陶芸家(クリエイティブ系):島崎 浩太さん

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アメリカで夢を実現させた日本人の中から、今回は陶芸家の島崎浩太さんを紹介。手直しがきかない陶芸は、すべての工程が真剣勝負。売れる物を作るのではなく、心のこもった作品を作り続けたいという信念を貫く

【プロフィール】しまざき・こうた■1967年、千葉県生まれ。サンディエゴ州立大学(SDSU)ファインアート学科卒業後、同大エクステンションにて、陶芸講師となる。表千家茶道講師の資格も持つ。現在、サンディエゴにスタジオ&ギャラリーを持ち、精力的に制作活動に励む一方で、陶芸クラスも開講中。http://sdceramic.com

そもそもアメリカで働くには?

アメリカでは
陶磁器はただの実用品

オープンして12年になる
ノースパークスタジオ

私の父は画家でした。糖尿病を患い、それがきっかけで外出することがほとんどなくなってしまいました。そんな父に少しでも行動範囲を広げてもらおうと、近くの文化センターで開催されていた陶芸クラスに、一緒に参加することにしたのです。父はそこで絵付けを楽しみ、私は初めてろくろを回したのですが、その時に陶芸の面白みを知りました。それが私と陶芸との出会いです。
 
私は19歳でロサンゼルスの語学学校に留学し、その後、サンディエゴのグロスモントカレッジに入学しました。カレッジ在学中も陶芸には触れていましたが、本格的に再開したのは、サンディエゴ州立大学(SDSU)に編入し、ファインアートを専攻してからです。
 
アメリカで陶芸をしていて驚いたのは、陶芸は芸術ではないということです。日本では、人間国宝の陶芸家の方もたくさんいらっしゃいますし、陶器や磁器は、文化や歴史のある芸術品として広く受け入れられています。しかし、アメリカでは、ただの「実用品」なんですね。それでも、この7~8年で、陶芸もアメリカでアートとして認められてきていて、時代は変わりつつあるようです。
 
そんな具合に、アメリカと日本の間で「陶芸」に対する認識の違いもありましたので、大学時代は日本に帰国する度に、図書館や資料館に入り浸って、独学で知識や技術を習得しました。
 
SDSU卒業後、同大のエクステンションで、「陶芸のクラスを受け持ってくれないか?」という声が掛かり、教えることにしました。教え始めてから数年後、エクステンションがほかのビルに引っ越しをすることになりました。ですが、陶芸の設備というのは、窯など大がかりな物が多く、予算などの面から引っ越しは不可能と断念。結局、陶芸クラスは、その時点で終わってしまいました。
 

土との出会いがなければ
今の私はなかった

ダイナミックなデザインの大皿から
繊細な茶碗まで、その作風はさまざま

移転の際に、今までクラスで使っていた設備や道具類を譲り受けるチャンスがあり、それをきっかけに、自分でスタジオを開くことを決心しました。その頃、私は既に結婚していたのですが、果たして陶芸だけで家族を養うことができるのかと、先行きの不安は大きかったですね。でも、「絶対、家族に迷惑はかけないから」という妻との約束で、小さなスタジオを持つことができました。
 
幸いSDSUのエクステンションで私のクラスを取っていた生徒たちが、引き続き私のスタジオに通ってくれたこともあり、生徒も少しずつ増えていきました。そのため、さらに大きなスペースが必要になり、スタジオを移転することに。それが現在のスタジオです。2年間も空き家になっていたスペースで、ひどく傷んでいたのですが、私はDIYが得意だったので、少しずつ改造してスタジオとして使えるように変えていきました。
 
現在、巨大な窯が2台、ろくろ数十台を置き、制作活動とクラスをこのスタジオで行っています。隣接したスペースには、私の作品や生徒さんの作った作品を置き、生徒さんが自由に語り合えるちょっとしたギャラリーになっています。
 

「量産」と聞くだけで
鳥肌が立つ

陶芸の魅力は、ひと言では語れませんが、私はなぜか、土に魅了されてしまい、土を触っている時が、本当に幸せなんです。若い頃は、波乱に満ちた生活を送っていたこともあり、土が私の人生を救ってくれたと言っても過言ではありません。土との出会いがなければ、今の私はなかったでしょうし、どんな人生を送っていたのか想像もつきません。変な言い方かもしれませんが、土には本当に感謝しています。
 
最近は、私の作品を買いたいと申し出てくださる方もいて、周りからは「大量に作ったら?」とか、「売れる器をもっと作ったら?」と言われることも多いのです。ですが、土を金儲けのためだけの道具として使うなんて、私の中では絶対にできないことなんですよね。「量産」という言葉を聞くだけで、鳥肌が立っちゃうほどです(笑)。
 
陶芸は、アート、物理、化学、色々な要素を含んでおり、さまざまな条件によって、まったく違った風合いを持つ作品ができあがります。ちょっとしたことが原因で、割れることもありますし、すべての工程が真剣勝負の連続です。
 
器ひとつにしても、ただ実用品として作るのと、作家の情熱や気持ちが入った物では、その違いは明らかですし、心に乱れがあると、それが作品にも反映されます。逆に優しい気持ちで作った時は、良い作品ができるものです。ですから、できるだけ普段から優しい心が持てる人間になろうと、努力しています。
 
現在、作品制作、クラス開講のほか、公立学校でも子供たちに陶芸を教えています。なかなか公立の学校というのは予算が厳しく、アートの先生が極端に少ないのが現状なんですね。でも、1人でも多くの子供たちに陶芸の魅力を知ってもらいたいと思い、ボランティアで教えています。子供たちの創造性や発想は、私自身にインスピレーションを与えてくれますし、私にとって大切な活動の一部となっています。
 
私の作品は、スタジオにもいくつか置いていますが、サンディエゴのバルボアパークにあるMingei Museum(民芸美術館)にも、20点ほど展示されています。また、私が焼いた器を、実際に使ってくださっている日本食レストランもいくつかあります。手に取って持ったり、食事に使っていただくことで、陶芸の魅力を多くの人に理解してもらえたらうれしいですね。
 

(2009年2月1日号掲載)

「アメリカで働く(多様な職業のインタビュー集)」のコンテンツ