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アメリカでのビジネス・仕事

現地情報誌「ライトハウス」が人気コラム「アメリカ人と共に働く技術」をはじめ、起業・独立、マーケティングに関する情報など、アメリカでのビジネスに役立つ情報をご紹介。

ライトハウス編集部
ライトハウス編集部

74)人財のためにもブランドを

マーケティング講座

こんにちは! 阪本啓一です。
戦略戦術よりも、人の問題が最重要な経営課題になっています。
今日はその話題を。


永遠に開発されないソフト

 最近私はコンサルティングの現場で、クライアント経営者に向け、こんなジョークを話します。

 「社長、いまに『世界で1番簡単な経営戦略』『サルでもできる営業戦術』『すごいマーケティング』といったゲームソフトが開発され、ニンテンドーDSで使える時代になりますよ。でも、いくらソフトが発達しても、まず永遠に開発されないのは、ヒトの問題です。だから、使える人を採用すること、頼もしい人財に育てることが今後ますます経営の優勝劣敗を決めます」。
 ヒトの問題は、現代日本では既に深刻です。まず、圧倒的に売り手市場の採用氷河期であること、また、せっかく来てくれた人も、学力はおろか、社会人としての基本的なセンスやマナーが身についていません。

 会社は採用後数年、大学の代わりに教育しなければならない覚悟が必要です。こんな話があります。


「お昼行ってきまーす」が最後の言葉?

 渋谷109、若者に人気のファッションビル。そのなかの某ブランド店長に聞いた話です。アルバイトがお昼に出たまま午後帰ってこない。午前中何か注意するなり叱るなりして、それが気に入らなくて午後いなくなってしまう、ということなら過去に実際あったし、理解もできるのですが、思い当たる節はない。午前中は機嫌良く仕事していた。

 物騒な昨今ですから、何かあっては大変と携帯に電話したところ、「着信拒否」! 八方手を尽くしてつかまえ、理由を聞いたところ「自分のイメージしていた仕事と違った」と。「商品ディスプレイの仕事がしたかったのに、倉庫から箱詰めされた商品を出すことばかりやらされる。こんなのワタシの仕事じゃない!」。

 それにしても、挨拶も対話もなく、ぷい、といなくなってそのまま。まるで学校の授業サボリのノリです。「日本の教育がなってないんですよ」と嘆く店長。彼女もまだ、24歳なのですが。


何やってる会社なのかわからないが惹かれる!

 お話変わって、楽天のケース。楽天の創業期にjoinし、現在は楽天大学学長として活躍されている仲山進也さんは1999年(楽天創業の2年後)当時、某電機メーカーに勤務していました。勤務先は奈良。周囲はいい人たちばかり、会社の雰囲気も良いのですが、どうもいま一つ自分の中で「燃える」ものがない。いわゆる「くすぶって」いました。そんな折、ある縁で東京の楽天オフィスに行き、そこで創業メンバーや三木谷浩史社長本人と会い、いろいろ話をして、熱さに触れ、「何をやっている会社かよくわからないまま」圧倒されました。

 会社の資料(出店社向け説明パンフなど)をもらい、帰りの新幹線で読んではじめて「面白そうな会社だ」と思ったそうですが、ここで大切なことは、99年当時、楽天は「海のものとも山のものともわからない創業期にあった」という点です。もちろん、現在のように自社ビル「楽天タワー」をもつほどの強力なブランドになるとは仲山さん、三木谷さんを含め、だれにもわかりません。それでも、仲山さんにとっては、行きと帰りの新幹線車窓から見える景色が違って見えるほどの体験だった。それは、創業メンバーの「かくありたい」というブランドへの意志が強烈で、熱かったからです。

 仲山さん曰く、「『中小企業をエンパワーメントする』というミッションに強く惹かれました!」。


人を得んと欲すれば

 創業からわずか10年で現在のような強力なブランドに育つことができた楽天の急成長の秘密、私はやはり「人の強み」と分析しています。毎週月曜日朝8時からの三木谷社長直々の講話で始まる朝会(電子会議ではなくリアルに社員全員が集まるので、会場はものすごく広い。会場の隅ははるか彼方、見えなくなるくらい)、新人研修最後の打ち上げには役員全員が参加してグラスを交わす、日常業務の基本はシステムに頼るより人力…。ヒトのチカラ、ヒトの交わりを何よりも重視する風土こそが楽天の強みです。

 「楽天のようにスーパー・ブランドなら、それもできるさ」と思われるかもしれませんが、是非学びたいのは仲山さんのケースです。仲山さんが「何をやっている会社かわからないが惹かれた」のは、経営幹部たちの「かくありたい」熱い思いです。

 人を得んと欲すれば、まずは自分たち経営幹部が自社ブランドの理想を強烈に思い描くこと。そして思い描いたミッションを明確にフレーズ化すること。それがそのまま磁石となり、引力を発揮、さらには人を育てる自社オリジナルの教科書になるのです。

(2007年12月16日号掲載)