マーケティング講座
48) 非効率が利益の源泉
【「効率」を捨てましょう!】
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皆さん、こんにちは! 阪本啓一です。ゆるんでますか?
サービス品質の低下
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拙宅は、クリーニングサービスを利用しています。日本では老舗の大手チェーン。カーテン、ベッドシーツ、シャツ、セーター、何でもお願いしちゃいます。セーター、コートなどの季節ものはシーズンオフの間、預かってくれるので、多少価格が高くても重宝しています。社会人になってからずっとお願いしているので、もう26年もの長きにわたるおつきあいです。ところが、最近、気になることが目につき始めています。
⑴カーテンのアイロンがきちんと垂直になされていない
→窓にかけると微妙にずれ、左右の間にスペースができて外が見えてしまう。
⑵アイロン済みのシャツを袋に入れて納品してくれるのですが、シャツの背に挟みこんである紙(皺にならないための配慮)に他企業の広告が入るようになった
→広告に注目するより先に、せちがらい思いをしてしまいます。
⑶シャツのボタンが欠けたり、ぺしゃんこにへしゃげてしまっていることが5割の確率で、ある
→「いざこれからビジネスだ!」という朝のひきしまった気分に水をさします。納品する前のチェックはどうなっているのでしょう。
要するに、サービス品質が低下しているのです。これが安いクリーニング店であれば仕方ない、で済みますが、「高品質、高価格」をブランドの約束にしている会社のサービスとしてはあまりにもお粗末です。
効率の果てに
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さらに、週に二回、担当の営業マンが御用聞きと集荷、納品に来てくれるのですが、決まってランチタイムに来ます。いざ食べよう、というときにピンポンされると、人情としてつらい。ただ、彼にも悪気は全くなく、「昼時に訪問することは社会人として迷惑だから、避けたほうが良い」という営業マンの基本をだれからも教わっていないのでしょう。それがわかるので、私はいつもニコニコして応対します。
彼は、笑顔なくしんどそうに、ドアの向こうに消えていきます。後ろ姿を見ながら、「効率」の二文字が浮かびました。一日に訪問するノルマの軒数が決まっていて、ランチも充分な時間を取ることができないのでしょう。
営業マンを始め、この会社の数々のサービス品質の低下の理由がわかりました。「効率を追求した結果の姿が、こうなる」のです。
非効率が利益を上げる
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ご存知のように、日本やアメリカの工場は、今やその多くを中国に移しています。ただ、日本でも立派に製造業はビジネスとして成り立っていて、「日本に残る」製造業のほうが実は利益を上げることができているのです。
例えば、世界一小さい1百万分の1グラムの歯車を製造できる樹研工業は1999年、当時売上の70%を占めていた日本の家電メーカーがごっそり中国へ生産をシフト、マーケットを70%喪失する、という未曾有の危機に出会います。その時、あらためて独自技術の重要さを痛感し、技術を高めるための投資を実施、現在では、「樹研さんでないと製造できないのでお願いします」と、顧客から頭を下げて言い値で買ってくれるまでになりました。樹研工業は、効率ではなく、敢えて時間もお金もかかる技術の蓄積に活路を見出したのでした。
また、先日工場を見学した某社の生産ラインは、機械を製造しているにもかかわらず、まるで和菓子工場のように、人が丁寧に手先を使って、モノ作りをしていました。製造責任者の言葉が印象的です。「わが社は、効率を捨てたからこそ、利益を出せているのです」。
非効率が儲かる理由
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どうして「効率を捨てると儲かる」のでしょうか。効率の本質は定型化、無個性化です。定型化できるから作業手順をマニュアル化可能で、即ち、機械化できる。個性を無くす工夫をするからだれがどうやっても同じアウトプットが出る。つきつめていけば、「だれでもできるのであれば機械を使おうが外国人がやろうが、安くできるほうが原価を安くできて良い」という話になります。中国が世界の工場化したのも、このような背景でしょう。しかし、工場の手作業の中に隠された「人間の暗黙知」、別の言葉でいうなら「コツ」「勘どころ」「さじ加減」の定型化や無個性化は不可能です。ブラックボックス。そして、ブラックボックスだからこそ、儲かるのです。
効率を捨てたスローな取り組みこそが、いつまでも顧客に愛され、支持され続ける秘訣なのです。ゆるゆると、非効率で、行きましょう。
(2006年11月16日号掲載)


