研究者として永住権申請を検討。短時間で取得が可能ですか?

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Q. 私は現在、アメリカのある製薬会社の新製品開発部の研究員として新薬の開発を行っています。私は博士号も取得しており、研究に関する多数の出版物を出しています。また、日本・アメリカだけに限らず、他国の学会にも参加しており、そこでの発表も行っています。私の経歴を用いれば、グリーンカードが短期間で取得できると聞いたのですが、実際のところはどうなのでしょうか?

A. あなたの実績がアメリカにとって有益なもの(財産)であることが証明され、それが移民局に認められれば、永住権(グリーンカード)を、短期間で取得することも可能です。これは、第一優先のカテゴリーに該当し、通常このカテゴリーは「EB-1」と呼ばれます。これは、芸能人、スポーツ選手、研究者など、著名人、高度な特殊技能者に対して与えられる永住権申請のカテゴリーです。その判断基準としては、その分野でトップ2%に属している高度な特殊技能者であることが条件です。下記、詳しい条件などについて解説します。

最短で取得の可能性があるが、申請難易度も高い「EB-1」

高度な特殊技能者として永住権を申請するには、以下の10の条件のうち、少なくとも3つを満たしている必要があります。①国際的に価値のある賞を受けたこと、②その分野において功績を持つものにより構成される団体に属していること、③申請者に関する内容が記された出版物があること、④申請者がその分野において他の者を審査したことがあること、⑤申請者が該当分野に多大な貢献を行ったこと、⑥申請者が該当分野の学術的記事を執筆したことがあること、⑦申請者の作品が展示されたことがあること、⑧名声のある団体・組織等において重要な役割を担ったこと、⑨申請者が該当分野における他の人々と比べて高い報酬を得ていること、⑩申請者が芸術・芸能関係の分野に属する場合、その分野において高い人気・評判を得ていること。あなたの場合、これらの条件を充足している可能性は十分にあると思います。

また、この申請方法の最大のメリットは、スポンサー企業を必要としないため、通常移民局に申請する前の段階である「LaborCertification」の申請過程を経ることなく、「I-140」による申請のみでこの過程を代用できることです。あなたの場合、この「I-140」に加えて、就労許可の申請(「I-765」)を同時に行えば、申請後に労働許可を取得することができます。グリーンカード取得までは、全てがスムーズに進行すれば、約1年半〜2年程度です。またこの申請方法では、具体的な雇用者が存在している必要もありません。

しかしながら、仮に優秀な特殊技能者であっても、それを実際に審査するのは、その分野の専門家ではない移民局です。素人であっても簡単に認識できるような、世界的に有名な賞を得たことがあるなどの実績があれば別ですが、専門家にしかその価値判断ができないようなケースの場合は、申請者がトップ2%に入っていることを説得するのが困難な場合もあるのが現実です。よく耳にするのが「研究職の自分よりも実績のない同僚がグリーンカードを取得できたので、自分も取得できるはずだ」といった話です。しかし、ここで注意していただきたいのは、移民局の個々の審査官がその専門分野における実績の違いを判断できるとは限らないということです。実際にあなたがこのカテゴリーの条件を満たしていたとしても、それを立証できるか否かは別問題であって、その立証のために長い時間を要してしまう可能性もあります。

「EB-2」「EB-3」での申請も視野に入れるのが得策

そこであなたの場合、「EB-2」「EB-3」のカテゴリーでの申請も考えるのが賢明かもしれません。これらのカテゴリーにおいての申請では企業がスポンサーとなり、「Labor Certification」の申請過程を踏まなければなりませんが、「EB-1」の期間よりも、約半年から1年程度長くかかるにすぎません。仮に先の「EB-1」のカテゴリーでの申請を行ったとしても、移民局から追加資料の請求が来て、これに答えた後、再度審査などということになれば、期間的には同じ程度、あるいはそれ以上になってしまう可能性も十分にあり、「EB-1」の申請における立証の面の手間(書類を集めるのにかなりの労力を要します)とリスクを負う意味がなくなります。

もしあなたが、高度が特殊技能者であるにもかかわらず、雇用者がいない場合(自分でビジネスを行っているような場合)、「EB-1」での申請が唯一の選択肢かもしれませんが、あなたの現在の雇用主である会社がスポンサーとなってくれるのであれば、「EB-2」「EB-3」での申請が確実かもしれません。この点の立証リスクを十分に吟味した上で、賢明な申請方法を選ばれることをお勧めします。

※このページは「2022年5月1日号ライトハウス・ロサンゼルス版」掲載のコラム『移民法のツボ(瀧 恵之)』を基に作成しています。情報は変更となる場合があります。あらかじめご了承ください。

◎ 瀧 恵之 / Yoshiyuki Taki Attorney at Law
21221 S. Western Ave. #215, Torrance, CA 90501
TEL 310-618-1818 / FAX 310-618-8788
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