マーケティング講座
55) 逆立ちしてみよう!
【ミラー・マーケティング】
音を聞かせないFM
某FM放送局経営者から相談を受けました。
「ipodや携帯電話を始めとする軽量小型モバイルメディアの台頭、パソコンのテレビ化、テレビのパソコン化といったデジタルワールドの広がり、という外部環境要因にさらされ、メディアとしてのラジオの意義に大いなる危機感を感じています」。
私はまず、FM放送に対する顧客としての不満を述べました。数々挙げた中でも1番強調したのは、「クリアな音質で音楽を楽しみたいのに、DJのおしゃべりが多くて煩わしい。FMとAMの違いがわからなくなってしまっている」という、音楽愛好家としての意見です。アドバイスの中で私が出したヒントは「ラジオのしていることだけに目を向けるのではなく、『していないこと』にも着目してみましょう」。
ミラー・マーケティング
実はこの方法は「ミラー・マーケティング」という、弊社の手法です。
例えば、集客目標が100人として、結果60人だった。この時、集まらなかった40人に焦点を当てるのです。カスタマーに注目するのではなく、ノン・カスタマーを考える。裏返して考えてみるのです。
FMの場合、音を常時流し続けているわけですが、「リスナーに音を聞かせない工夫」はできないものか、と考えたわけです。過去、野球の実況中継で、こんな実話があります。
「キャッチャー、立ち上がりました」。
しばし、沈黙。
キャッチャーミットに収まる球音を4つ、リスナーに聞かせます。
「お聞きのように、敬遠のフォアボールです」。
リスナーの想像力に訴えかけることで、より球場の緊迫した空気、選手たちの駆け引きが伝わったはずです。リスナーはそれこそ、身体全体で聞いたことでしょう。くだんのFM局経営者は、早速番組編成に活かしてみる、とのことです。どんな「音を聞かせないFM」になるのか、楽しみですね。
タクシーのサービスを裏返すと
タクシー会社のサービスで、ミラー・マーケティングを実践している事例に出会いました(NHKテレビのニュースで)。本来、タクシーは「A地点からB地点まで」ゲストを運ぶことがサービスの定義です。このサービスをミラーに映し、裏返してみます。すると、「A地点とB地点の間」にビジネスチャンスが転がっていることがわかります。げんに、観光案内という昔ながらのサービスがあります。そこからもう1歩進めたサービスを開発しているタクシー会社があるのです。
●神戸スィーツタクシー
予約しておくと、車のボンネットに「KOBE SWEETS TAXI」と描いたタクシーが駅で出迎えてくれます。ドライバーは立派な帽子をかぶり、正装のジェントルマンです。神戸の観光案内をしながら、道中、いま話題のスィーツのお店に連れて行ってくれます。ドライバーにドアを開けてもらって入ったお店では特別席に案内され、出されたスィーツには自分の名前が! この「特別感」がたまらない! 所要時間約120分で6000円(お菓子代金別)。
●東京デートスポットタクシー
東京都内の穴場デートスポットに案内してくれます。乗車すると、車内のipodからはムード満点のジャズが。この道35年のベテランドライバーが、雑誌では知ることのできないデートスポットに案内してくれます。ニュースでは、結婚記念日のご夫婦が利用していました。東京タワーの真下で、下から見上げるツーショット写真をドライバーに撮ってもらい、「普通ではこんなアングルの写真は無理」と、ご満悦です。たしかに。90分・12000円。
裏返してみるとチャンスが!
ミラー・マーケティングの発想を使えば、成熟したビジネスにも、チャンスはザクザク転がっていることがわかります。例えば…
●病院
病院は患者が増えるのではなく、どんどん減ることが社会のためになる → いかにして患者さんの数を減らすかに焦点を当てる → 病気センターではなく、健康センターとして自分のサービスの定義を転換させる → 病気を治すのではなく、病気にならない、さらには健康を維持・増進できるノウハウを提供する
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いかがでしょう? 皆さんのビジネスも、1度ミラーに映してみては?
大金脈を発見できますよ。
(2007年3月1日号掲載)