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アメリカでのビジネス・仕事

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ライトハウス編集部
ライトハウス編集部

90)ピュア(pure)なビジネス

マーケティング講座

こんにちは! 阪本啓一です。
純粋な気持ちがビジネスをより良くします。


生水の郷

 滋賀県高島市新旭町の中でも最も小さい集落の針江。ここは独自の水の利用システムで有名です。戸数わずか175の集落ですが、年間7800人(2007年)のエコツアー見学者がやってきます。08年は1万人が見込まれる模様。オーストラリア、ドイツ、韓国、中国などからも見学者が後を絶ちません。環境学習の一環として訪問する中学校も。

 取材の電話をしたところ、生水の郷委員会の方はとても親切に、ウェルカムな対応をしてくださいました。夏休み真っ盛り、忙しいはずなのに、ナチュラルなムードが、とても素敵です。 簡単に水の利用システムをご説明しておきましょう(*)。この地区の土地は、西に比良山系、東には琵琶湖という位置関係にあります。比良山系に降った雪や雨が土にしみこみ、時間をかけ伏流水となります。地下24m付近に3つの水脈があり、これに沿って井戸を掘ると湧き水が出てきます。この水を「生水」と呼び、大切に使ってきました。

 湧き出てくるパイプを打った元池から流れてくる水を各家の台所の壺池に溜めます。この水を、洗面、炊事、飲料など、生活水として活用します。使用後の生活排水は端池に流れ込みます。そこには鯉が飼われていて、野菜くずなどを食べ、浄水してくれるのです。水は家の前の溝に流れ、隣家の端池に入り、また溝へ、さらに水路や川を経て最終的には琵琶湖に注ぎ込みます。きれいな水の循環です。

 この水利用システムのことを、昔からこの地の人々は「川端」と呼んでいます。土地の人は、「下の人は上の人を信頼して水を使い、上の人は下の人を思いやって水を汚さない」精神が、川端を支えているといいます。


浄化するのは水だけでなく、人の気持ちも

 この、「人の気持ちを思いやる」水利用のおかげで、針江では、水路や川にごみを捨てる人がいません。もともと針江が有名になったのは、04年1月に放映されたNHKのドキュメンタリー番組『里山・命めぐる水辺』でした。評判となり、毎年見学者はうなぎのぼり。住民たちにとっては当たり前のことが、見学者によって、いかに貴重で、大切なことかを再認識する機会になったのでしょう。ますます水や生活環境がきれいになり、絶滅していたホタルが23年ぶりに復活したり、良いサイクルが循環し始めました。

 ピュアな水が、それを守る人の気持ちもピュアにしてくれているわけです。エコの本質は、ここにあります。人も自然も、大きな一つの循環系の中で共生する。その中の「流れ」をピュアにすること、これが本当の意味のエコだと考えます。


ビジネスをピュアにする

 「ビジネスをピュアにする」というコンセプトを考えてみましょう。商品そのものがピュアであり、ビジネスのやりかたもピュアであることが重要です。企業の社会的責任(CSR)がエコと並列で語られることが多いですが、たとえば近隣の公園を社員が掃除するとか、パッケージを簡略化することで省資源に貢献するという活動が紹介されることがあります。いずれも重要で、やらないよりはやるほうがいいに決まっているのですが、どうも「本業外のクラブ活動」の域を出ていない印象が否めません。

 「ピュアなビジネス」ならばどういう行動になるでしょう。具体的には、その企業の商品(製品・サービス)そのもの、本業がピュアであること。たとえば添加物を仮に使わざるを得ない食品だった場合でも、「使っていますが、これこれこういう理由で、材料はこれで、分量は○○グラムです。健康には全く問題ありません」と正直に言えるか、どうか。無添加に越したことはないのですが。

 また、仕入先や販売先に対してピュアな取引をしているか。力関係で、「弱い」ところを泣かせることでビジネスが成立していることはないか。かつての安売り物販ビジネスの利益構造の中には、この、「だれかが泣く」要因が少なからずありました。社員をはじめ、ステークホルダー全員とピュアな気持ちでビジネスができているか。関わる人の輪の中で、ピュアな気持ちがピュアなまま循環しているか。

 ビジネスは、人間が創作した頭脳の産物ではありますが、現実世界へのインパクトの大きさは否めません。ピュアな循環を、目指しましょう。

*参考:生水の郷委員会
 せこむらいふ
 08年夏号(P5-P8)


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(2008年8月16日号掲載)