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アメリカでのビジネス・仕事

現地情報誌「ライトハウス」が人気コラム「アメリカ人と共に働く技術」をはじめ、起業・独立、マーケティングに関する情報など、アメリカでのビジネスに役立つ情報をご紹介。

ライトハウス編集部
ライトハウス編集部

66)緊張感

マーケティング講座

皆さん、こんにちは! 阪本啓一です。
お客さんから信頼をいただくのに奇手奇策は不要。
前号でお話した営業時間のように、「決まった時間に営業している」「いつでも同じ品質」が一番です。
そのために必要なのが、緊張感。

ビジネスに必要な心構えは緊張感です。


中村美律子さんのプロ根性

 中村美律子(なかむらみつこ)さん。大阪出身の演歌歌手で、1986年デビュー、「河内おとこ節」「大阪情話」「男道」などのヒットソングがあります。紅白歌合戦の常連、半生を題材に描いたNHKテレビ銀河小説「中村美律子物語」をご覧になった方もいらっしゃるでしょう。テレビのドキュメンタリー番組で、中村さんが座長を務める公演の舞台裏を見る機会がありました。

 そこで驚き、感心したのは中村さんのプロフェッショナルとしての一本筋の通った、緊張感あふれる姿勢です。

 連続24日続く博多公演の間、毎日公演が終わったら一直線にホテルの部屋へ。普通、巡業先では土地の食べ物に舌つづみを打つなどして、都内にいるとできない羽を伸ばすという図式が浮かぶのですが、見事なまでに禁欲的です。


見ざる・言わざる

 スタッフが用意してくれた夕食のお弁当を食べるほかは、テレビは見ません。番組表を目にしたら、テレビを見たくなるから、という理由で、新聞も手にしません。集中力が途切れるからといいます。部屋にこもるのは、誰とも話さず、大事な商売道具のノドを消耗しないように。中村さんのこの姿勢は、舞台だけではなく、公演会場の外でも24時間緊張感を持って仕事に臨んでいることを教えてくれています。長い下積みを経て芸能生活20年(2007年時点)を迎えることができるのも、この緊張感のなせる技と思います。中村さんは、舞台から客席を見て、「このお客様にはもう二度と会えないかもしれない」と思っているのかもしれません。

 「だからいつも最高品質の芸を見せる」というプロとしての緊張感。私たち職業人は皆、学ぶべき姿勢ではないでしょうか。


爪の長さ、鼻の状態までチェックする

 セブン・イレブンのお弁当とお惣菜を作っているわらべや日洋株式会社(東京都小平市)。年商990億円、うち、セブン・イレブンへの売上990億円というからセブン・イレブン専属と言っていいでしょう。ここの工場で驚かされるのは、その衛生管理の厳しさです。(1)工場に入ると、衛生監視員のチェックを受けます。チェックポイントは4項目。傷、爪、体調、鼻。ケガなどで身体に傷がないか、爪は伸びていないか、体調は万全か、鼻水がでていないか。手元のチェックマシンで「OK」か「NG」のランプが点灯します。すべてがOKでなければその先には行けません。当然この段階で指定の作業服に着替えています。(2)通用ゲートに通行証をかざし、「OK」が出れば、(3)手洗い殺菌を入念に、(4)エアシャワーを全身に浴び、ホコリを除去。(5)手袋をはめ、(6)更にその上から消毒。これでようやく作業場に入ることができます。ここまで衛生に神経を尖らせているのは、納入先である全国1万2千店のセブン・イレブン、更にその先にいらっしゃるお客様への責任感からです。


40万食を手作り

 意外ですが、コンビニのお弁当は機械ではなく1つ1つ人の手で手作りしています。300名の従業員が365日24時間体勢で調理し、1日40万食のお弁当箱につめているのです。お弁当やお惣菜のメニューが頻繁に変わるコンビニでは、結局のところ人の手が一番適していることが理由です。工場の床は緑と黄に色分けされており、黄色は加工前の食材を扱うゾーン、緑色は加工後食材のゾーン。加工前の材料では雑菌が繁殖しやすく、加工後食材に伝播しないようにとの配慮です。ゾーン間の人の行き来も禁じられています。

二度と会えないお弁当

  中村さんの舞台のお客様と同じく、コンビニ弁当も、2つとして同じものがないわけです。つまり、工場の作業員にとっては「この後二度と会えないお弁当」です。この緊張感がお弁当の味にも良い影響を与えているのだと思います。先週、沖縄で、中野裕弓さん(人事コンサルタント)が主催するミーティングに参加したのですが、次の言葉が印象的でした。「私はいつも人と会うとき、今日お別れしたら、生涯二度とお目にかかれないかもしれない、そういつも考えてお会いするようにしています」。まさに一期一会、この緊張感があれば、だれしも自分の仕事品質には細心の注意を払うのではないでしょうか。「目の前のお客さんとはこれ一回きり。二度と再会できないものと心得て接しよう」。

 この考えは、営業職や接客業に限ったものではなく、ビジネスすべてに通じると思います。

*参考:TV東京『日曜ビッグバラエティ』
    TBS『がっちりマンデー!!』
    07年7月15日放送

(2007年8月16日号掲載)