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アメリカでのビジネス・仕事

現地情報誌「ライトハウス」が人気コラム「アメリカ人と共に働く技術」をはじめ、起業・独立、マーケティングに関する情報など、アメリカでのビジネスに役立つ情報をご紹介。

ライトハウス編集部
ライトハウス編集部

101)100年ブランド

マーケティング講座

こんにちは! 阪本啓一です。
後世に残るブランドを目指しましょう。


明治商売往来
 美術評論家・仲田定之助さんは明治21年(1888年)、東京は日本橋の生まれ。明治東京の風俗・風物に詳しく、随筆を残されていますが、その中に、明治時代の商売を記した『明治商売往来』(正・続)という本があります。全部で269の商売が記録されています。私は、研究開発の一環として、これら商売一つひとつについて、「現在もまだ残っているもの」「残っていないもの」「業容が変化したが残っているもの」など、丁寧にチェックしていっています。
 本原稿執筆段階では未だ87の商売についてしか調査が終わっていませんが、「長く続く商売とは」を考えるのに、非常に重要な示唆をもらえます。明治維新が1868年ですから、今年2008年から振り返ればわずか140年。140年後、即ち2148年にも残る商売のために、勉強してみましょう。


残る商売、消える商売

 調査の終わった87の商売のうち、現在も残っているものはいくつあると思いますか? 答えは60。消えた商売は27。これを多いと見るか、少ないと見るかは、お任せします。私が決めた判断の基準はこうです。「現在有る」とする判断は、「定期的にその業界に人が採用されている」。つまり、リクルート社などの就職・転職情報会社がその商売をカテゴリーとして持っているかどうか。そうすると、伝統工芸的なものははみ出てしまいますが、ただ、『明治商売往来』の中に記載されている「商売」は、当時の若者が就職先として検討可能だった仕事のはず(中には世襲制の職人仕事みたいに、違うのもあるかもしれませんが)。
 例えば、「合羽(かっぱ)屋」は「合羽だけを取り扱っている店」という意味で、08年現在、就職情報誌には掲載されていません。もちろん、合羽だけを専門に取り扱っている店はネットショップに存在します。しかし、店が存在しても、世間一般的な意味における業態として存続し、若者が就職希望先として検討する商売とは言えません。しかし、明治時代は合羽だけを商うことで商売が成立していた(合羽の語源はポルトガル語のCapa)。だから、そういう意味で現代においては「無」という判定です。すると、「刀剣店」はどうか。市場そのものが縮小しているから就職情報誌には掲載されないだろうけれど、業態としては残っているので、「有」にしました。ということで、最後は個別判断しますが、一応、線引きは前記基準にて行いました。


残る理由は何か

 1番気になるのは、「140年残る理由は何か」です。私なりの仮説を立てています。それは、「人間の欲求へわかりやすくダイレクトに応えてくれる商売は残る」です。時代と共に商品は形を変えますから、商売をニーズと言い換えてもいいかもしれません。例えば、「わんぷらいすしょっぷ」。これは現在「100均ショップ」として、あります。驚きなのは、英語で1-price-shopとネーミングされていることです。「何を買っても価格は1つ、しかも安いよ!」という「訴求」は、変わらず人を惹きつけるのですね。
 「按摩(あんま)」。この職業は江戸時代、さらにはその前からあるようです。現代もマッサージ店は盛況です。人間の「癒されたい」「リラックスしたい」という欲求は時代を超えます。「絵ハガキ屋」。ニューヨークのチェルシーに住んでいた時、お気に入りのショップがありました。日本では、絵ハガキだけで商いを成立させている店は稀少ですが、それでも、絵ハガキのニーズはなくなることはありません。旅先から、あるいは大切な人へ、こころをこめて、きれいな絵や写真のハガキを送りたい、その「相手を思いやるこころ」は変わりません。


100年ブランド

 ブランドの仕事をしていて、私が常に言うのは「100年ブランドを目指しましょう」です。流れや瞬間風速に惑わされない。ビジネスフロー(別名、ステークホルダー。仕入先、販売先、社員、株主、顧客、地域など)すべての間にpureな気持ちが流れている。商売の根っこにあるものが、「人の気持ちを楽に、または楽しくするニーズに応えるというビジョン」。これが100年続くブランドづくりのための、基盤です。その際、「業績が右肩上がりになる」というのは結果であって、目的ではありません。「販売目標を対前年比○○Up!」を経営目標にするから、その達成のためにブランドを支えているビジネスフローに不純物が混じるのです。100年ブランドを目指しましょう!

(2008年9月16日号掲載)




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