マハーシャラ・アリ / Mahershala Ali

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(2019年3月16日号掲載)

2度目のオスカー助演男優賞を見事獲得!

マハーシャラ・アリと成田陽子さん

映画『Green Book』で、2度目(最初は2年前の『Moonlight』)のオスカー助演賞に輝いたマハーシャラとのインタビューは、2018年の12月だった。
 
「『グリーンブック』(人種差別時代、黒人が食べたり泊まったりできたお店のリスト)のことは実は僕も知らなかった。白人たちが、トリプルAが発行するガイドブックでナイアガラの滝やグランドキャニオンを楽しんでいる時に、僕らの先代は『グリーンブック』をガイドにしていた。これほど制限されていたのかとショックを受けたものの、それなりに当時の差別状況は理解していたね。今でも差別は受けるよ。たった2週間前もロンドン映画祭に招かれて、あるクラブでの会食に出席したら、『あなたがどうしてここにいるのか』というようなことを支配人が質問してきたので、黙って席を立ってしまった。監督のピーター(・ファレリー)も同席していて非常に怒っていたが、まだまだこういう扱いは頻繁にあるんだよ。僕は大学でマスターの学位を取り、オスカーも受賞しているが、そういう教育やキャリアのない黒人はそういう場所にはまず入れない。俳優になってからも、最初のうちはレッドカーペットなどで隅に追いやられたものだった。自分がブラックであるということは、絶対に頭から離れない事実なのだよ。映画の中で、南部の畑仕事をする黒人たちが、白人が車の後部座席のドアを開けたら僕が演じるドン・シャーリーが出てきて、全員あぜんとする場面があるだろう。彼らは当時の奴隷の身分に近く、特権を持つ黒人など一度も見たことがないはず。おまけに白人みたいな喋り方をするのだから、彼らにとっては異星人みたいな存在だったろうね。

マハーシャラ・アリ

1960年代、天才黒人ジャズピアニストと、彼がツアーのために雇ったイタリア系白人ドライバーが織り成すドラマ、『Green Book』。

オバマ大統領が現れた時、その豊富なボキャブラリーと上品なアクセントの話し方に『白人みたいな喋り方をしやがって』と批判する黒人も大勢いた。つまり、黒人のマジョリティーは、まだまだ古い考え方をし、歪んだ逆差別の態度を取っている。教育が不足しているのだろうが、残念ながら今のところ状況はあまり進歩していないと思うね」。
 
あくまでエレガントに、静かに話すマハーシャラは、黒人であるがゆえに常に他の人の2倍以上の努力をしてきたそうで、マイノリティーゆえの苦悩が垣間見えた。

成田陽子

成田陽子
なりた・ようこ◎ゴールデングローブ賞を選ぶハリウッド外国人記者協会に属して30年余の老メンバー。東京生まれ、成蹊大学政経学部卒業。80年代から映画取材を始め、現在はインタビュー、セット訪問などマイペースで励行中。

※このページは「ライトハウス・ロサンゼルス版 2019年3月16日」号掲載の情報を基に作成しています。最新の情報と異なる場合があります。あらかじめご了承ください。

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