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現地情報誌「ライトハウス」が人気コラム「アメリカ人と共に働く技術」をはじめ、起業・独立、マーケティングに関する情報など、アメリカでのビジネスに役立つ情報をご紹介。

ライトハウス編集部
ライトハウス編集部

51) 当たり前のことを、淡々と
【最高品質のマーケティング】

マーケティング講座

皆さん、こんにちは! 阪本啓一です。
当たり前のことが一番難しいですね…。


「ラグジュアリー・マーケティング」

 ラグジュアリー・マーケティングについて考える機会がありました。皆さんにおすそわけしたいと思います。

 一般に、「ラグジュアリー」という形容詞がつくと、「高額な製品・サービス」「富裕層がターゲット」というイメージですが、少なくとも日本、米国を始めとする先進国においては、「クラス」があいまいになっています。500円のTシャツを着て、60万円のエルメスバッグのお買い物に行く、という購買スタイルなんて、ザラです。JR在来線や新幹線のグリーン車、海外旅行の飛行機のビジネスクラスに若い人が座っている景色も、珍しくなくなりました。

 もちろん、ハリウッドスターや超のつくお金持ちを対象にしたビジネスも存在しますが、それも含め、私は、「最高品質のマーケティング」という定義をしたいと考えます。なぜなら、最高品質を考えることで、日常の「普段使いのマーケティングの本質=商売の本質」に迫ることができるからです。

 実は非常にシンプルです。

●最高品質の3つの条件
 3つあります。
 第1に、当たり前のことを当たり前に実行できる
 第2に、「お金をいただく」から「ご贔屓を頂戴する」へ
 第3に、ヒューマン・ファクターが強みである


「当たり前のこと」を実行する

 どんなビジネスでも、提供する製品・サービスにおいて、「当たり前のこと」というエレメントは存在します。ところが、昨今の短期業績向上、株価至上主義の企業経営の現場において、この、「当たり前のこと」が「効率」の美名のもと、実行されないことが多いのです。
 
例えば…

●高級ホテルのレストランで出席を取らない
 オーダーした料理が運ばれてきたとき、「サラダのお客様は」「オムレツのお客様は」…と、ゲストに手を挙げさせる。これを私は「出欠スタイル」と呼んでいますが(笑)、「サービス料」を取る店でさえ、大半はこのような情けないサービスぶりになってしまっています。よって、たまにウェイターが的確に、料理をオーダーした人のテーブルに置くと、まるでマジックを見るように驚いてしまいます。

●椅子の座り心地がいい
 ある居酒屋のカウンター席の椅子は、レザー仕立てで、たっぷりと背もたれがあり、最高の座り心地です。カウンター席の椅子は、ややもすると堅くて高くて、長く座っていると腰が疲れてしまうことが多いのですが、「ゆったり料理を楽しんでください」という配慮から、このような素晴らしい椅子を置くようにした、とは店長さんの話です。

 この他、ホテルの場合は備え付けのシャンプー、リンス、ボディーシャンプーなどに品質の良い製品を使う、など、普段自宅ではなかなか手の出ない「いいもの」を使う喜びがあって良いと思います。先日宿泊した宮古島の高級リゾートホテルでは、フランス製ロクシタン(www.loccitane.co.jp)が置いてあり、感動しました。

●ゲストの顔と名前と好みを覚えている
 お客さんの顔と名前と好みを覚える、ということは、商人なら当たり前のことなのですが、現代では、絶滅の危機に瀕した商習慣になってしまいました。ITが導入され、「武器」は強化されているはずなのに、まるで反比例するかのようにヒューマン・ファクターが弱体化してしまっています(上記の条件3「ヒューマン・ファクターが強み」がより一層光ってくる背景です)。先の出欠方式と同じく、担当者の「あと1ミリの工夫」で解決できる問題ばかりです。


お金からご贔屓へ

 「高品質」というと、「いかに高額なプライシングをするか」と短絡的に考えるのが常ですが、違います。ゼロの1桁2桁違う値付けをするのではなく、「通常の価格で、一生の顧客を得る」ためにはどうすればいいかに知恵を絞るべきです。知恵を絞るときに、成長します。「お金からご贔屓へ」の意味は、ここにあります。商売人がお客さんから戴くべき最大の資産は、お金ではなく、「ありがとう、また来るよ。友達にも勧めておくね」というご贔屓なのですから。

(2007年1月1日号掲載)