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アメリカでのビジネス・仕事

現地情報誌「ライトハウス」が人気コラム「アメリカ人と共に働く技術」をはじめ、起業・独立、マーケティングに関する情報など、アメリカでのビジネスに役立つ情報をご紹介。

ライトハウス編集部
ライトハウス編集部

26)見えないものへの敬意
【Hello! Aloha!こんにちは!】

マーケティング講座

みなさん、こんにちは! 阪本啓一です。
挨拶してますか?


病んでしまった日本

 朝日新聞読者投稿『声』欄(2005年11月14日付)を読んで、目を疑いました。

,△訝羈惺擦如∪古未諒貎討「学校側に給食費を払っているのだから、うちの子に『いただきます』を言わせないでほしい」という要望が出た。
∧未涼羈悗任蓮教師が生徒から「『おはよう』『こんにちは』の挨拶に何の意味があるのか。意味ないのでは?」と問われ、教師もその通りだと思った。

 皆さんはどういうご感想をもたれましたか? 私はもう、言葉を失うくらい、がっかりしました。日本はここまで病んでしまったのか、と。いくら経済的に豊かになっても、このような貧しいマインドの社会になってしまっては…。

 「いただきます」は、子どもに感謝の気持ちを教えるのに最適な言葉です。料理してくださった人への、野菜、魚などの自然の恵みへの、農業や漁業に携わって食卓に供してくださる人への、それらを運んでくださるトラックの人への、スーパーマーケットの人への。そして、目に見えないけれど、こうして食事ができるようにしてくださっている「何か」への。「お金を支払っているから不要」という発想は、日本の拝金主義もついにここまできてしまったか、と恐ろしくなります。

 また、「おはよう」などの挨拶は万国共通です。それこそ、アメリカであろうと、バリであろうと、フィジーであろうと、ハワイであろうと、ケニアであろうと、ギリシャであろうと。人間として、当たり前の行為です。「何の意味がある」とか「意味がない」とかの話ではありません。


「見えないもの」へ敬意

 日本人は、「そんなことをするとバチが当たるよ」という言葉に象徴されるように、「見えないもの」への畏怖や敬意をずっと持ち続けてきた国民です。どうもここのところ、「見えないもの」に対する敬意が消えてしまっているのではないかと危惧しています。

 ブランド・コンサルティングや企業セミナーで、結局ぶつかるのは「人」の問題です。例えば、ある店舗のブランドを築くのは経営者の高邁な哲学ではなく、現場で実際に顧客と接触する店舗スタッフですから。そこで社員教育をします。教育にはマインドとスキルがあります。簡単に言えば、マインドは「なぜその仕事をしなければならないのか」「接客はいかなる気持ちで臨むべきか」という仕事の哲学のようなものです。スキルは具体的な仕事の技術。大切なのは、言うまでもなく、マインドです。いくらスキルがあっても、マインドのない仕事ではお客さんの胸には響きません。ほら、よくあるじゃないですか、接客業の作り笑顔のように。マインドの上に立ったスキルが求められるのです。そしてマインドは「見えないものへの敬意」によって育まれます。

 日本の社会は冒頭で述べたように、病んでしまっています。企業は社員を採用しても、しばらくは給与を支払って教育し直している現状。ところが挨拶で業績向上させた会社があるのです。


挨拶で業績が25パーセント向上した

 2002年から04年まで私がコンサルティングをした、さる事務機器リース会社では、営業マンの挨拶を徹底することで、低迷していた業績が何と25パーセントも向上しました。社長から相談を受けた頃、その会社のオフィスはしーーーんとしており、だれかの咳払いも大きく響くような有様でした。営業マンが中心の会社であるにもかかわらず、「温かさ」や「熱さ」が全く感じられない空気だったのです。そこで、朝の「おはようございます!」、営業にでかける際の「行ってきます」、帰社時「ただいま!」、そして退社時の「お先に失礼します!」この四つの挨拶を徹底させました。直行直帰を禁じ、朝夕のミーティングを義務づけました。それだけで、他には細かい営業戦術などは手をつけず、ただ、ひたすら挨拶の徹底を行いました。結果1年後には10パーセントの、2年後にはさらに25パーセントの業績向上となりました。売上高ではなく、利益が向上したのです。「見えないものへの敬意」は、業績向上にも役立つのです。

(2005年12月16日掲載)