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ライトハウス編集部
ライトハウス編集部

82)心のバリアを解く

マーケティング講座

こんにちは! 阪本啓一です。
本コラム3月16号掲載(wave 80th)の平田進也氏に
お目にかかりました。おすそわけしたいと思います。


カリスマ営業マンの素顔は

 会いたいとなったら、じかに会いに行くのが私の流儀です。本原稿執筆の3日前、大阪へ取材に出かけました。日本旅行のサラリーマンでありながら、1人で7億稼ぎ出すカリスマ添乗員。現実に目の前に現われた平田さんは、やはり一流の人らしく、ちっとも偉ぶらなくて腰の低い、丁寧な応対をしてくださる人でした。ところが。

 いざ話し始めると、ちょうどガスが強火に点火した感じで、全身から炎のようにメッセージや「やる気」がビンビン発信され、前にいる私と編集者は圧倒されてしまいました。

 平田さんの著書に「二十四時間仕事頭」という表現がありますが、まさにその通りで、「ノンストップのやる気放出」でした。


アホになる

 関西と関東の商風の違いもありますが、関西では、お客さんのふところに飛び込むためにまず、「自分がアホになる」ことだと平田さん。平田さんは、池乃めだかさん(吉本興業)を例に挙げます。

 めだかさんはキャリア40年以上の大ベテランですが、いまだに道端で寝っころがって得意のねこのギャグを平気でやって、周囲を笑わせています。生涯一芸人として、「大御所」ぶらないところも、めだかさんの人気を支えているのですが、「自分がアホになる」ことで、お客さんの胸襟を開く。心のバリアを解く働きがあるのです。

 平田さんは女装し(ワタベウェディングのドレスを着たりします)、自ら化粧し(お母様が、「いつからあんた、私より化粧上手くなったん」と呆れた由)、宴会場を走り回ります。

 著書の第1章「いま、あなたは何をすべきか?」の章扉にある写真は、平田さんが自分で口紅を塗っているところです。「何をすべきか?」って、それが化粧ですか…(笑)。もう、笑うしかありません。「上から目線」では、お客さんは心のバリアを解いてくれない。納得です。


お客様の中での社長になりたい

 平田さんは手帳の後ろに次の言葉を書き込み、事あるごとに読み返し、噛み締め、仕事に向かうそうです。引用します。

 「常に頭を低く謙虚な気持ちをもっておかげさまと言う姿勢で生きる。社長、部長がいくらのものか、お客様がいて頂いての役職。私はお客様の中での社長になりたい。それを忘れてはならない」。生涯現役、最前線でお客様と接していたい。だから組織内での「ウエ」に行く希望はさらさらないと平田さんは言います。確かに、取材中も電話でお客様と話している氏の表情は心底楽しそう、見ている私にも喜びが伝染してきました。


こころの医者

 平田さんツアーの熱狂的なファンの1人は、ツアーに参加することを「平田病院へ診察に行ってきます」と表現しています。そう、こころを癒されるために参加するのですね。こんなエピソードがあります。関西在住の人のために、「東京おのぼりさんツアー」を企画したときのこと。東京タワー、六本木ヒルズ、東京ミッドタウン、お台場、などなど、関東に住んでいる人でもなかなか行かないような名所スポットを1泊2日でめぐるツアーなのですが、何と、都内在住の人が参加。後でわかったのですが、その人は、プライベートで深く悩んで自殺を考えていたそうです。死ぬ前に楽しいことを体験してから…。

 ところが、(その様子を察知した平田さんの配慮もあって)ツアーの参加者に親切にしてもらい、楽しく笑っているうちに、「人生にはこんな楽しさもあるのだ」とあらためて思い知り、生きる希望を得たというのです。今やその人は、東京から関西のツアーに参加、大阪の宿泊場所はツアーで知り合った参加者の自宅というから驚きです。

旅行を売ってるんやない、楽しさを売ってるんや

 平田さんはこう言い切ります。確かに、よくあるような旅行社の企画するパックツアーとは違い、すべてに「手作りの温もり」が感じられます。7億の売上といっても、法人相手の一発ドカンという大きな売上ではなく、あくまで個人客売上の積み上げ。丁寧に、ていねいに、1人、またひとり、ファンとのこころの絆を深めていった結果。ツアー商品は「徳島、ももイチゴ狩り食べ放題ツアー(旅行代金大人1人1万1500円)」のような、小ぶりな単価の集積で作り上げた数字ですから、平田さんのすごさがわかります。

 「オモロイことなくて、何が人生や。最近の日本は目をおおいたくなる事件が多い。自分にできることを通じて、少しでも世の中を良くしたい」。
 平田さんがこうおっしゃったとき、思わず握手していました。私も同感なのです。ビジネスをやる意義は、ビジネスを通じて、世の中を良くするインパクトを与えるためであると。