アメリカとは少し違う日本のハロウィーン事情

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冷泉彰彦のアメリカの視点xニッポンの視点:米政治ジャーナリストの冷泉彰彦が、日米の政治や社会状況を独自の視点から鋭く分析! 日米の課題や私たち在米邦人の果たす役割について、わかりやすく解説する連載コラム

日本は商業イベントが先行子どもへの普及は今ひとつ

以前から普及しているクリスマスと違って、ハロウィーンの祭りについては日本では長い間マイナーな存在だった。一部を除くと、ハロウィーンというイベント自体があまり知られていなかったのだ。
 
だが、ここ数年の間に日本でもハロウィーンが急速に普及している。一つには東京ディズニーランド(TDL)や大阪のユニバーサルスタジオ(USJ)といった米系のテーマパークが、秋の大きなイベントとして取り上げてきたということがある。
 
これに加えて、ドーナツやハンバーガーなどのファストフード店のチェーンも、ハロウィーンを取り上げるようになった。そうした結果として、年々このハロウィーンは盛り上がるようになり、今年2015年は10月31日が土曜日に重なることもあって、空前の賑わいが予想されている。
 
例えば、日本テレビは、この日「昼ハロウィン」「夜ハロウィン」という名前で、AKB48やきゃりーぱみゅぱみゅなどの参加により、日本武道館で大規模な仮装パーティーとライブコンサートを行い全国に放映するという。
 
急速に盛り上がっている日本のハロウィーンだが、アメリカのものとは様子が異なる部分もある。まず、日本の場合は基本的に若者による仮装パーティーが主となる。従って「トリック・オア・トリート」、つまり子どもが仮装してキャンディーをもらって歩くという風俗は、あまり普及していない。全国的に見ると、北海道の札幌では子どもを中心とした昼間のイベントが熱心に行われているようだし、親が子どもに仮装をさせて親子で参加するイベントなどが首都圏でも少しずつ増えているが、まだまだ少数派だ。

若者が仮装パーティーで導入 行事としての認知を今後に期待

その一方で、若者たちの仮装パーティーについては、かなりの盛り上がりを見せている。例えば東京の場合は、ハロウィーンのメッカは渋谷ということになっていて、10月31日の夜は何万人という仮装した若者で街中が溢れかえる。西日本では京都の北山通りが有名だが、混乱気味の渋谷と違って北山通りの方は整然としたパレードが行われるのが特徴だ。一方で大阪の場合は、300名から400名規模の「貸し切りパーティー」がさまざまな場所で行われている。USJの近くの大阪湾上では、船の上での豪華なパーティーが企画されて話題になっているようだ。
 
若者によるハロウィーンパーティーは、もちろん、本家のアメリカでも盛んだが、日本の場合は、その楽しみ方に違いがある。
 
まず、仮装のスタイルだが、日本の場合は5人とか7人などのグループで「一斉に同じ格好をする」というのが定番になっている。例えば、全く同じメイドの衣装と化粧でそろえるとか、ゲームのキャラのマリオの格好をヒゲまで同じように作るといった具合だ。理由としては、一人ずつ別の格好をするとなると、選ぶのに困るし恥ずかしい感じもあるが、仲間同士で一斉に同じ格好をすると抵抗がないだけでなく、周囲の人にインパクトを与えることができるからだという。
 
そのグループでの「同じ仮装」だが、男子だけ、女子だけでチームを作る場合が多い。どうしてかというと、ハロウィーンのパーティーに「合コン」的な効果を期待して参加することが多いためらしい。先にカップルがあって、そのカップルでパーティーに参加するのではなく、カップルの相手を見つけるという期待を込めて参加するのである。
 
面白いのは参加者は必ずパーティー会場の近辺で「着替える」ということだ。渋谷やUSJなどでは盛り上がっていても、一般の大人社会ではまだまだハロウィーンへの認知は進んでいないので、仮装のままで電車やバスに乗るのには抵抗があるからだ。
 
この「日本型ハロウィーン」だが、特に渋谷などでは風紀が乱れているとか、街中がゴミだらけになるなどの批判も出始めている。そうした問題を解決しながら、行事として着実に定着していってもらいたいものだ。

冷泉彰彦

冷泉彰彦
れいぜい・あきひこ◎東京大学文学部卒業、コロンビア大学大学院卒業。福武書店、ベルリッツ・インターナショナル社、ラトガース大学講師を歴任後、プリンストン日本語学校高等部主任。メールマガジンJMMに「FROM911、USAレポート」、『Newsweek日本版』公式HPにブログを寄稿中

 

(2015年11月1日号掲載)
 
※このページは「ライトハウス・ロサンゼルス版 2015年11月1日」号掲載の情報を基に作成しています。最新の情報と異なる場合があります。あらかじめご了承ください。

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