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アメリカでのビジネス・仕事

現地情報誌「ライトハウス」が人気コラム「アメリカ人と共に働く技術」をはじめ、起業・独立、マーケティングに関する情報など、アメリカでのビジネスに役立つ情報をご紹介。

ライトハウス編集部
ライトハウス編集部

112)与える

マーケティング講座

こんにちは! 阪本啓一です。
お客様の笑顔が対価ですよね!


ネット時代を振り返って

今から10年前の1999年、私はネットビジネス創生期の現場にいました。何事によらず、未来について語るのは楽しく、ワクワクするものですが、当時みんな、何かとんでもないことが起こる期待に胸をふくらませていました。日本でiモードがサービスを開始したのもこの年2月です。

ネットワークの本質は、個人と個人が「結び目」(ノード)となって、次から次とウェブを形成していく、その、「つながり」にあります。ネットビジネスはその「つながり」のどこかで課金するビジネスモデルです。つながりを言い換えると関門で、英語ではgate。gateごとにいかに課金(bill)するか、がポイント、そのビジネスで一番成功したのがビル・ゲイツ…って落語みたいですが、非常に示唆的な名前ですね。

一方、ITビジネスでも職を創出できる、と証明したのがパソコンビジネスのさきがけアップル社、創業者がスティーブ・ジョブズ(jobs)、これまた出来すぎです。ゲイツは引退してボランティア活動を始めています。これを私は「ネットビジネスが一つの時代を終えた」ことの暗喩と見ています。


getからgiveへ

ネットビジネスは「いかに課金するか」「どうやってお金をgetするか」に集中しすぎたきらいがあり、この姿勢が、伝統的ビジネスにも影響を及ぼした面は否めません。本来、商いは、まずはお客様を喜ばせ、その対価としてお金、評判、ご贔屓を頂戴する、という姿勢であるべき。つまり、「getではなく先にgiveありき」なのです。経済状況が厳しさを増している現在、この、商いの基本に戻り、「まずはお客様に与えよう」の姿勢で、自社のパフォーマンスを見直すことが必要です。既に実行し、成果を出している事例があります。


彼は与えて成功している!

日本旅行の平田進也さんは一人で7億売り上げるカリスマ添乗員として圧倒的な人気を誇っています。ファンクラブ会員数2万人。彼と話していると、「まず、お客様を喜ばせる、対価はそれについてくる!」ということが真実だと腹に落ちます。

「低価格路線なら、インターネットが一番です。飛行機代、ホテル代、いずれもネットで一番安いものを選べます。しかし、それらはパーツにしか過ぎない。私たち旅行業者の仕事は、お客様の笑顔をひきだす『非日常』の演出です。付加価値ある旅には、お客様は喜んでお金を出してくださいます。お値打ち感を大切にしています」。彼の言う「お値打ち感」と「お得感」は違います。お値打ち感は加点主義。これでもか、これでもか、とサービスを与えて、与えて、与えまくる! お客様は「もう、サービスしすぎとちゃうの? そろそろやめて」と言うことはまず、ない(笑)。「支払った金額以上の対価をお持ち帰りいただく」ことをモットーにする。対して「減点主義」は、バスはボロっちいのでいいだろう、ホテルの部屋も、この価格なら、グレードを落として…と減点していき、そして「低価格商品」を仕立て上げる。全然違います。当然、お客様の満足度も違ってきます。宴会で、平田さんは自腹で衣装を用意し女装、「進子ちゃん」になりきって徹底的にお客様を喜ばせます。


与える企画力

平田さんの強みは企画力にもあります。たとえば、大ヒット商品に「4時間の家出」という主婦対象の「仇討ツアー」があります。普段なら夕食の準備に忙しい夕方4時頃から、大阪北新地に繰り出し、通常なら男性がホステスさんを口説くために行く高級レストランに行きます。その後、ニューハーフショーへ。この、「普段はダンナたちが行っているお店に『仇討ち』で行く」という企画は、北新地のお店にとっても、夕方のお客様がまだ来ないアイドルタイムに売上が立ってありがたい、お客様も非日常を楽しんで発散できる、平田さんも売り上げが立つ、という「三方よし」です。


お客様を喜ばせる

どうやったらお客様が笑顔になってくれるか考える。商いは、そこを考える時に知恵が出ます。お金がたくさんあるから知恵が出るのではありません。お金がない、状況が逆風、だからこそ、お客様を喜ばせる方法を工夫する。「与える」を基本指針にしませんか?




阪本さんの新作書き下ろし小説
『HOPE!おばちゃんとぼく』
●メディアファクトリーより1月6日発売!



(2009年2月16日号掲載)