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アメリカでのビジネス・仕事

現地情報誌「ライトハウス」が人気コラム「アメリカ人と共に働く技術」をはじめ、起業・独立、マーケティングに関する情報など、アメリカでのビジネスに役立つ情報をご紹介。

ライトハウス編集部
ライトハウス編集部

69)仕事の定義

マーケティング講座

皆さん、こんにちは! 阪本啓一です。
「どこかにいい人、いませんか?」
経営者がよく口にするセリフです。
そういう時、私はこう返します。
「その『いい人』に何の仕事をしてもらうんですか?」
今日はその話をしましょう。


いつも「新鮮」なホテル

 出張では睡眠品質確保のため、「ブランド」ホテルに泊まるのですが、これがまた、「価格だけはいっちょまえのブランドで、中身が伴っていない」ホテルがとても多い。

 例えば、名古屋で常宿だった某ホテル。地球上至るところに拠点を持つ外資大手なのです。私はそのホテルのゴールドメンバーなので、いつもエグゼクティブラウンジに通され、専用階でチェックインをします。カウンターには2人の担当者が常駐しており、月に最低2回は訪れるため私は2人の顔をしっかり覚えています。ところが、彼女たちは私のことを一切覚えようとしません(笑)。いつ行っても新鮮で、部屋についての個別リクエスト(例えば、ズボンプレッサーやパソコンのLANケーブルのレンタルなど毎回お願いしている項目)をしなければ何もしてくれません。指摘するのも面倒だし、こちらが客としてお金を支払っているのに、わざわざ「サービス教育」をしてあげることもなかろうと、黙っていますが。

 エグゼクティブフロアには外国人ゲストが多いため、彼女たちは英語を操れる、という理由だけで配属されたようです。つまり、彼女たちの「仕事の定義=なぜその部署にいるのかという存在理由」は「英語が話せること」であり、「エグゼクティブフロアに見合う必要十分なサービスを提供すること」ではないのです。ここにゲスト側とホテル側の定義のズレがあります。お互いにJOYが得られません。結局、常宿は別のホテルに変えました。


くつろぎの演出

 友人の誕生日をTホテルの鉄板焼レストランで祝うことにしました。ランチをその店で、その後席を移してバースデーカードの披露やプレゼントを渡したい。個別にホテル館内の店に複数当たって相談する必要がありそうだけど、面倒なので、最初に予約で電話した鉄板焼レストラン担当者にその旨相談してみました。かなりアバウトな問いの投げかけで。「友人の誕生日を祝いたいのですが…」。

 すると同じフロアにティー・ラウンジがあり、バースデーケーキの用意もできる由なので、お願いしました。ケーキを出してもらうタイミングやデコレートしてもらう名前、メニューはアフタヌーンティー・セットなど、打ち合わせを済ませ、この「一気通貫サービス」に助かった、と肩の荷を下ろして電話を切りました。10分後、ティー・ラウンジから電話が。「せっかくご予約いただいたのですが、鉄板焼きをお召し上がりのすぐ後に、アフタヌーンティー・セットではおなかが一杯ではないかと存じまして…」。

 たしかに野菜サンドイッチ、スコーン、各種スイーツ、などは、鉄板焼きの後にちょっとヘビーです。このナイスな提案に感動しました。「小さいケーキをご用意しますので、当日お好みのお茶を注文される、という計画ではいかがでしょうか」。

 くだんのスタッフは「電話で予約を受ける。そしてメニューのオーダーを事前に受けておく」ではなく、「ティー・ラウンジにおける午後のくつろぎのひとときの演出」と自分の仕事を定義しているのです。たしかに、席の予約にせよ、メニューの事前オーダーにせよ、必要なのはあくまで店の準備のためであり、店側の論理です。顧客の立場に自分が立ったらどうだろうか、という想像力を使えば、上記のような提案も企画できるはずです。


WIN-WINからJOY-JOYへ

 「互いに利益になる」ことを指してWIN-WINという言葉が使われますが、「勝ち・負け」という争いにリンクした言葉はどうもなじめません。対して、JOY-JOYはどうでしょう。お互いにJOYを感じることができる関係。ビジネスがハッピーになると思いませんか?

 さて、JOY-JOYのためには、先のケースからわかるように、仕事の定義に大いに関係します。「私はなぜこの仕事をやっているのか、何を果たすべきなのか」という定義を顧客の立場に立って定義できている人。職場のリーダーやマネジャーは仕事の定義を明確にすることが特に大事です。

 JOY-JOYができれば、そこには感動(WOW)が生まれます。感動まで手にしたら、その担当者は自分の仕事に対して誇りが持てるでしょう。現代の、「満たされた」従業員にとっては、給料や時給、福利厚生制度のさらにその先に、JOY-JOYを生み出す仕事の定義が必要です。それが高邁なモチベーションにつながります。

 経営者がよくする質問「いい人いませんか?」に対して、私が「何の仕事をしてもらうんですか?」と返す理由がここにあります。モチベーションを高めるためにも、仕事の定義を顧客側から明確にできていること。これが商売繁盛の秘訣です。

(2007年10月1日号掲載)