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アメリカでのビジネス・仕事

現地情報誌「ライトハウス」が人気コラム「アメリカ人と共に働く技術」をはじめ、起業・独立、マーケティングに関する情報など、アメリカでのビジネスに役立つ情報をご紹介。

ライトハウス編集部
ライトハウス編集部

60)イノベーション!

マーケティング講座

皆さん、こんにちは! 阪本啓一です。
ビジネスは、たゆまぬ革新の連続が繁盛につながります。
今日のテーマはイノベーションです。
種は意外なところにありました。


こんな新技術が!

●超薄型ELテレビ
 有機野菜ならぬ有機EL(エレクトロ・ルミネッセンス)という技術をご存知でしょうか。既に実用化が進んでいる液晶ディスプレイやプラズマディスプレイと比較した利点を簡単に申し上げますと、’型化可能(液晶のようなバックライトが不要のため) 低電圧・低消費電力 視野角が広い す盖嬰戞高解像度、などがあります。既に日本では携帯電話(KDDI・au design projectの携帯電話端末MEDIA SKINなど)に実用化されていますが、このたびソニーが世界で初めて薄型テレビ用に製品化すると発表、2007年内には発売する由です。次世代テレビとして、価格は従来の液晶の2〜3倍程度に抑えるとのこと。

 何しろELにプラスチックなどの基板を使えば、柔らかく折り曲げることができるフレキシブルなディスプレイを作ることが可能とのことで、「こんなの、初めて!」というあっと驚くテレビも開発されるのではないかと、技術の中身はちんぷんかんぷんの私ですが、非常に期待しています。

●冷やす殺虫剤
 アーノルド・シュワルツネッガー主演『ターミネーター2』で、ターミネーターが零下200℃の液体窒素を浴びて凍りつき、粉砕されてしまうシーンをヒントにして開発された「冷やして殺虫する殺虫剤」があります。『飛ぶ虫氷殺ジェット』『這う虫氷殺ジェット』(ライオン)。日本の殺虫スプレーは、約250億円(06年)もある、大きな市場です。一方、ライオンが調査してみたところ(06年)、80%の顧客が殺虫成分の人体への安全性を重視し、懸念しているとの結果が出ました。昨今の健康志向の潮流を鑑みますと、頷ける結果です。

 そこで、何と、「殺虫成分を使わない殺虫剤」の開発につながったというわけです。零下40℃の冷却空間を瞬時に作り出し、虫を殺す。まさにイノベーションですね。なるべくなら殺生はしたくないものの、止むを得ない場合、殺虫剤を使うこともあります(私は平気なのですが、家族が虫嫌いなので)。しかし、独特のあのにおいと、やはり、「虫に悪いものが人間にいいはずがない」という心配はぬぐえませんでした。朗報です。


これもイノベーション

●おいしさを数値化せよ
 新技術ばかりがイノベーションではありません。「おいしいおにぎりはどうやったら握れるのだろう?」という極めて素朴な疑問から、「おにぎりプロジェクト」を立ち上げ、「手作り感」のあるおにぎり開発に取り組んだコンビニエンスストアがあります。日本のセブン・イレブンです。セブン・イレブンは新商品開発の際、「すべて数値化」します。「お母さんのおにぎりがなぜおいしいのか、数値化せよ」と言われたら、だれでも戸惑いますよね? でも、セブン・イレブンはやってしまうのです。ここにイノベーションがあります。

 おにぎりプロジェクトは、機械メーカー、おにぎりメーカー、包材メーカー、セブン・イレブン食品部MD(マーチャンダイジング)担当者など総勢15名のメンバーで立ち上げられました(02年5月)。数値は企業秘密なのでわかりませんが、おにぎりのおいしさの開発要点は次の三つ、即ち、柔らかくふんわりと握る、具を真ん中に入れる、塩を振り塩にする。開発に2年かけたイノベーションです。

●空中仕上げ
 手首を台として使い、アイロンする空中仕上げの名人芸。三陽商会のアイロン名人、樋代廣人氏(58歳)の技です。新ブランド発表展示会の前日ともなると何百枚もの服を手に、空中仕上げをします。左手首をジャケットの襟元から入れ、指で肩の形を作る。アイロンを持った右手はギュッと押さず、ふわり浮かして蒸気をシュッと吹きかける。アイロン仕上げ後によくある平面ではなく、3Dとして、ジャケットの胸はふくらみ、腰はカーブする。樋代氏は年間8281枚の空中仕上げをします。

 この「練達の技」も、アイロンのイノベーションですね。アイロンは、アイロンという器具を衣類に押し付けることが目的なのではなく、「きれいに仕上げる」ことが目的なのです。まさに目からウロコです。


当たり前の中にイノベーションの種が

 新技術と伝統技術の両分野のイノベーション活用事例をご紹介しました。皆さんのビジネスの中でも、「当たり前」と思っているプロセスや製品・サービスの中に、大いなるイノベーションの種があります。

 「社内・業界の常識洗い出し会議」をやってみると、新発見につながると思います。種は日常の隣に潜んでいます。

* 参考 朝日新聞2007年4月12日、15日、16日記事、『ブランド力』清丸恵三郎、PHP

(2007年5月16日号掲載)