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アメリカでのビジネス・仕事

現地情報誌「ライトハウス」が人気コラム「アメリカ人と共に働く技術」をはじめ、起業・独立、マーケティングに関する情報など、アメリカでのビジネスに役立つ情報をご紹介。

ライトハウス編集部
ライトハウス編集部

13)愛こそすべて
【All you need is love】

マーケティング講座

みなさん、こんにちは! 阪本啓一です。
世の中、愛がすべてですよね⁉.


●雨とニューヨークと東京の関係

 ニューヨークでの生活と、東京の生活の違いはいろいろありますが、先日、ある「事件」をきっかけに、ニューヨークでは傘を滅多にささなかったなあ、という点に気づきました。ちょっとした雨なら濡れるのも気持ちよかったので、傘なしで出かけていました。空気が乾燥しているので、すぐに乾いたせいもあるかもしれません。

 生活の習慣というのは面白いもので、そんな私も、東京で暮らし始めて長くなると、少しでも降っていたら、必ず傘を使う癖がついています。


●突然の雨に降られて

 ある午後のこと。ランチを終えて、店を出た途端、大雨。まるでそれまで我慢していたのが急に破裂したかのような「大泣き」といった感じの降り方でした。

 「参ったなあ…」とは思いましたが、約束があるので、そこでじっとしているわけにはいきません。当分やみそうもない雨足です。

 待ち合わせのオフィスまでは約20メートル。思い切って走り始めましたが、雨足ますます強く、頭を叩かれるような思いがします。だんだんメゲてきました。視界の隅に、ある店の庇が入ってくると、矢もたてもたまらず、その軒下に飛び込みました。ここまで約1分。すでに私はズブ濡れです。

 やれやれ、参ったなあ、と空を見上げながらハンカチで拭いていると、店のドアが開いて女性が顔を出し、「突然のことで、大変ですね。よろしければ、どうぞこの傘をお使いください」。

 一瞬、私以外のだれかに向けて話しかけているのかと思いましたが、周囲を見回しても、だれもいません。あらためて店を見てみると、女性用アクセサリーなどを商う小さなブティックです。これまでここには来たことがないし、もちろん買い物をした覚えもありません。いま私の目の前で傘を手にして微笑んでいる女性スタッフとは初対面です。こういうとき人間は、「どうしてこんなことをしてくれるのだろう?」と、「サービスの動機」を考えてしまいます。ちょっと哀しいことですが。でも、「どうして?」などと聞くヤボはしなくて済みました。彼女は断固とした姿勢で、キッパリ、という音がするくらいに、私の手に傘を渡してくれましたから。

 お礼を言って、オフィスに戻りました。


●ナチュラルな、顧客への愛

 ミーティングを済ませ、すぐに私は傘を返しに行きました。途中、スターバックスに立ち寄りチョコレートを買って。アクセサリー店のくだんの女性は私がその日のうちに返しに来たことに驚き、御礼として用意したチョコレートに、そんなつもりではないから、と受け取ってくれません。

 現代日本では、毎日暗い殺伐としたニュースばかりが飛び込んできます。本当に暗くて気持ちが滅入る話ばかりなので、朝、新聞を開くことが怖いほどです。テレビも、ニュースの時間が憂鬱になってきます。街を歩いていても、いつどんな災難に遭うかわかりません。それらの「暗さ」の底には、「人間への不信感」があるので、余計にしんどい思いがするのでしょう。

 しかし、話をしていく中で、くだんのアクセサリー店の経営者は(彼女が経営者だとわかりました)、こころから顧客を愛しているのだなあ、とわかりました。顧客、もっと言えば、人間そのものに対する興味、関心ですね。彼女が売っている商品は女性が身につけるアクセサリーですが、それらのモノだけを売っているのではなく、そのアクセサリーを身につけることによって顧客の生活がハッピーになることを願っているとのことです。その言葉に1ミリも嘘のないことは、傘の対応でわかると思います。打算のない、ナチュラルな顧客への愛が彼女の行動の動機なのです。


● All you need is love

 『All you need is love』、かつてビートルズは世界に呼びかけました。理念としてはわかるけれど、では、具体的にどう実行すればいいの? と思っていましたが、今日、ようやくわかりました。自分のお客さんを素直に、ナチュラルに愛することだと。

・ 店(オフィス)を自分で掃除する
・ 看板が汚れていないか、文字は遠くからハッキリ読めるかチェックし、不具合あれば直す
・ お客さんに微笑みかける
以上のことをあなたも早速、今日から実行してみませんか?

(2005年6月1日号掲載)

【文・阪本 啓一