日本の「マイナンバー制度」 海外在住者への影響は?

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冷泉彰彦のアメリカの視点xニッポンの視点:米政治ジャーナリストの冷泉彰彦が、日米の政治や社会状況を独自の視点から鋭く分析! 日米の課題や私たち在米邦人の果たす役割について、わかりやすく解説する連載コラム

日本国内での健康保険や年金、災害対策上の管理などに利用

アメリカでは、SSN(ソーシャル・セキュリティ・ナンバー)というものがあって、公的年金と納税の管理のために使われている。これに加えて、金融機関における信用管理や、運転免許証の本人確認などSSNの利用範囲は拡大してきている。
 
一方で、日本ではこのような制度は「国民総背番号制」だとか「プライバシーが侵害される」などの理由から反対が根強かった。例えば1983年の「グリーンカード構想」は実現はできなかったし、一方で住民票をカード化した「住基カード」というものが作られているが、活用されることはなく発行の終了が決まっている。
 
だが、今年、2015年の10月に導入される「マイナンバー制度」というのは、違うようだ。日本政府は本気であり、巨額の予算を投じてシステムを整備している。この10月からは日本国内の住民全員を対象に番号が振り当てられ、最新式のICカードが発行されることになった。
 
まず番号だが、アメリカのSSNが9桁である一方で、日本の場合は12桁になる。その12桁の番号が全国の住民に振り当ててられ、15年10月以降に「簡易書留」で紙の「通知カード」が送られる。その上で16年になると、その通知カードを持って役所に行ってプラスチック製の「個人番号カード」を受け取るということになっている。この「個人番号カード」は、ICによる電子情報と写真が入ることになる。
 
当初の目的は市町村における住民票の管理、国税や地方税の管理、そして健康保険と年金の管理、雇用保険や災害対策上の管理などとなっている。これに加えて、税金の管理を行うために、銀行口座やクレジットカード、生命保険などの口座も、「マイナンバー」に関連付けられる予定だ。さらに、比較的容量の大きいメモリが採用されているので、将来的には銀行のキャッシュカードやクレジットカードを兼ねるという構想もあるようだ。

海外在住の日本人が慌てて取る必要はないが…

この「マイナンバー」制度だが、海外在住の日本人についても影響がある。
 
まず、海外への引越しに際して「転出」したままの場合は、現時点では国内に住民登録(住民票)がないので「マイナンバー」は発行されない。つまりカードだけでなく、国民全員に振り分けられる12桁の番号ももらえない。
 
一方で、何らかの事情で国内に住民登録を残している人には、その住所宛に「通知カード」が発送されてしまう。つまり12桁の番号が振られてしまうし、その番号は原則として取り消せないことになる。
 
ここまでは決まっているのだが、その先、海外在住の日本人にどのような影響があるかについては、現時点では確定していない。だが、気になる点はいくつかある。
 
まず、日本に残してきた銀行口座だが、非居住者口座などにして「海外在住」だということを届け出ている場合は当面は問題はないと思われる。だが、銀行などへ届けた住所は日本のままで、しかも12桁の番号がないということになると、数年後には問題が起きるかもしれない。同じことはクレジットカードにも言えそうだ。
 
海外在住者の年金については、12桁の番号がないからといって無効にされることはないだろう。ただし、一部の手続きが変更になるかもしれない。
 
一つだけ確かなのは、「マイナンバー」を取らないと大変だと焦り、海外在住者が短期間だけ住民登録をして番号をもらうということは不可能だし、その必要もないということだ。
 
一方で、住民票を残してきているために、12桁の番号を「もらってしまう」場合だが、仮に海外在住だということが判明すると、住民票を「抜く」ように要請されるかもしれない。また、海外での所得を申告しないで国民健康保険などを利用するといった行為は、徐々に不可能になるだろう。
 
いずれにしても、海外在住者に対して、どのような運用がされるかは未定であり今後の報道に注目したい。

冷泉彰彦

冷泉彰彦
れいぜい・あきひこ◎東京大学文学部卒業、コロンビア大学大学院卒業。福武書店、ベルリッツ・インターナショナル社、ラトガース大学講師を歴任後、プリンストン日本語学校高等部主任。メールマガジンJMMに「FROM911、USAレポート」、『Newsweek日本版』公式HPにブログを寄稿中

 

(2015年10月1日号掲載)
 
※このページは「ライトハウス・ロサンゼルス版 2015年10月1日」号掲載の情報を基に作成しています。最新の情報と異なる場合があります。あらかじめご了承ください。

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