アメリカ投資・貿易ビザ(Eビザ)の概要と最新動向

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アメリカ投資・貿易ビザ(E-1・E-2ビザ)とは

申請者が、日米間で実質的かつ継続的な貿易活動を行う、もしくは相当額の投資をした会社の運営を指揮し事業を発展させるために渡米することを条件に交付するビザ。

  • 有効期間:5年(ただし滞在許可は2年)
  • 更新の可否:健全にビジネス運営が継続し、必要な従業員が確保されていれば、半永久的に更新可能(倒産して給料が出ない時点でステータス消滅)
  • 取得にかかる時間:日本の大使館で取得する場合は、大体準備に1カ月かかり、大使館面接でほぼ取得可能
  • 取得にかかる費用概算:3500ドル~
  • 配偶者の扱い:「E-4」
  • 配偶者の労働可否:可

 

「Eビザ」の最新情報

「Eビザ」は、貿易従事者ビザである「E-1ビザ」と、投資家ビザである「E-2ビザ」に分かれており、どちらも管理職か専門職、企業運営に欠かせない人材であることが申請条件となっています。簡単に言えば、日米間で貿易を行う事業であれば「E-1ビザ」、その事業が投資を伴うものであれば「E-2ビザ」というのが、一般的な分け方となっています。

「E-1ビザ」申請資格の概要

「E-1ビザ」は、日米間で貿易・流通を行う日系企業に勤める社員とその家族に対して発給されます。申請条件は次の通りです。
 
・申請者のアメリカでの勤務先企業の国籍が日本(株の50%以上を保有している株主の国籍が日本)で、親会社の株の少なくとも50%を日本国籍者(日本人か日本企業)が所有していること。
・日米間で継続的に相応の貿易・流通業務を行っていること。
・国際貿易の50%以上が日米間のものであること。
・管理職または専門職、あるいは企業の運営に不可欠な高度の専門知識を有する者であること。なお、一般業務レベル、または未熟練労働者は申請資格はない。

「E-2ビザ」ビザ申請資格の概要

アメリカに会社を設立し、投資活動をする企業投資家とその家族に発給されるのが「E-2ビザ」ビザです。相当額の投資とビジネスプランの提出が求められますが、条件の詳細は次の通りです。
 
・個人、共同経営者、企業体を含む投資家が日本国籍であること。
・企業の場合、少なくとも企業の50%の株を日本国籍者(日本人か日本企業)が所有していること。
・投資額は会社を順調に運営するために十分な額であり、かつ継続した投資であること。
・投資家はその企業を指揮し発展させることを目的に渡米しなければならない。
・申請者が投資家本人でない場合は、管理職または専門職、あるいはその会社に必要不可欠な知識を要する職種として雇用されなければならない。なお、一般業務レベル、または未熟練労働者には申請資格はない。
 
「E-2ビザ」ビザの取得には投資が必要ですが、実は明確な投資額は公表されていません。吉原弁護士によると、これまでの例で考えれば10~20万ドル程度が目安となるようですが、最近の傾向として、それ以上の投資額でも許可されないケースがあるそうです。

「Eビザ」取得の注意点

「Eビザ」を取得するには、①アメリカ国内でのステータス変更、②在日アメリカ大使館での取得の次の2つの方法があります。
 
①は、すでに何らかのビザでアメリカに滞在し、そこから「E」ステータスに変更するパターン。一方の②は、在外アメリカ大使館で面接を受けてビザを取得するパターンです。
 
吉原弁護士によると、日本に実在する会社から駐在員として渡米し、申請条件に適う職務経歴を有していれば、基本的に「Eビザ」は却下されないといいます。しかし最近では、スポンサー企業(駐在先企業)における職務が前職でのそれと異なる場合、事業内容の同一性(あるいは類似性)や給与設定の根拠など、かなり厳密かつ詳細に審査されます。特に①の場合、部下の人数や、その数は申請者が確実に管理できる現実的なものなのかどうかの証明などを要求されるケースが増えています。

有効期限と滞在期限は違う

「Eビザ」の有効期限は5年ですが、いったんアメリカ国内に入ったら、その時点から2年間の滞在許可しか下りません。つまり、ビザの有効期間が残っていても、滞在許可の期限までしかアメリカに滞在できないということです。
 
ビザの有効期間中に継続して米国滞在するには、滞在許可を更新する必要があります。その方法は簡単で、一度メキシコとカナダ以外の国外に出国してからアメリカに再入国をすれば、自動的に追加で2年間の滞在許可がもらえます。ただし、これは滞在許可が切れる前に行わなければなりません。また、滞在許可を更新しても、その有効期限前にパスポートの期限が来る場合、そこまでの滞在許可しか下りません。従って、最長5年のパスポートしか持てない子どもは、うっかり滞在許可が切れないよう注意してください。
 
(取材協力・監修:吉原今日子弁護士/ライトハウス・ロサンゼルス版2017年9月16日号掲載)
 
※上記は2017年9月1日現在の情報です。掲載後、内容が変更・改正される場合がありますので、最新情報や個別の事例につきましては移民法弁護士にお問い合わせください。


 

※以下、過去にライトハウス・ロサンゼルス版のコラム「移民法Q&A」に掲載された関連記事をご紹介します。

  • 日米間での貿易額が減少。貿易ビザ(E-1ビザ)を維持できる?
  • コロナで貿易額が減少。駐在員を今後も維持できる?
  • E-2ビザ申請を考えています。申請の現状を教えてください。
  • E-2ビザの更新が近いです。コロナの影響はありますか?
  • 日米間での貿易額が減少。貿易ビザ(E-1ビザ)を維持できる?

    瀧 恵之 弁護士

    Q:私は、日本の本社からの駐在員としてアメリカにおり、貿易ビザ(E-1ビザ)を持っています。私のアメリカの会社はもともと、アメリカ国内で生産された商品を日本の親会社に送り、親会社がその商品を日本国内にて、卸しおよび直販を行ってきました。しかしパンデミック以降、日米間の取引が激減しアメリカの会社の業績が下がることが容易に見込まれたので、会社の生き残りをかけて、日米の貿易のみに頼らずアメリカ国内での販売、日本以外との貿易も行うことにより、なんとか経営を続けてきました。そのおかげで現在までアメリカの会社の売上は大きく下がることもなく、アメリカ現地の従業員を解雇することも避けることができています。ただ、日米間の貿易が著しく減ったため、半年後に控えている私の「E-1」ビザの更新が心配です。この状況で何かよい解決策はありますか?

    A:まず、あなたの保持しているE-1ビザとは、アメリカとの通商条約が結ばれている国の国籍を持つ会社が、その国とアメリカの間で貿易を行う際に発行されるビザです。日本は、日米通商条約があるので、この対象国にあたります。E-1ビザを取得するには、スポンサーとなる会社の株式の50%以上を、条約国の国籍を持つ人(日本人あるいは条約国(日本))の会社が所有していること、およびその会社が条約国(日本)との間で貿易業務を行っていることが主な条件となります。株式を保有しているのが会社の場合は、その株主である会社の株式保有者が条約国(日本)の国籍を持っているか否かが問われることになります。

    E-1ビザとE-2ビザの申請条件の違い

    従って、あなたのアメリカの会社において日米間取引が激減したのであれば、あなたのE-1ビザの更新ができない可能性があります。そこで、このような場合はE-2ビザへの切り替えの可能性を考えるのが得策かもしれません。E-1ビザが一定の貿易額を要求されるのに対して、E-2ビザでは一定の投資額が必要とされます。それ以外の条件は、E-1ビザの場合と変わりません。

    ここで必要な投資額は約20万ドル(投資元、いわゆる株主が会社の場合は30万ドル)以上が妥当とされています。もちろんこれ以下の投資額でも申請は可能ですが、金額が少なければ少ないほどリスクを伴い、多ければ多いほど、認可の可能性は上がります。ですから、あなたの会社がこれに見合うだけの投資(支出)を行ってきたかどうかが問題になります。

    ここで、投資額の算出に関してですが、投資額とは一般的に「初期投資」と呼ばれるもののみが換算されるとされています。従って、流動性のある支出、毎月の給与支払い、家賃、仕入れの支払いなどは換算されないことになります。しかしながら、広告費用、会計士の費用、コンサルタント費用、ソフトウエアなどを含む設備への投資は、会社が設立されて以降、申請時に至るまでの全ての支出を換算してよいことになっています。あなたの会社は、設立されてから相当の年月が経過していると予想します。この場合、その間に投資した(投資対象として認められている)全ての投資額を合計することができます。従って、貴社のような場合は、多くの場合が現時点ですでにE-2ビザの取得条件を満たしている可能性が非常に高いです。

    E-2ビザを初めて申請するには会社登録が必要

    E-1ビザからE-2ビザに切り替える際は、今までのE-1ビザ更新のように、日本のアメリカ大使館で面接を受けるのみで発行されるのではなく、E-2ビザの会社登録から始める必要があります。この手続きを行うにはまず、アメリカの会社が登記されてから現在に至るまでに日本の本社からアメリカの子会社に資本金として送金した金額の合計を計算します。次に、同じくアメリカの会社が登記されてから現在に至るまでの資金の支出の証明を集める必要があります。前述したように、会計士の費用、コンサルタント費用、広告費用も全て含まれますので、会社の登記以降何年か経過している場合は、かなりの証拠書類が出せることになります。

    これらの証拠書類を集め、申請書とともに、日本のアメリカ大使館・領事館に提出します。その後、2〜4カ月ほどで面接日を決めるように通知が来ますので、ここで面接の予約を入れることになります。この面接の後、あなたのE-2ビザが発行されれば、同時にあなたの会社は、E-2ビザにおける会社登録を完了したことになります。従って、次からあなたの会社でE-2ビザを申請する駐在員の方は、前述の投資に関する証拠書類を毎回提出する必要はなくなります。過去にE-1ビザを申請していた時と同じように、事前審査の必要はなく、面接を受けるのみで、申請を進めることができます。

     

    (2022年5月16日号掲載)

    コロナで貿易額が減少。駐在員を今後も維持できる?

    瀧 恵之 弁護士

    Q:私は日本に本社のあるアメリカの現地法人の責任者をしています。従来までは日本との貿易をその主な事業として行ってきましたが、パンデミック以降、商流が著しく減り、貿易のみに頼ることが困難になりました。窮地を乗り切るため、会社の事業形態を変え、何とか生き延びてきました。ところが、駐在員の多くは貿易ビザ(E-1ビザ)を持っており、更新が困難な状況になってしまいました。パンデミックも終息の方向に向かっている今、何か良い方法はないでしょうか?

    A:2つの解決策が考えられます。まず、貿易ビザ(E-1ビザ)の更新を行う方法です。E-1ビザとは、アメリカとの通商条約が結ばれている国の国籍を持つ会社がその国と米国間で貿易を行う際に発行されるビザです。E-1ビザを取得するには、スポンサーとなる会社の株式の50%以上を日本人、あるいは日本の会社が所有していること、およびその会社が日本との間で貿易業務を行っている(貴社の貿易額の50%以上が日米間で行われている)ことが主な条件となります。ここで言う貿易とは通常、商取引(Trade)を意味しますが、これには商品だけでなくサービスの交換、売買も含まれます。

    今までと同じE-1ビザの更新を目指す方法

    もし、あなたの会社がパンデミックの終息とともに従来と同様程度、あるいはそれに近い規模の貿易を再開できるのであれば、E-1ビザを更新できる可能性があります。例えば、2021年4月から従来の貿易額に戻っているとすれば、4・5月の貿易額から予想(予定)される今後の貿易額(Projection)を計算し、その資料を大使館に提出する方法が考えられます。その際、取引先との契約、注文書などがあればその 「Projection」の補強証拠として有効に働く可能性は高いと言えます。

    新たにE-2ビザに切り替える方法

    次に、もしビジネス自体の方向性が変わってしまっていて、今後貿易が再開したとしても、従来のような、あるいはそれに近い日米間の商流を維持するのが難しい場合は、E-2ビザへの切り替えが考えられます。E-1ビザでは一定の貿易額を要求されるのに対して、E-2ビザでは一定の投資額が必要とされ、それ以外の条件は、E-1ビザの場合と変わりません。投資家はアメリカの事業に対し、「実質的な額」の資本を投資した、あるいは積極的な投資過程にあることが必要とされています。

    この「実質的な額」の説明としては、
    ①当該事業の総経費に対して実質的であること、
    ②投資家が事業に対し、経済的に現実参加を行っている(経済的なリスクを負っている)と十分に考えられること、
    ③事業の運営を成功させるのに十分であること、という3点が挙げられています。
    ここで必要な投資額は約20万ドル、投資元(いわゆる株主)が会社の場合は30万ドル以上が妥当とされています。もちろんこれ以下の投資額でも可能ですが、金額が少なければ少ないほどリスクを伴い、多ければ多いほど認可の可能性を上げることになります。ちなみに認可の可否を決定するのは、主に投資額、総売上高、現地の従業員の数の3つの要素です。

    貴社の場合、米国の現地法人を始めてから既に何年か経過していると思います。この場合、その間に投資した、 投資対象として認められている全ての投資額を合計することができます。従って貴社のようなケースでは、多くの場合、現時点で「E-2」ビザの条件 を既に満たしている可能性が非常に高いと言えます。条件を満たしているかを確かめるためには、アメリカの現地法人がスタートしてから現在に至るまでに日本の本社からアメリカの現地法人に資本金として送金した金額の合計を計算します。

    この時に良くあるケースが、現地法人の資本金の設定が小さく、送金額のほとんどが親会社から現地法人への貸し付けとして処理されていることです。このような場合は、資本金の額を上げるため、日本の本社からアメリカの現地法人への貸し付けを相殺して資本金に組み込むという方法も考えられます。全ての貸し付けを相殺する必要はなく、必要とされる投資額(例えば30万ドルなど)を充足させる金額のみを相殺すれば良いです。

    また、日本の親会社からの送金自体が十分な資本金としての額に達していない場合、新たに親会社からの送金を増資として行う方法も考えられます。E-1ビザからE-2ビザに切り替える際は、今までE-1ビザを申請してきた方法とは違い、会社登録から始める必要があり、この場合は前述の「Projection」に加えて、事業計画書を提出するのが有効な場合が多いです。ここで挙げたどちらの選択肢を選ぶかは、今後のビジネスの方向性(貿易中心となるか、そうでないか)などを考慮し、総合的な見地から判断することをお勧めします。

     

    (2021年5月16日号掲載)

    E-2ビザ申請を考えています。申請の現状を教えてください。

    瀧 恵之 弁護士

    Q:私は、2020年初めにレストランを購入しました。内装を変え、オープン準備をしていた矢先にコロナパンデミックに入り、困難な時期を経ましたが、2020年10月現在は政府の指示により営業に制限はあるものの、何とかやっています。今までESTAにてアメリカへの入国を繰り返してきましたが、そろそろ入国審査で引っかかりそうなのでE-2ビザの申請をしたいと思っていますが、アメリカ大使館・領事館が処理をほとんど行っていないと聞きます。このままでは、営業を継続するのが困難になってしまいます。どのようにすれば良いでしょうか?

    A:日本のアメリカ大使館は、Eビザに関しては、緊急面接だけでなく、通常の面接も受け付けるようになりました。ただ、あなたの場合は会社登録から始める必要があります。この点に関しては後述します。

    E-2ビザを会社で初めて申請する場合の手続き

    まず、投資家ビザ(E-2ビザ)は、アメリカと通商条約が結ばれている国(日本は日米通商条約があるので、該当国となります)の国籍を持つ人、あるいは法人(会社)が、アメリカ内にある会社などの事業に投資することによって、その事業の所有者、管理職者、あるいは特殊技能者に対して発行されるビザです。E-2ビザを申請するには、スポンサーとなる会社の株式の50%以上を日本人、あるいは日本の(日本国籍があると判断される)会社が所有していること、およびその会社の資本金が日本人・日本の会社より投資されていることが必要です。投資元の会社が日本国籍を持つか否かは、当該会社の株主の国籍が日本人(アメリカの市民権もグリーンカードも保持していない)であるかどうかということで、その持ち株比率から計算されることになります。

    日本で上場されている会社は、特殊な場合を除いて日本国籍があると推定されます。また、日本からの投資は、個人の資産に限らず、ローンなどの借用したものでも認められますが、その投資用途は実質的であり、またリスクを負ったものである、ということが規定されています。レストランの場合、この投資に該当するのは、お店の購入費、最初の家賃(敷金を含む)、改装費、器具などの購入費に加え、広告費、システム構築費等も含まれます。

    あなたの場合は、あなたの会社からまだ誰もE-2ビザを取得していないので、前述のように会社登録の手続きから始める必要があります。これには、投資したもののリスト、および今後の事業計画書等を日本のアメリカ大使館・領事館に提出することによって行います。この書類をアメリカ大使館・領事館が審査した後、資料が十分であると判断した場合は、アメリカ大使館・領事館より面接の通知が来ます。資料が十分でないと判断された場合は、追加の資料の請求の通知が来ることになります。

    あなたの場合、緊急面接をリクエストする方法も考えられないわけではありませんが、大使館・領事館にて会社登録の審査が終わっていない場合は、緊急面接は受け付けてくれないので、少なくとも2カ月間程度はかかると見た方が良いでしょう。面接を受けた後、アメリカ大使館・領事館にパスポートを預け、早ければ2〜3営業日、遅くとも1週間〜10日で、E-2ビザの貼られたパスポートが日本の指定した住所に送り返されてきます。あなたがE-2ビザを取得できた時点で、あなたの会社のアメリカ大使館・領事館における会社登録が完了したことになります。

    「会社登録」が済んでいる場合、手続きは簡略になる

    いったん会社登録が完了すると、次回からは、事前審査の過程を飛ばすことができ、必要書類をそろえて、アメリカ大使館・領事館にて面接を受けるのみで、E-2ビザの申請ができます。例えば、あなたがE-2ビザを取得した後、あなたのレストランのシェフを日本から呼び寄せたい場合は、その方は、日本のアメリカ大使館・領事館にて面接をパスするだけで、E-2ビザを取得することができます。また、当該会社の中で有効なE-2ビザを保持している人が一人でもいれば、その会社の会社登録は有効であると判断されることになっていますので、それが必ずしもあなたである必要はなく、他の従業員の方でも良いことになります。逆に、E-2ビザを保持する人が一人もいなくなってしまった場合は、会社登録を申請し直す必要があります。

    大使館の手続きは2020年の3月からいったん停止されたこともあり、手続きの大幅な遅れを出していましたが、現在のところ改善の方向に向かっていると言えます(2020年9月21日時点)。従ってあなたの場合、レストランの経営を考えれば、一日も早くE-2ビザの申請を開始されることをお勧めします。

     

    (2020年10月16日号掲載)

    E-2ビザの更新が近いです。コロナの影響はありますか?

    瀧 恵之 弁護士

    Q:私は現在E-2ビザにてアメリカに滞在し、ある日系の会社で働いています。来月でビザの有効期限が切れてしまうのですが、更新ができるのか心配です。日本のアメリカ大使館で手続きできるのかどうかなど、特にコロナパンデミック以降、異なった情報が溢れていて、どのようにすればよいか困っています。日本にビザの更新に行ったまま、戻ってこられるか不安です。私は、どのような対処・対応をすればよいでしょうか。

    A:あなたの場合は、E-2ビザだけでなく、「I-94」がいつまで有効であるかどうか、またあなたの勤めている会社の日本のアメリカ大使館での会社登録がどのような状態にあるのかにより、今回の更新のために日本に行くべきか否かを判断する必要があります。以下、詳細について順を追って述べます。

    会社登録の状況次第では慌てて日本に行かなくてもOK

    まず、現在あなたの保持している「I-94」の有効期限がいつまであるかが最初の判断材料になります。「I-94」は、最後にアメリカに入国した日から2年間あるのが一般的ですが、それ以外の可能性もあるので、扶養家族の方も含めて再度確認が必要です。「I-94」が有効な限り、仮にビザの有効期限が切れたとしても、アメリカ国内で合法的に滞在・就労が可能なので、今すぐに日本にビザを取りに行くのが、以下に述べる理由、あるいはパンデミックの間に渡航したくないなど他の理由で、賢明でないと判断する場合は、ビザの有効期限にかかわらず、日本のアメリカ大使館にビザの更新のために行くことを取りやめ・延期する手段も考えられます。「I-94」の更新手続きはアメリカ国内で、移民局に申請可能です。

    次に、考慮する必要があるのは、仮に「I-94」が有効であった場合でも、あなたの会社のアメリカ大使館での会社登録がいつまで有効であるかということです。会社登録の有効期限は、一般的にはその会社の中に有効なE-2ビザを保持して就労している人がいるか否かによって決まります(ただし、必ずしもこの法則通りでない場合もあるため、不確実な場合は事前に日本のアメリカ大使館に問い合わせておくのが得策です)。例えば、会社の中であなた以外にもE-2ビザを保持している人がいれば、その中のビザの有効期限の最も長い人の有効期限が、あなたの会社の会社登録の有効期限ということになります。従ってこの場合は、仮にあなたのビザが切れたとしても、あなたの会社の会社登録は切れないということです。この場合あなたには、今慌てて日本に更新申請に行くのではなく、(延長も含めた)「I-94」の有効期限内はアメリカに残り、コロナパンデミックが終息する時期を待つという選択肢も与えられているということです。

    日本に帰国しての更新は 大使館に赴くほか郵送でも可

    一方、あなたの会社の中に他にE-2ビザを保持している人がいない場合は、あなたのビザの有効期限があなたの会社の会社登録の有効期限ということになります。会社登録が有効な場合は、日本のアメリカ大使館は簡潔な審査のみでビザの発行を行いますが、いったん会社登録の有効期限が切れてしまうと、会社登録の手続き(申請)をやり直す必要が出てきます。これには、約2カ月間以上を要します。この場合、仮にまだあなたの「I-94」の有効期限がある場合であっても、あなたの会社の会社登録を保持(更新)するには、日本のアメリカ大使館にてビザの更新を行う必要があります。

    日本のアメリカ大使館・領事館は面接の予約を受け付け始めていますが、まずこの予約が取れるかどうかという問題、さらに、仮に取れたとしても、キャンセルされてしまう可能性もあります。しかしながら、更新の場合は、あなたが日本に行く必要はあるものの、日本国内から郵送で申請することもできます。この手続きは1週間程度です。ただし、郵送による申請を行った場合でも、大使館の判断により面接に呼ばれる場合もあり得ます。

    2020年現在の状況を考慮すると、仮に会社登録の有効期限が切れてしまう場合であっても、コロナパンデミックの影響などにより会社の業績が芳しくないのであれば、今すぐに日本のアメリカ大使館に更新の申請を行うためにアメリカを離れるのではなく、あえて会社登録をいったん失効させて「I-94」の有効期限内はアメリカに滞在し、会社の業績が良くなった後に、(時間と手間はかかってしまうものの)会社登録の申請からやり直すという戦略も考えられます。ここでいう会社の業績とは、種々多様な判断要素はありますが、主には総売上高、従業員の数が重要な判断要素とされることが多いです。
     従って、あなたが今、日本にE-2ビザの更新に行くか否かは、「I-94」の有効期限、および会社登録の有効期限、さらに会社の業績、それぞれの要素を考慮して判断する必要があります。

     

    (2020年8月16日号掲載)

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