働く
JOB

アメリカでのビジネス・仕事

現地情報誌「ライトハウス」が人気コラム「アメリカ人と共に働く技術」をはじめ、起業・独立、マーケティングに関する情報など、アメリカでのビジネスに役立つ情報をご紹介。

ライトハウス編集部
ライトハウス編集部

76)強いブランドはカテゴリーを創出する

マーケティング講座

こんにちは! 阪本啓一です。
新しいカテゴリーを作ることほど強いものはありません。


強いブランドの条件

 最も強いブランドはブランドそのものが1つのカテゴリーを作っています。つまり、「既にどこかにあるものの改善・改良」ではなく、「全く白紙から作り出す」。例えばニンテンドーWii。家庭用据え置き型ゲーム機ではありますが、開発コードネームが「Revolution」であったことからうかがえるように、「Wii」というカテゴリーを創出したと言えます。だから売れるし、強い。

 個人も同じで、マドンナは、歌手、俳優ではあるものの、やはり「マドンナ」が職業名として最適でしょう。CD市場の縮小を受け(2006年は00年に比較して31%ダウン)、マドンナは25年にわたるレコード会社との関係を解消し、イベント興行会社ライブ・ネイションと契約を交わしました。今後はライブを中心に活動するわけです。また、ライブ・ネイション株の1.6%を保有し、同社所属の他のアーティストからの収益も享受できるようにしています。マドンナは、その生き方そのものも新しい「Madonna Way」を提案していて、斬新です。


別のアルバム?

 スピーカーといえば、LとRの2個、三角形の頂点がベスト・リスニングポジションというのが常識です。重く、大きいほうが低音の響きが良く、オーディオルームに立派なスピーカーを据えつけることが音楽愛好家の1つの夢です。逆に言うと、良い音を楽しむためにはそれだけのスペース(や重量を支える床)が必要ということ。ところが、この、スピーカーの常識を覆すイノベーションが生まれているのです! 波動スピーカーと呼ばれるその製品は、円筒形をしています。しかも、たった1個でOK! リスニングポジションは、全方位、どこでも同じ音が聞こえる、といいます。

 『ワルツ・フォー・デビー』(ビル・エヴァンス)1曲目『マイ・フーリッシュ・ハート』。半信半疑で最初の1音を聴いたとき、聴きなれたアルバムが、全く別の作品に聞こえました。何だか知らないけど、異和感がある。これは何だろう? 20年来愛聴していますが、それまで耳にしたことのない「雑音」。どこか別の部屋の音だろうか。いや、ここは視聴室、遮音は完璧なはず。一生懸命に耳を澄ますと、雑音などではない、ドラムのブラシがスネアをこする音でした。まさかこんなにリアルにドラムのブラシがこすっているとは! 聴きながら、驚きながら、私はスピーカーの周囲をぐるぐる回りました。かがんだり、立ったり。興奮して、じっとしていられないのです。面白いことに、360度どこでも同じ音がします。変わらない。しかも、手を伸ばせばすぐそこにビル・エヴァンスがピアノに座って演奏しているかのよう! 粒の立ったベースを聞かせてくれるスコット・ラファロがこのわずか11日後に交通事故で他界している(享年25歳!)ことを思うと、まさにラファロが生き返ってくれたかのような錯覚に陥ります。


天界からの贈り物

 開発者の三浦光仁氏によると、このスピーカーの開発にはわずか6カ月しかかかっていないとのこと。私が「天から降ってきたんですね」と聞くと、「まさに、そんな感じです。音響工学の延長では、絶対生まれてこない製品ですから」。現に、名だたる音響機器メーカーや自動車メーカーが波動スピーカーを手に入れ、リバースエンジニアリング(分解してコア技術の秘密を探ること)をいくら実行しても、全くわからないそうです。かの著名なBOSE博士でも、同じ仕様の製品は作ることができていません。

 実際、あの小さくて軽い(MS0801:160φ×400 mm、重さ2200g)スピーカー1つでたちまちにして音楽ホールと同じ「場」を作り出すマジックは、この世のものとは思えない素晴らしさです。しかも、9万8千円(税込・MS0801)! こうなるともはやスピーカーとは呼べません。楽器か、あるいは、家具です。販売ルートも、よくある家電量販店やオーディオショップではなく、ハイグレードなインテリアショップ(三越本店や伊勢丹新宿店の家具売り場など)に置いているそうです。音質のみならず、シックなデザインも評価され、ザ・リッツカールトン東京のスイートルーム36室全室に導入されました。また、坂本龍一氏、日野原重明氏など各界著名人も愛用している由です。

 iPodやパソコンなどに接続しても、高級感あふれる音を再生してくれます。友人のCDをコピーしたCDRですら、音の劣化を感じさせません。まさに音源を選ばないのです。

 愛聴しているある女性の「(この製品の)ある私とない私で人生が違う」という言葉が、的確にこの製品のすごさを表現しています。強いブランドになるためには、何をおいても、この波動スピーカーのように、独自のカテゴリーを創出すること。競争知らず、値崩れ知らず。ブランド・ビルディングの主人公になれます。理想ですね。

(2008年1月16日号掲載)