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アメリカでのビジネス・仕事

現地情報誌「ライトハウス」が人気コラム「アメリカ人と共に働く技術」をはじめ、起業・独立、マーケティングに関する情報など、アメリカでのビジネスに役立つ情報をご紹介。

ライトハウス編集部
ライトハウス編集部

78)変わり目に注意する

マーケティング講座

こんにちは! 阪本啓一です。
固定客をつかまえるコツは、変わり目の実行にあります。

 ビジネスの80%は固定客によって成立しています。ありがたい存在ですが、顧客は、ちょっとしたことで簡単に離れていってしまいます。逆に言うと、その対策を打てばいいわけです。


愛のないスタッフ

 馴染みのカフェ・レストランに4人で行きました。席へ案内され、コートを入れるボックスに上着を収納。お水のグラスとメニューを持ってきてくれたスタッフに、灰皿を頼みました(私以外の3人は愛煙家なので)。

 再びやってきたスタッフがひと言、「喫煙席はこちらにお願いします」。ここは何度も来ているのですが、どうやら喫煙席ゾーンが変わったようです。人間というものは不思議なもので、一度座ると、動きたくなくなる。その気持ちに水差す「席を動け」という店の「命令」は、理不尽に思えるのだから妙なもの。一旦納めた上着をボックスから出し、こまごました荷物を持ち、移動しました。私がスタッフなら、ボックスはそのままにしておいてください、お席まで運びます、と言うのになあ、と考えながら…。

 煙草に火をつけ、談笑していると、元の席から水のグラスを持ってきたスタッフ、愛のないしぐさでグラスをテーブルに置いたかと思うや否や、席後ろの柱のあたりで何かしました。途端、グワーッという騒音。びっくりして見ると、柱にすえつけてある扇風機(冬の話です)を回したのです。


変わり目は

 この事例の中で「変わり目」は3つあります。第1に、席の移動。席案内の際に確認する基本動作(喫煙席確認)をスタッフ本人が忘れ、その結果、禁煙席に客が座ってしまい、席の移動を客に依頼しなければならないこと。基本動作を忘れず実行していれば、普段は必要ない仕事です。ただ、現実に起こってしまった。その時にどうするか。これが変わり目の1つ。

 第2に、水の移動。自分でグラスを持って移動しなければならないのにそれをしなかったあなたたちが悪い、というような批判的態度(人間は言葉以外でもメッセージを受発信しています)に出てしまいました。

 第3に、扇風機の始動。室内は暖房が効いています。扇風機を回す理由は、煙草の排煙。例えばせめて「失礼します。扇風機を回しますね」のひと言があれば、違ってきます。何か忌まわしいものであるかのように扇風機を黙って起動させることはないと思います。夫婦ゲンカしている奥さんがあてつけに回すイメージ、あれを浮かべてください。客にそれはないでしょう(笑)。


開店直後・閉店間際に注意

 その他の変わり目として、開店直後と閉店間際に注意しましょう。某老舗ホテル1階カフェ。ラストオーダーぎりぎりに入店、仕事の打ち合わせをしていたら、ガッシャーンと食器を落とす音、フロアリーダー自身が浮き足立ってしまって足音バタバタとフロアを小走り、スタッフが大声で談笑…。

 戦前からの長い歴史を持ち、文豪や映画スターなど各界の名士に愛された伝説に輝くホテル。昼間のカフェは、確かにその名に恥じない静謐な空間が存在しています。だからこそ、重要なビジネスミーティングをここでやろうとしたのですが…。閉店間際にはその店の素顔が出ます。開店直後も。


買いたい心に点火する

 他の変わり目としては、電話の切り際、お見送りの最後、「お客さんが陳列してある服を出し、当ててみて、棚に戻した時」など、皆様のビジネスの中で、たくさんのシーンが浮かぶはずです。Tシャツを広げてデザインを見て確認したあと、気に入らなくて元に戻す。そのたびに飛んできて目の前でたたみ直し、棚に戻されたことがあります。これなど、「接客ではなく監視だよね」と、店を出てから一緒にいた友人と話しました。

 お客さんの買う気に点火するのは、商品力だけではありません。どうしようかな、買おうか、買うまいか…。Tシャツは、ありていに言ってしまえば、買わないと生きていけないものではありません。また、特別なコレクターズアイテムのような商品ではない限り、「買う・買わない」の発火点はとても気まぐれ。だからこそ、店のスタッフの腕が試され、生きます。たたむのは客が店を出てからいくらでもできる。そんなひまがあったら会話する。会話で、買いたい心に点火するのです。

変わり目がチャンス!

 変わり目こそ、チャンス。全部は事前に読めないにせよ、業務内の変わり目を書き出してみて、各々に対し、きちんと「どうするべきか」を普段から考える。そして、何をして、何をしてはいけないか、について基本動作になるようレッスンしておきましょう。かつ、「変わり目に注意」という意識を強く持つ。現代のお客さんはプロ。プロはちゃんと見てくれています。そして固定客になってくれます。

(2008年2月16日号掲載)