犯罪横行のため不便になる在外邦人

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冷泉彰彦のアメリカの視点xニッポンの視点:米政治ジャーナリストの冷泉彰彦が、日米の政治や社会状況を独自の視点から鋭く分析! 日米の課題や私たち在米邦人の果たす役割について、わかりやすく解説する連載コラム

(2023年7月号掲載)

不便な免税のルールと国際免許証の運用

冷泉コラム

現在、自動化ゲートは成田空港、羽田空港、中部空港、関西空港に設置されている。

近年、一部の犯罪や悪用が目立つというだけで、在外邦人に著しい不便が押し付けられるケースが出てきている。例えば、一時帰国時の免税店利用だ。従来は、免税店等で購入し、封をした品物を出国時に税関で見せれば免税価格で品物の購入ができた。
 
ところが、本年、2023年の4月から制度が変更となり、ルールが著しく煩雑になっている。免税措置を受けるには、2年以上海外在住であることを証明しなくてはならなくなり、具体的には、大使館や領事館の発行する「在留証明」、または実際に日本の住民票を抜いたことが確認できる「戸籍の附票の写し」が必要だ。
 
その場合の「在留証明」「戸籍の附票の写し」はコピーではなく原本でなくてはならない。日本国内に親戚などがいれば「戸籍の附票の写し」を頼んで取得してもらえるが、その際にはこちらから委任状を先に送る必要がある場合もある。
 
この改正だが、きっかけとなったのは、「iPhone大量購入」を行った一部の外国人集団のようだ。円安で、日本のiPhone価格は世界最安だそうだが、さらに購入価格を下げるために、免税措置を受けて大量購入し、国外へ持ち出して転売していたのである。これは明らかに犯罪だが、この事件を契機としてどういうわけか、在外邦人への異常な締め付けが行われたのである。
 
ちなみに、この免税措置を受ける場合に重要となってくるのが、入国時にパスポートに押されるスタンプである。これがないと一時帰国と認められず、免税は受けられない。
 
似たような事例としては、国際免許証の問題がある。国際免許証を日本国内で使用するには制限がある。国際免許証が有効期間内で日本に入国後1年以内しか使えない。また、住民票のある人が出国後、3カ月未満のうちに日本に帰国した場合は使えない。このルール自体が変更されたわけではないが、近年は運用が厳しくなっており、予約していたレンタカーを借りられないケースも出てきた。具体的には、こちらもパスポートに出入国日のスタンプがないとダメだという。これも、日本で運転免許を取る代わりに、外国で免許を取って国際免許証を悪用した例が契機になっていると考えられる。
 
それはともかく、日本の各空港の出入国審査の「自動化ゲート」には、大きな字で「免税措置を受けたり、国際免許証を使用する場合は必ずスタンプを受けてください」という表示をすべきだ。現在は、日本国籍者の入国は自動化ゲートへ誘導し、そのままバゲッジクレイムへ向かわせるような表示になっている。在外邦人には、必要に応じてスタンプ窓口へ誘導を案内するように強くお願いしたい。出国時も同様だ。

日本の銀行から締め出される在外邦人

一方で、在外邦人が日本で銀行口座を開設するのも難しくなってきた。従来は、その理由として「資金洗浄(マネーロンダリング)」犯罪を抑止するため協力要請がアメリカ政府から来ているという説明がされていた。それでも、住民票があれば口座は作れたのである。けれどもここへ来て、事情が変わってきている。一旦作った口座も非居住者だと認定されると閉鎖されるとか、マイナンバーがないと日本国内送金もできないなど、どんどん不便になってきている。
 
その原因だが、アメリカからの協力要請などという漠然とした話ではなく、ずばり詐欺犯罪、あるいは強盗団の暗躍という問題があるようだ。つまり、日本人の犯罪集団がフィリピンやタイなど海外に逃亡しながら日本の銀行口座を悪用して、詐欺などに利用しているというのである。
 
けれども、いかに明確な理由があるにしても、一部の不心得者がいるために、在外邦人がこのような不便を強いられるというのは理不尽だ。問題は免税店にレンタカー、そして銀行口座と多岐にわたっている。広範な対象を巻き込んで制度をガチガチにするよりも、厳罰化と徹底的な捜査による取り締まりが先決ではないだろうか。

冷泉彰彦

冷泉彰彦
れいぜい・あきひこ◎東京大学文学部卒業、コロンビア大学大学院卒業。福武書店、ベルリッツ・インターナショナル社、ラトガース大学講師を歴任後、プリンストン日本語学校高等部主任。メールマガジンJMMに「FROM911、USAレポート」、『Newsweek日本版』公式HPにブログを寄稿中
※このページは「ライトハウス・カリフォルニア版 2023年7月」号掲載の情報を基に作成しています。最新の情報と異なる場合があります。あらかじめご了承ください。

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