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アメリカでのビジネス・仕事

現地情報誌「ライトハウス」が人気コラム「アメリカ人と共に働く技術」をはじめ、起業・独立、マーケティングに関する情報など、アメリカでのビジネスに役立つ情報をご紹介。

ライトハウス編集部
ライトハウス編集部

15)香りを戦略的に活用しよう
【においでとんがれ!】

マーケティング講座

みなさん、こんにちは! 阪本啓一です。
五感に訴え、顧客のマインドに刺さりましょう。


香りを戦力的に活用しよう

● 香りは時空を超える

 ヘレン・ケラーはこんな言葉を残しています。
「嗅覚は私たちを、何千マイルも、また、何十年もの時空を飛び越え運んでくれる、すごい魔法使いです」。

 においの記憶って、文字で読むより、画像や映像より、強く記憶に刻み込まれますよね。実は私、酢がダメなんです。だから寿司が食べられない。長じてからは口にしますが、幼い頃は酢を含有しているという理由でマヨネーズもサラダドレッシングも食べられなかったのです。事情を少し、お話ししましょう。

 5歳頃だと思うのですが、親戚の結婚式に呼ばれました。昔の日本のこと、披露宴会場はだれかの自宅の2階でした。きっかけは子どもの軽い好奇心からと思います。まだだれも到着していないときに階段を上がり、宴会場を覗いてみた。と、いきなりツ〜ン、と酸っぱいにおいが。テーブルに用意されていたお寿司から発する酸味のにおいが鼻を刺したのです。これ以降、酢がだめになったのです。あのときのにおいは、42年経った現在でも記憶しています。

 街で、昔の恋人のつけていた香水が香って、なんだかちょっと懐かしくいい気分になったりすることって、ないですか?

 風邪をひいたりして鼻がつまったら、たちまち食べ物の味がわからなくなりますよね。

 そう、人間の五感のうち、嗅覚は、行動を左右するほど重要な鍵を握っています。


● 香りをブランディングに生かしたシンガポール航空

 シンガポール航空は「もう1度乗りたい航空会社」として人気のエアです。私もシンガポールに行く際には必ず利用します。何より民族衣装に身を包み、神秘的なスマイルで出迎えてくれる「シンガポール・ガール」と呼ばれるフライトアテンダントのサービスが素晴らしい。ちなみに、シンガポール・ガールは1994年にロンドンのマダム・タッソー蝋人形館で展示されるほど有名になりました。

 同社は、シンガポール・ガールのように「目に見えるもの」だけにとどまるのではなく、香りという、インビジブルな「とんがり」で差異化を狙いました。オリジナルブレンドの香りを熱いおしぼりにしみ込ませ、離陸前乗客に配ります。機内は独特の香りで満たされます。このアロマはパテントを取っています。乗客のシンガポール航空「体験」は、こうして、香りによっても、記憶に残るのです。この香りもまた、重要な「シンガポール航空」ブランドのトレードマークです。もちろん、香りというものは1つ間違えれば悪臭になってしまいますので、量、頻度など、細心の注意を払って使用されています。さる調査によれば「五感ブランド」として堂々トップの地位をしめています。


● 五感ブランドベスト20とは

 ちなみにこの調査は、インターブランド社の選ぶベストブランド200社について生活者インタビューを実施したものです(出典Martin Lindstrom, BRANDsense, Build Powerful Brandsthrough Touch, Taste, Smell,Sight, and Sound, Free Press,2005)。興味深いことに、200社のうち、生活者が「五感を刺激するブランドだ」と認識したのはわずか10パーセント、20社にしかすぎない結果となったことです。ご参考までにその社名を1位から順に挙げます。シンガポール・エアライン、アップル、ディズニー、メルセデス・ベンツ、マルボロ、ティファニー、ルイ・ヴィトン、バング・アンド・オルフセン、ノキア、ハーレーダビッドソン、ナイキ、アブソルート・ウォッカ、コカコーラ、ジレット、ペプシ、スターバックス、プラダ、キャタピラー、ギネス、ロールスロイス。


● 店頭でも香りは大きな集客力になる

 店舗でも、香りは集客、あるいは店の雰囲気作りに大きな力を持っています。アメリカの生活体験で申し上げれば、ウィリアムズ・ソノマが、いかにも「ソノマ」といった独自の店内のにおいを持っていて、行くのが楽しみです。そして皆さんおなじみのスターバックス。あの緑と茶色の内装と共に、スターバックス独特の香りは、LAでも、渋谷でも、NYでも、上海でも、街角で出会った途端、何かホッとするのは私だけではないはずです。ブランドをとんがらせ、生活者・顧客のマインドに刺さる「とんがったモチーフ」になっています。

 あなたのブランド、店舗を、香りによって、「とんがった」ものにしてみませんか?

(2005年7月1日号掲載)

【文・阪本 啓一