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アメリカでのビジネス・仕事

現地情報誌「ライトハウス」が人気コラム「アメリカ人と共に働く技術」をはじめ、起業・独立、マーケティングに関する情報など、アメリカでのビジネスに役立つ情報をご紹介。

ライトハウス編集部
ライトハウス編集部

68)正直なビジネス

マーケティング講座

皆さん、こんにちは! 阪本啓一です。
私たちビジネスに携わる者に、1つの重要な問いが投げかけられています。
それは、「あなたのビジネスは正直ですか? すべてにおいて透明ですか?」というとても本質的なものです。


相次ぐ不祥事

 本原稿執筆中に、北海道観光土産で有名な「白い恋人」(石屋製菓)の賞味期限引き延ばしが発覚しました。10年来、賞味期限を社内の都合により規定より延長する工作がなされていたのです。牛ミンチ肉偽装のミートホープ事件といい、企業不祥事が続いています。これら不祥事で見過ごせない点は、いずれも経営者が直接関わっていることであり、かつ、動機が顧客のためではなく、自社のためという利己的なものであることです。

 一方、「正直」と「透明性」で業績を伸ばしている企業もあります。アメリカ・ユタ州モアブ(Moab)に本社のあるオーガニック・ハーブ・サプリメントの企業、シナジーカンパニー(http://www.synergy-co.com/)です。ピュアシナジー、アクティブ10+マヌカハニーなどの製品があります。愛用されている方も多いのではないでしょうか。同社創業者ミッチェル・メイの著作『ミッチェル・メイ・モデル』(VOICE刊)から、彼の経営哲学を学んでみましょう。


あくまで製品主導

 シナジーカンパニーは社員わずかに50人足らずの小規模企業ですが、世界に大きなインパクトを与えています。1992年創業、わずか15年の間で、世界7カ国で販売され、数万人の愛用者を持つに至っています。

 持続可能なサステナビリティ経営を実行し、マーケティングや広告・広報先行ではなく、あくまでプロダクト・オリエンテッド(製品主導)なビジネスを営んでいます。


サステナブル経営

 社員はもとより、仕入先もハッピーでなければならないとの思想のもと、フェアトレードを実行しています。これは、サードワールド(第三世界)にある農家と、農産物の購入を適正な価格で取引をすることで、生産に関わる人、地域を守る意味があります。地球上あちこちから52種類の原材料が集められますが、買い付けは18カ月前に行われ、すべて前払いされます。即ち、その地域に安定した雇用を約束することにつながります。

 製品の生産、流通、事務など、ビジネスで使う電力はすべて風力発電でまかなっています。自社ビジネスの結果、大気中に増えたCO2排出量とバランスの取れる必要十分な数の植樹を国立公園に行っています。EPA(アメリカ環境保護局)にも認められているグリーンパワーカンパニーであり、『エンヴァイラメンタル・コンシャス・アワード』(環境問題に配慮した設備に与えられる奨励賞)を受賞しています。


顧客の95%がリピーター

 95%がリピーターであり、顧客の最初の製品との出会いはクチコミです。ミッチェル・メイの製品哲学は、「オーセンティックな製品は自分の愛する人に安心して勧められるものでなければならない」であり、そのためには1ミリの妥協もしません。例えば、原材料加工の際、機械の動きによって発熱し、大切な成分が熱によって損なわれてしまいます。そこで、自社で低温加工の可能な機械を開発してしまいました。また、設備の洗浄に使う空気や水はすべて浄化(ピュリファイ)されたものが使われます。「空気と水はそのままでは汚染されているものである」という、頑固なまでのこだわりがあるからです。オーガニック・ハニーを手に入れるために、ミツバチの行動半径5キロの範囲内はいかなる化学物質からも隔離されていなければならない、というこだわりを聞いたとき、文字通り腰が抜けるほど、驚きました。

正直と透明性で繁盛する

 創業者ミッチェル・メイはもともと、著名なヒーラーです。世界中の大富豪が、お金はいくらでも積むから病気を治してほしい、と依頼が殺到するほど優れた能力を持っています。しかし、そのような依頼は受けず、一般人のヒーリングに専念していました。ある日、自分一人の限界に気づいたのです。そこで、「広く世界に広めるためにビジネスの仕組を利用しよう」と考え、独自のレシピに基づいたサプリメントを製造しました。当初は近隣の人々に無料で配布していたといいます。それが現在のように、世界に広まる結果になったのでした。

 ミッチェルはビジネスに伴う「影」の部分が嫌で、当初はビジネスに進出することにためらいがあったそうですが、ビジネスを通じて世界と関係を築くことができる「陽」の部分に気づいたのでした。もちろん現在でも「あれとこれをするだけでもっと生産性が上がり、儲かりますよ」といった、「影からの誘惑」は後を絶たないそうですが、ミッチェルは「ビジネスという乗り物は、よいことを世界に広げていくための手段」と考えていますので、きっぱり断ります。すべてを正直に、透明性を高めることが、ミッチェルの経営哲学であり、繁盛の秘訣です。

(2007年9月16日号掲載)