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アメリカでのビジネス・仕事

現地情報誌「ライトハウス」が人気コラム「アメリカ人と共に働く技術」をはじめ、起業・独立、マーケティングに関する情報など、アメリカでのビジネスに役立つ情報をご紹介。

ライトハウス編集部
ライトハウス編集部

89)ゆるみ力

マーケティング講座

こんにちは! 阪本啓一です。
ゆるんでますか?


ゆるみ力とは

 「ゆるむ」という語感から連想されるような、「なまける」「たるむ」ということではなく、心身どこにも力が入っていない、自然体のことです。実はこの時、人間は潜在能力も含め、フルパワーを出すことができます。合氣道でいうところの、「心身統一」の状態。全身の力を完全に抜き、臍下の一点に心をしずめ、統一する。ビジネスで成功するためにも、実はゆるみ力が必須なのではないかと思います。


基本哲学は NOW & HERE

 ゆるみ力を身につけるための基本哲学は「今に生きる」。NOW & HERE、今・ここ。まだ起こっていない未来を心配してくよくよしない。済んでしまった過去に思い煩わない。ゆるめない理由は、「心ここにあらず」の状態です。せっかく「今、ここ」に生きているにもかかわらず、過ぎ去った過去や、遠い未来に「今の心」を送信してしまうのです。送信してもリターンされてくるのはネガティブな心ばかり。自分で勝手に考えて、勝手に悩みを作り出してしまうのです。


ゼロから始める積み上げ算

 友人が地方に拠点(本社・流通倉庫)を置いてアパレルの通信販売をしています。私は友人として経営の相談に乗っています。子どもの教育など私的な問題もあり、ビジネスの壁にぶちあたっているようでした。話し合う中で、「いっそ、本社・流通倉庫とも京都に移転しちゃおうか」ということになりました。京都は、彼のビジネス上深いつきあいのある染色工房が多数あり、ちょっとした打ち合わせにも便利です。また、彼の子どもが学びたい専門分野をカバーしている良い専門学校も4校あります。大口取引先の集まっている大阪へも電車で30分もあれば行けます。

 ここまで条件が揃っていることがわかって「なぜ行かない理由があるんだろう?」と話が収束しかかったその時…。彼が「でも…」と続けます。「今は田舎だから大きな倉庫も安くレンタルできているし、パートさんの時給も安く抑えられている。でも、京都のような都会に行くと、きっと狭くなるし、時給も高くなるよね」。

 そこで私が提案したことは、「今の状態からどう変わるか、今を完全体としてそれとの比較を考えるのではなく、いったん、ゼロに戻してしまいましょう。ゼロから始めるのだから、何かすればするだけ積み上がっていき、ストレスがなくなります。もともとゼロから始めた商売じゃないですか。ゼロに戻るだけ。そして、今の経営上の諸問題は、『身の丈以上に成長してしまったことが最大の原因』です。身の丈に応じた商売を、小さく始めてコツコツと育てて行くことこそが、ビジネスをやる喜びだし、一つひとつを丁寧にやることが、きっと預金通帳のゼロの数を今より増やす結果につながりますよ」。


変化が常態

 美術評論家、随筆家の仲田定乃助さんの著作『明治商売往来』(正・続)で、明治時代の269の商いが紹介されています。中には「井戸浚い」(井戸の掃除)、「消毒屋」(汲み取り式トイレの汲取口を消毒する)といった、現在では成立しない商売があり興味は尽きないのですが、痛感するのは、ビジネスが、人間や動植物と同じく、環境の中で生かされている生き物だという点です。

 マクロは地球温暖化、原油価格の高騰、ミクロトレンドは各業界のおかれている環境変化(例えば日本では7月1日から、タスポとよばれるIDカードがないと自販機でタバコが買えません)、など、私たちを取り巻くビジネス環境は常に変化しています。まさに「変化が常態」。先のことなど、だれにもわかりません。だからこそ、「今・ここ」に集中する。「昨日もないし、明日もない、毎日来るのは新しい1日」という、まっさらな気持ちで日々を過ごしましょう。といって、短絡的視野で処理せよ、と言っているのではありません。計画に基づくのは当然ですが、計画はあくまでフィクション。その計画を実施していくにあたり、ぶつかる数々の壁はリアリティ。その時、無理矢理フィクション(計画)にリアリティを合わせようとするから無理が生じるのです。「お前のやりかたが悪い」といった無益な犯人探しになってみたり、「計画立案した自分の責任です」とフィクションのおかげでリアルな人間が苦しんだり。ばかばかしいです。

 変わる環境へ、ダイナミックに対応しつづけていきましょう。この力がゆるみ力です。


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