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アメリカでのビジネス・仕事

現地情報誌「ライトハウス」が人気コラム「アメリカ人と共に働く技術」をはじめ、起業・独立、マーケティングに関する情報など、アメリカでのビジネスに役立つ情報をご紹介。

ライトハウス編集部
ライトハウス編集部

57)地域商売の時代

マーケティング講座

皆さん、こんにちは! 阪本啓一です。
商売は地元密着が1番です!
「顔の見える」「手触りの温もりのある」「地域と共に成長する」
商売やっていますか? 商売の原点はここにあると信じています。


振り子は戻りつつある

 現在日本では、大企業の不祥事が相次いでいます。根拠のない「科学」情報を流したテレビ局、商品がスーパーやコンビニの棚から撤去された食品会社、上場廃止に追い込まれた大手証券会社など、枚挙に暇がありません。不祥事が発生すると、決まって社長など経営幹部が謝罪会見し、辞任します。そのようなニュースを見ながら、私はしみじみ、「振り子は元に戻りつつあるなあ」と考えます。起業し、会社が成長、社員も増え、上場し、日本中、あるいは世界中に拠点を置き、増資してさらに原資が増え…という「成長のサイクル」にうまく乗ること─これが「ビジネス成功の方程式」でした。もちろん、この成長のサイクルはいまでも多くの起業家、ビジネスパースンの夢です。しかし、一方で負の遺産も見逃せません。


負の遺産

●経営の意思決定が現場から遠く離れた役員室で行われ、判断基準は表計算ソフトに記載された数値のみ、現場で働く労働者の体臭が消えてしまっている。

●すべて一つの環の中で系として完結する自然とは違い、ビジネス生態系では、自然に還元されない廃棄物を排出し、「系の外」に出さないと成立しない。たとえばカーペットは廃棄物処理場に置かれても、自然分解するまでに2万年かかる。自然は「カーペット」という「製品」を生み出すことはないため、自然の系の中には、分解できる機能がない。

●工場廃液で川が汚れても、工場で雇用が確保され、企業が利益という対価をもらえるのであれば、経済成果を優先させてしまう論理がまかり通った。

 ほかにも様々ありますが、紙幅の都合もありますので、先に進みます。


地域ならではの強み

 負の遺産を考えるにつけ、地元ローカルで商売をすることが益々強みを増しています。これこそ「振り子が戻りつつある」理由です。地域に根をしっかと張り、共に成長する。成長の定義は、「商売を通してJOY(喜び)とWOW(感動)を感じ、幸せを感じられるようになること」。ステークホルダー、即ち、社員、顧客、取引先、株主、地域社会、みんながそのビジネスを通じハッピーで笑顔になること。もともと、いかなる商売も、起業の出発点には、この想いがあったはずです。

 社長をはじめ、社員全員が「顔の見える」会社、商店。ビッグビジネスではできない、温かく、優しいアプローチこそが、地域商店ならではの強みを生かせるフィールドです。「ヘタうったら、商売ができなくなる」というギリギリ感で商売やっている地元商店の強みを、いまこそ、もっと上手に生かすべきです。


駒は手前から倒せ

 某地方都市の中堅企業メーカーは、毎朝、工場周辺を社員全員で掃除、草むしりを実行しています。すべて就業時間前、自発的に実行されます。本社隣には公立小学校があるのですが、定期的に児童の工場見学を受け入れています。社屋の壁の色も、隣の会社と打ち合わせし、周囲の景観とうまく融和するようなペイントにしています(特にお役所の条例があるわけではなく、あくまで自発的動機です)。社長のビジョンは「大を目指さず、会社の関係者(ステークホルダー)全員の幸せを目指す」です。

 ある起業家は、新しくインターネットに店を構えて物販を始めることにしました。もともと建設業をやっていたのですが、創業当初の目標までは成長できたので、それ以上の「大」を目指さず、セカンドビジネスを開始したのです。社長はネットショップであるにもかかわらず、「駒は手前から倒せ」、まずは本社のある県全域をどれだけカバーできるかを目指しています。理由は、❶顧客の生活習慣を始め、市場を熟知している、❷柔軟なデリバリー対応ができる。東京から静岡に転勤した人が、うなぎを食べたくなってスーパーに蒲焼を買いに行ったら、頭がついていてびっくりして買えずに帰った、という逸話があります。同じ日本でも、西日本ではうなぎの蒲焼には頭がついていて、東日本ではついていません(境界は不明)。このように、生活習慣の違いを熟知していることが、商売には重要です。また、建設業で県下の隅々まで熟知しているため、「いざ」という時には、自分で車を飛ばして商品をお客さんに届けることもできます。

地域と共に栄える

 阿寒グランドホテルの大西雅之社長の言葉。「ホテルは、まず商売させていただいている地域の繁栄なしには、経営が立ち行かない」。大西社長は「100年ブランドの宿づくり・まちづくり」を提唱され、地域の環境問題にも取り組んでおられます。地域と共に栄える視点、これからの重要ポイントです。

(2007年4月1日号掲載)