働く
JOB

アメリカでのビジネス・仕事

現地情報誌「ライトハウス」が人気コラム「アメリカ人と共に働く技術」をはじめ、起業・独立、マーケティングに関する情報など、アメリカでのビジネスに役立つ情報をご紹介。

ライトハウス編集部
ライトハウス編集部

18)第一印象がすべて
【「らしさ」が成功を呼ぶ】

マーケティング講座

みなさん、こんにちは! 阪本啓一です。
日本は夏本番。湿度と温度の高さに参ってます。


クールビズ

 日本ではこの夏、「クールビズ(Cool Biz)」という言葉のもと、ビジネスシーンでノーネクタイ、ノージャケットでも可、という新しいスタイルが始まっています。環境省のサイトによれば「温室効果ガス削減のために、夏のエアコンの温度設定は28℃に。そんなオフィスで快適に過ごすために、環境省では夏のノーネクタイ・ノー上着ファッションを提唱しました」とのことです。それに伴い、国会でも、小泉首相を始め、議員の皆さんもカジュアルな服装で議論されています。「お堅い」イメージの大手企業でもクールビズ姿が当たり前になってきました。日本の夏は独特の高い湿度もあって、もともと防寒機能ももつネクタイは「まるで修行僧」のような苦しさがありますので、私は賛成です。

 しかし、一方、「人間としての顧客心理にはそぐわない一面がある」ことも、指摘しておきたいと思います。結論から先に申し上げれば、「顧客からプロフェッショナルに見てほしければ、『らしい』服装をするべき」ということです。

 中身より、まず外見。


この人、だあれ?

 弊社主催のビジネスマナー研修で、「サービス業は第一印象がすべて」を受講生にわかってもらうため、こんな実験をしました。

 50代男性の写真を1枚見せ、受講生に「彼の職業は何でしょう」と質問します。最初に指名した人が「大企業の役員」と答えました。しばらく間を置いたのち「正解は…」と言いながらスライドを操作すると、画面に「トヨタ北米エリア・マーケティング担当副社長」という肩書が表示されました。「この方は現在、LAのトーランスに住んでおられ、お嬢さんはハーバードで法律を勉強されています」とプロフィールを解説。

 しばらくおいたあと、「ウソです。ごめんなさい。彼はトヨタの人ではありません。本当は…」と言い、スライドに新しい肩書が。「フジテレビ メディア事業本部長」。そうなんです。有料のインターネット番組配信についてニュースが先ごろ話題になりましたが、彼がその仕掛け人です。受講生は驚きます。…しばらく間をおいて、「これもウソです。何度もごめんなさい。本当は…」と、またもや新しい肩書がスライドに。「京都大学コミュニケーションズ&コンピュータ・エンジニアリング学部教授」。

 最後に、同じ顔と肩書を3つ並べたスライドを見せ、「さて、本当の職業は?」と質問します。すると、ほぼ全員が「トヨタ北米エリア・マーケティング担当副社長」だと言うのです。もうおわかりですね。人間は最初に刷り込まれた印象から逃れられないのです(正解は、教授)。


獣医は獣医らしく

 1997年、ダラス。ある人が獣医に定期予防接種のため愛猫を連れてきました。医師は猫の歩き方のバランスが崩れていることに気づきました。猫を触診し、耳の後ろに小さな腫瘍を発見しました。悪性になるかもしれない性質のものです。医師は飼い主に説明し、許可のもと、手術して腫瘍を取り除きました。医師は、猫の命を救った。診療後、クリニックではこの医師の処置について飼い主に評価を求めました。「この医師の医学的能力をどう評価しますか」。1から10の選択肢、1が最低で、10が最高です。評価する人が医師仲間であれば、最高の10を与えることでしょう。しかし、この飼い主が与えた評価は「7」でした。「とても良い」けれども、「エクセレント」とは言いがたい。「ずば抜けて」とは、とても言えない。なぜこうなるのか。

 答。その獣医は白衣を着ていず、マドラスシャツで診察したから。顧客はプロフェッショナルに対し、「らしく」あってほしいと望みます。「見かけ」こそが、人をプロフェッショナルに見せるのです。

 このことは、提供する商品が目に見えず、品質を物理的・客観的に測定しがたいサービスである場合、非常に重要です。「中身より先に見かけ」が重視されるのです。


「予選敗退」がいやならしかるべき服装を

 顧客はアタマより先にハートで理解します。自分の大切な財産の運用を、Tシャツとジーンズの株式投資コンサルタントへ任せようとは思いません。中身に自信があるのであれば、なおさら、顧客のマインドの入口で「予選敗退」の憂き目に遭うことのなきよう、「らしい」服装をするようにしましょう。

(2005年8月16日号掲載)

【文・阪本 啓一