働く
JOB

アメリカで働く(多様な職業のインタビュー集)

現地情報誌「ライトハウス」が長年に渡り連載してきた人気コラム「アメリカで働く」は、アメリカで働く日本人・日系人、100名以上の皆さんへのインタビュー集。業種も、職種も異なる100名以上の皆さんそれぞれにとっての「アメリカで働く」とは?アメリカでの"キャリア"や"仕事"が見えてきます。

ライトハウス編集部
ライトハウス編集部

服飾デザイン・販売 「2WJD」代表取締役・デザイナー(クリエイティブ系)

織部しほさん

「2WJD」が、ポジティブに頑張れる
アイコンのような存在になったらいいなと思っています


将来について悩む中、新たな可能性を求め、渡米 した織部しほさん。「本当にやりたいこと」に気付 き、服飾デザインの道を志し、大学在学中、「もっ とコンシャスなデザインを広めたい」と自社ブ ランド「2WJD」を立ち上げた。今年、新たにハ イエンドのラインを準備中の織部さんに、服飾デ ザイナー、経営者としての心構えなどを聞いた。


【プロフィール】おりべ・しほ◉福岡県出身。海外で世界の人との交流を深めたいと思い、20歳でオレゴン州に 渡米。語学を学び、同地の大学に進学するが、ファッション分野を追究するため、ハリウッドの あるロサンゼルスに移住。American Intercontinental Universityでデザインの学士号、名誉マグ ナクンローを取得。大学在学中にデザイン事務所でインターンを始め、欧米の大手ブランドの デザインを手掛ける。2006年、オリジナルブランド「2WJD」を設立。09年8月、ソーテルに販売 店舗をオープン。今年から日本の店舗でも、同ブランドの取り扱いが始まる

紆余曲折を経て見つけた 自分が本当にやりたかったこと

ソーテルにある2WJD店舗。単にショップというだけ
でなく、夢に向かって頑張る人を応援する場でもある

幼少の頃から医者を目指して いました。高校時代に映画『Patch Adams』を観て、彼のように親身で 患者に接し、笑いで人を癒し、信頼 を得られるドクターになりたいと 思っていました。チャリティーワーク にも大変興味があり、それには世界 の共通言語である英語が話せなけ ればダメ。当時、英語が一番苦手だっ たこともあり、1日 13 時間勉強す る缶詰状態の日々が続きましたが、 思ったような結果が出ず、悩む日々 も多かったです。それを見かねた両 親が、アメリカ留学をすすめてくれ て、英語を学ぶのを第1の目標に、新たな可能性を求め、 20 歳の時に渡 米しました。

アメリカ留学で、苦手だった英語 を克服し、会話だけでなく、色々な 文化に触れ、その違いを学ぶだけで なく、個々の文化に接することもで きるようになりました。異文化の人 たちへの対応は、その中で実際に生 活し、経験してみないとわからない ことも多いので、そういったことを肌 で実感してみたかったというのも、 留学の動機にありました。

最初はオレゴン州のアッシュラ ンドという、アートにあふれる小さ な田舎町の語学学校に通いました。 アッシュランドは、自然の中にある ので、車で3時間くらい運転しない と、お洒落な買い物はできません。ですから、天候が厳しい冬などは、部 屋にこもって将来について考える時 間がたっぷりありました。「自分はど ういう人間なのか?」「何ができるの か?」。それらに対する答えが自分 の中で出た時、「自分が居るべき場 所は、ここじゃないかもしれない」と 思いました。

そうして自分の得意分野はファッ ション分野だと自覚し、ファッション と言えば西海岸ではハリウッドです から、ロサンゼルスに旅行に出かけ ました。そして、業界の幅広さ、レッ ドカーペットでのドレスのクオリ ティーの高さに感動し、この地で学 びたいと思いました。常に何らかの 形で自然に触れていたかったことも あり、海のあるウエストロサンゼル スに移住しました。

一般教養のクラスを取っている間 に、ファッションのどの分野を勉強 するか考える中で、ファインアート を含むデザインに興味を持ちまし た。デザインは本当に多くの経験を し、技術を磨かなくてはいけないの で、ロサンゼルスにある4年制の芸 術大学、American Intercontinental Universityに編入しました。視野を 広げるために、モデルやスタイリストも経験するうち、デザイナーは 「デザインやアートを通して、世界に 意思表現ができる」という点に感動 し、服飾デザイナーの道を志すこと にしました。

在学中にデザイン事務所でイン ターンを始め、大手ブランドの靴の デザインをさせていただきました。 過去の顧客層を保ちつつ、ブランド ネームを崩さないよう、いかに新し いラインを導入するかという、大手 会社ならではのチャレンジにも取り 組ませていただきました。

私は、絵画や建築、そしてファッ ションの本だけでなく、ゴシップ紙 や興味があまりないような本も普 段からよく見るように心がけてい ます。各企業の視点や顧客層などの 違い、商品の特徴などをすぐにつか めるようになるには、「目」を肥やす ことが本当に重要です。プロトタイ プのデザイン修正に携わることが多 かったので、改善方法をすぐに提案 できるよう、視野を広げ続ける努力 をしてきました。

ファッションを通して色々な人を 応援したい、頑張っている人たちが 出会うきっかけになるような商品を 作りたいと思い、ポジティブやエコの メッセージを込めたTシャツブラン ドを立ち上げました。そのブランド の社名が「2WJD」。ポジティブに 人生の選択をしてほしいと、What Would Jesus Do?〞というフレーズ の頭文字から来ています。人生において数々の選択をする際、人の意見 に流されず、夢に向かって頑張って いってほしいという願いが込められ ています。


アーバン系で コンセプトは「ポジティブ」

アーバン系のブランドは、ネガ ティブなデザインやコンセプトが 多い中、2WJDのデザインは、すべ てポジティブでオリジナル。チーフ デザイナーとして、他の2人のグラ フィックデザイナーと一緒に、いかに メッセージをデザインとして、グラ フィックに組み込んでいけるかをい つも研究中です。若い子たちにとっ て、2WJDがポジティブに頑張れ るアイコンのような存在になったら いいなと思っています。

ポップカラーの 80 年代系デザイ ンからシンプルなロゴやロックのモ ノクロなデザインまで、幅広くお客 様に気に入っていただけるよう努力 しています。素材は、肌にやさしいソ フトコットン 100% 。 今 年 か ら 東 京 近 辺の店舗でも、取り扱いいただいて います。

最初は地元のコンサートなどに ブースを出展し、商品の販売・促進 をしていました。おかげさまで徐々 にリピーターが増え、お客様が好き な時に立ち寄れるようにと、昨年 ソーテルに店舗を構えました。店の コンセプトは、ブランド同様「ポジ ティブ」。目指しているのは、買い物 だけでなく、頑張っている人たちが ネットワーキングでき、色んなアー トやプロジェクトが生み出される空 間です。

経営者となるのは初めてでした が、やりたいことが本当に実現でき るのか、その可能性を試したいと思 いました。最初は当たって砕けても、 その経験が肥やしになるという思い で、色々学んでいきました。自分なり に目標を立てて、ただひたすらその 目標を達成していくことに集中しま したので、不安を感じたことはあま りありません。今は経営から接客、 デザインと、まだまだ学ぶことも多 く、多忙な毎日を送っています。


最初の勝算 60 %でも、経験を積み 90 %の結果が出せるようになる

若い時は、何がうまくいくのかわ からず、色々な選択に悩むことが多 いかもしれません。やろうと思って から実行に移るまでのクヨクヨ期間 が長い人もいると思います。でも、そ の期間を短くすれば、できることも 増えてきますよね。私が一番落ち込 むのは、期間設定をしたにも関わら ず、その目標を期間内に達成できな かった時です。クヨクヨ不安に感じ ている間に、ドンドン時間が経って しまって、振り返ると達成できてい なくて、ショックを受けましたね。

トライして 60 %の結果より、ト ライせず0%だった方が、すごく後 悔することに気付きました。最初は60 %でも、経験を積むことで 90 %の 結果を生み出せる可能性もあるの で、思ったら即行動の方が、1歩でも 前に進み続けられると思ったので す。日本では 100点 満 点 が 取 れ な い な ら、最初からテストを受けない、とい う感覚もありますが、少しでも夢に 近付くこと自体にすごく意味があ ると、私は感じます。やってみないと わからないですから。「オッケー、ま ずやってみよう」というトライ精神 を持つことが、私は大好きです。弊 社で迎え入れたインターンの子たち とも、このトライ精神をシェアしま す。自分の中にある可能性にチャレ ンジしてほしいからです。

私が日本にいた時、決められた一 視点からの価値観のみを持っていた 気がします。アメリカで生活をする 中で、自分の持っていた価値観だけ が正しい訳ではないと気付きまし た。そのおかげで新しいことを学び、 チャレンジでき、その可能性を探索 することもできました。結果がどう であれ、経験はその人自体を磨いて くれます。失敗を恐れず、自分の信 じたことを実行してほしいと願って います。悩んだ時には、いつでも2W JDにおいでください。色々な先輩 が、過去に私を励ましてくれたよう に、何かポジティブなお手伝いがで きるとうれしいです。


(2010年9月1日号掲載)