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ライトハウス編集部
ライトハウス編集部

11)楽天に学ぶ
【目標設定の技】

マーケティング講座

みなさん、こんにちは! 阪本啓一です。
今回も楽天に学びましょう。

前号でもご紹介しましたが、楽天の業績がいいのは、目標設定が優れているからです。
今回も事例を通じて、ご紹介しましょう。


リーダーが本気になる

 楽天を創業した年のことです。あるプロジェクトで、6月末までに50社獲得しようと目標を設定しました。奮闘努力したのですが、結果は残念ながら、4社届かず、46社にとどまりました。普通の会社なら、ここで、「残念だったね。また頑張ろう」で終わるでしょうが、楽天は違いました。7月1日午前0時30分45秒、営業チームメンバー全員に、創業者三木谷氏から電子メールが送られました。私は現物を見せてもらいました。内容は以下の3点です。

●目標達成できず残念である
●今回の目標を達成できるかどうかは一つの試金石であった。
 不可能を可能にすることが求められていた
●この目標を達成できなくして、とても世界に通用するとは思えない
 そして「明日、営業メンバーで反省ミーティングをしたい」とメールを結んでいます。

 「不可能を可能にする」「世界に通用するとは思えない」…。これまでも三木谷氏は「big talker」、大言壮語すると思われていました。たしかにこれ以上引っ張ったらキレる、というところまで、メンバーのポテンシャル一杯に高い目標を掲げる人でしたが、この一本のメールによって、社員はみな、「三木谷さん、本気なんだ」と思った由です。何しろメールに刻印されている時間がすごい。6月30日が終わってわずか30分後。ホカホカの湯気の立っているタイミングで目標達成できなかったことに対するコメントを書いたメールが、鮮度良く送られてきたわけです。しかも内容は「こんなことでは界に通用しない」。リーダーの本気度がメンバー全員に浸透した瞬間でした。そして、目標は、リーダーが腹の底から信じきっていなければ、到底メンバーに伝達されるはずもないのです。


目標を可視化する

 楽天は現在の六本木ヒルズに入居するまで4回、引っ越しを重ねています。その前は中目黒、さらにその前は祐天寺でした。私は中目黒の、雑然としたビルを知っています。活気ある社員でパンパンにあふれ返っていました。既に都内複数の場所に分散しないと収まりきらないほどの社員数に膨らんでいたのです。

 そして、楽天は引っ越しする時、常に「現在の実力よりちょっと背伸び」したクラスの物件に入居してきたそうです。引っ越ししたばかりの時には、「三木谷さん、こんな広い場所に越しちゃって、半分スペース空いていますよ。サッカーもできるくらいです(笑)」という感じらしいです。ところが、三木谷さんはこう言います。「大丈夫。すぐに(スペースが)埋まるから」。

 これはどういうことかというと、「すぐに実力がビルに追いついて業績が上がり、スペースの埋まるくらいに人が増える」。言葉を換えれば、「このビルに追いつくほどの実力を持てるようになろう」という「目標を目に見えるように=可視化」しているわけです。


経営品質は目標設定で決まる

 経営の品質は目標で決まります。「いかなる目標をいかに設定するか」がとても重要です。よくある、「シェア40%を目指せ」「利益1億を達成」「売上高100億」などは、いずれも目標ではありません。標語・スローガンの類です。例えば「利益1億」にしたところで、「なぜ1億でなければならないのか。5000万円にとどまったら1億と比較して仕事品質が50%と結論できるのか」という質問に対しては曖昧なコメントしかできないことが普通です。正解は、そのビジネスの市場での地位、成長ステージ(導入期・成長期・成熟期・衰退期)、社内リソースの配分などの仔細で慎重な検討が必要です。しかし、仮に全部わかったとしても、メンバーにはなかなか実感として全体像が理解できないことは否めません。

 目標は深くて広い分野なので、これ以上論じることができませんが、楽天に学びたいことは、「メンバーに目で見える方法で目標を示した」ことです。オフィスのスペースなら誰が見てもわかり、誰もが自分たちの立っているステージを理解できます。リーダーの本気と可視化。早速、あなたの会社でも実行してみましょう。

(2005年5月1日号掲載)

【文・阪本 啓一