❸顧客への提案力

 また、気になるのは、ココアと一緒にオリゴ糖を棚に編集して置いている店が一つもなかったこと
です。「商売する気が本当にあるのか」と言いたい。ココアはココア、オリゴ糖はオリゴ糖、別個の商品を、ただ棚を貸して、置いているだけなのです。顧客のココアライフを提案する、それくらいの気概がほしいものです。

❹ 生活者は情報武装されている

 これだけココア人気に火がついたのは、テレビで報道されたからですが、しかし、そこから先の情報流布と行動は生活者の方がスーパーよりダントツに優れています。ここにも、現代市場の特性が表れていますね。即ち、生活者のほうが企業より情報武装されている、という。市場への反射神経、さてあなたはいかがでしょうか。


(2005年2月16日号掲載)

【文・阪本 啓一