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アメリカでのビジネス・仕事

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ライトハウス編集部
ライトハウス編集部

29)買いたいこころに火をつけろ!
【売る工夫!】

マーケティング講座

みなさん、こんにちは。阪本啓一です。
買いたいものがないお客さんを前に、あなたならどうしますか?


mustからhad betterへ

 年末年始の成田空港出入国者数は、2005年12月22日から06年1月9日までの期間で、前年同期より約2万4000人多い143万7500人となり、過去最高の賑わいとのこと(朝日新聞05年12月29日付記事による)。

 この記事を読みながら、私は日本の小売業の置かれている困難な現状をあらためて感じました。それは、「お金を使う対象が『must』ではなく、『had better』へと完全に転回した」という点です。豊かになった日本人の買いたい心に火をつけるのは、「どうしてもこれを買わなければ生活できない!」という商品(must)ではなく、「買わなくても別に生活に支障はない『あったらいいな』という程度の商品(had better)」なのです。

 一方、寂れた商店街で、売れずに埃まみれになった下駄、布団、かばん、婦人服が、海外旅行よりゼロ2つくらい少ない金額であるにもかかわらず、手にさえ取ってもらえず、不良在庫となっています。

 水など、清潔な水が水道の蛇口をひねれば出てくるのに、わざわざ浄水器を取り付けて毎月レンタル料金を支払ったり、あるいは、お湯も出せるというウォーターサーバーを宅配してもらったりしています。スーパーには、各種ミネラルウォーターが棚も狭しと並んでいます。安くても買ってくれないし、差し迫って必要ではないのに、無茶苦茶売れたりします。

 また、ネットショップ、テレビ通販も既に小売の一ジャンルを確立したと言えます。リアルに店舗を構える小売業界にとって、非常に戦略を立てにくい市場環境と言えるでしょう。そんな中、そごう横浜店で進取の取り組みに出会いました。


24時間対応の専用駐車場「そごうパーキング館」

 そごう横浜店が24時間対応の専用駐車場「そごうパーキング館」(560台)をオープンしました。横浜駅エリアでは最大規模で、周囲にある契約駐車場も含めると計7つのパーキングを持ち、合計約2500台収容できるようになったのです。パーキング館の特長は同社ホームページ(http://tinyurl.com/b4krl)によると、次の通りです。

◎ 女性に優しい、広い駐車スペース(女性優先エリア)を設置しました。
◎ お買いあげ品を、パーキング館3階の休憩室内にてお受取いただけます。
◎ 車寄せをご用意。休憩室にて、お車が来るまでゆっくりとお待ちいただけます。
◎3階に洗車コーナー(有料)をご用意しました。

 実際に車で行ってみました。パーキング館入口にはナビゲーターが立っていて、「ここが駐車場入口」だとすぐにわかります。スロープで上がっていくのですが、各階に“ナビエンジェル”と呼ばれる女性スタッフが立っていて、お辞儀をして出迎えてくれます。ここで既に「気分いい」のです(笑)。

 将来はそごうと通路がつながる予定で、現在工事中なのですが、パーキング館1階で待機しているナビエンジェルが、そごうまでの道順をきちんと説明してくれるので、迷わなくて済みます。


買っても、手ぶらのポーターサービス

 そごうで、結構嵩かさ張るものを買いました。レジカウンターで支払いを済ませ、「パーキング館に回しておいてください」とお願いし、必要なサインをするだけで、後はそごうが商品を移動しておいてくれます。一旦そごうの外に出て、他の店で買い物をし、また店内に戻って買い物を続けました。その後、映画を観て食事をする予定のため、荷物が邪魔なので、「他の店の商品も一緒に運んでくれませんか」、と恐る恐る尋ねたら簡単に了承してくれ、大いに助かりました。しかも24時間対応なので.そごうは閉店しても駐車場に行けば、専用のカウンターで商品を渡してもらえます。

 私たちが戻ったのは夜10時過ぎでしたが、カウンターには専任スタッフが待っていてくれて、「お帰りなさい」と言ってくれました。「お車までお運びいたしましょうか」とまで言ってくれたのですが、恐縮して、遠慮しました。

 そごう横浜店はこの他、店内のコンシェルジェサービス、靴売り場ではシューフィッターが待機し、顧客一人ひとりに合う靴選びのアドバイスをするなど、「とにかく一所懸命」さが伝わってくる売り場です。

 「買いたいものがない」豊かな社会の顧客を相手に商売をする、1つの解を見ました。私たちも、参考になる点が多いのではないでしょうか。

(2006年2月1日掲載)