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アメリカでのビジネス・仕事

現地情報誌「ライトハウス」が人気コラム「アメリカ人と共に働く技術」をはじめ、起業・独立、マーケティングに関する情報など、アメリカでのビジネスに役立つ情報をご紹介。

ライトハウス編集部
ライトハウス編集部

88)うまい営業

マーケティング講座

こんにちは! 阪本啓一です。
上手な営業方法を伝授します。


28年の営業経験から

 旭化成営業マンとして19年、その後独立しましたが、自営業とは見方を変えるなら日々営業です。また、顧客企業の営業についてコンサルティングすることもありますし、商品力はあるのに今ひとつ実績が伴わない場合、営業マンの行動を見させていただくことがあります。よって、私の28年のビジネス経験のすべてが営業と共にある、と言っても過言ではないでしょう。経験にマーケティング理論を加え、うまい営業とはどういうものか、お話しましょう。


営業は売り込むことではない

 営業というと、言葉巧みに顧客を説得するトーク術が浮かぶかもしれませんが、本質ではありません。例えば、よくチラシ戦術で見かける、いわゆる「煽り」のテクニック。価格の上に手書き風の線を引き、「大幅値下げ!」と低価格を謳う。「今なら○○%引き!」と、この期間に買わないとソンをする気にさせる。

 要らないよ、欲しくないよ、と右を向いているお客さんの首を無理矢理こちらへひねり、閉じた口を開かせ、強引に押し込むような手法は営業の本質から最も遠いものです。


営業の本質は「ご縁結び」

 私の会社JOYWOWにも営業担当がいますが、彼らの肩書きは「ご縁結び担当」です。企業とJOYWOWとのご縁を結ぶための活動をする。また、クライアント企業へのコンサルティング・アフターケアをする。こころのパイプを通し、太くすることだけに集中する。私が彼らに言うことは極めてシンプル。 顧客企業の担当者にかわいがられ、何でも相談をもちかけられる関係に、1日でも早くなること。ミッションはこれだけです。ノルマ、なし。目標数字、なし。訪問件数も問われません。当然、社内に担当ごとの実績表を棒グラフにした表が掲示されていることもありません。

 彼らが顧客企業を訪問してすることはただ1つ。「相手の話を引き出し、耳を傾ける」ことです。提案もプレゼンテーションも不要です。コンサルティング会社ですから、「売り」とするノウハウや技術は当然、持っています。ビジネスシーンでよく使う用語で言うなら「ブランド構築」「リーダー育成」「組織開発」「チーム・ビルディング」「コミュニケーション改善」「収益力分析」「モチベーション向上」という風な表現になるのでしょう。

 しかし、ご縁結び担当はそれらの「ツール」をカタログやプレゼン資料にして売り込むのではありません。人の指紋が全員違うように、企業の抱えている問題は1社ごとに違うものです。「すべての案件はオーダーメイド」。これがJOYWOWの合言葉です。


すべてをぶちまけない

 建材販売店の新人営業マンと同行した時のエピソードです。新人君、商談の席に着くやいなや、いきなり鞄からカタログと製品カットサンプルを出し、とうとうと説明を始めます。製品規格、開発者の思い、価格…。顧客は、初対面の営業マンから次々に投げられるボールを吟味するひまもなく、受け止めるのに精一杯です。

 できる営業マンは、こういう初対面の面談では、顧客が何を望んでいるのか、まず、ヒアリングすることから始めます。自社の商品の説明は一切しません。机の上には何も置かない。置くと、顧客のニーズに一致している商品の場合は良いのですが、例えばエコ意識が高い顧客の前に、過剰包装された商品があるだけで、「予選落ち」になってしまう可能性もあるのです。また、いたずらに先入観を与えかねません。

「不」を聞き出すことが先決

 営業マンにとって重要な力は質問力です。現在、先様が何に対して「不」、即ち、不満、不便、不安を感じているのか。その「不」に対して、自社には解決方法がありますよ、そのための商品ラインナップなのですよ、という順番が重要です。

 気をつけなければならないのは、いくら「不の解決」が重要とはいえ、自分から相手の「不」を指摘、不安や不満を煽るアプローチを取ってはいけない、ということです。


営業力は人間力

 煎じ詰めれば、営業はその人の全人格的なものをフル活用して臨む仕事といえます。営業力は人間力。仕事を通じて人間を磨くことのできる素晴らしい仕事なのです。人間を磨くことで営業力もまた増強されていきます。楽しみですね!



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