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ライトハウス編集部
ライトハウス編集部

8)電線ネットでこんなビジネスチャンスが
【地殻変動の起こる時(後編)】

マーケティング講座

みなさん、こんにちは! 阪本啓一です。
前号にひきつづき、電線ネットのビジネスチャンスについて考えましょう。


白紙に点火せよ

 家にある電源プラグに差し込むだけで高速ネットに接続できる電線ネットが2006年に実現すると、ビジネスチャンスの窓があちこちで開くことでしょう。

 もちろん、既存の既得権だけが利益の源泉になっているようなビジネスモデルの業界にとっては大いなる危機(リスク)です。あるいは、ビジネスモデルそのものが陳腐化してしまうかもしれません。例えばインターネット・プロバイダ業は電線ネットが実現した社会において、そもそも存立し得るものなのでしょうか。ADSL、光ファイバー、ケーブル、と各社激しい顧客獲得競争をしていますが、それは「現在に限定された戦い」なのであって、明日もまだフィールドは残されているのでしょうか。フィールドそのものが一夜にして消えてなくなってしまう。そんなことは「全くない」と言い切れるでしょうか。私は「試合場そのものが消えてなくなる可能性のほうが高い」と考えています。

 まさに経営者にとってはリスクです。しかし、「リスク」の語源、アラビア語の意味は「今日の糧を稼ぐ」であり、その意味ではビジネスにとって当たり前のことを言っています。イエス、「今日の糧を稼ぐ」ためにリスクはある。では、電線ネットの社会において、「今日の稼ぎ」はどこから生まれるのでしょうか。それを考えるために、次の思考アプローチを取ってみましょう。「不便の解消」アプローチです。

 電線ネットが実現すると、「これまで不便で仕方なかった何か」が解消されるかもしれない。そう、ビジネスチャンスは、このように「市場でまだだれも手をつけていない白紙」を発見し、そこに点火することで生まれるのです。例えば、住宅業界では、どんなビジネスチャンスがあるでしょうか。


家そのものにソフトがインストール

 家そのものに最初からソフトウェアがインストールされている新築住宅という商品を考えてみました。

 日本ではマンションでも一戸建てでも、新居に入居の際、「ご入居の皆様へ」というタイトルの分厚いファイルが渡されます。中には、ガス、電気、水道などのインフラの連絡窓口から始まり、給湯器の扱い方やレンジの掃除の仕方、さらには住宅会社の窓口担当の連絡先に至るまで、まるで百科事典のように豊富な内容がびっしり詰め込まれています。

 入居したての頃は「こうやってまとまっていると『いざ』という時には役に立って、いいなあ」と思います。しかし、「いざ」という時が現実に訪れた時、不思議なことに、そのかさ張るファイルは見事にどこかへ消えてしまっています。引越しのどたばたの中、大切なものであるがゆえに、どこかへ大切にしまいこまれてしまったのでしょう。しかし、不便です。

 そこで、家そのものに最初からそれらのコンテンツをインストールしておくのです。画面はリビングのテレビをモニターとし、電線を通じて、住宅会社のサーバーと直結します。インストールとはいっても、顧客の家そのものにはコンテンツを保存しておく必要はなく、ASPスタイル(註)が最適でしょう。インターネット電話で担当営業マンともすぐにつながるので、何かの問合せにも便利です。デジタルなデータは検索に力を発揮しますので、「いざ」という時に分厚いファイルを「どこだ、どこだ」とあわててめくる必要もなく、簡単に検索できるでしょう。

 この家のターゲット顧客がネットに親和性の高い、例えば30代の若夫婦などであれば、家そのものをネットで売ってもいいかもしれません。現に業界大手の大和ハウスはインターネットで家を販売する営業レスのビジネスモデルを現実に実行し、成果を挙げています(エディズ・ハウス)。

 「危機」は「危ない(ピンチ)」と「機会(チャンス)」の両方の意味を持ちます。ビジネスチャンスをつかみ取りましょう!

註: ASP =Application Service Providerインターネットを利用したレンタルアプリケーション事業の総称。アプリケーション(この場合は入居者用コンテンツ)をいちいち顧客のパソコンにダウンロードすることなく利用できるので、提供者は更新が自由にできることに、顧客はアップデートされた最新版を常に見ることができることにメリットがある。

(2005年3月16日号掲載)

【文・阪本 啓一