Royal/T チーフウェイトレス/女優・ダンサー(クリエイティブ系):朝倉 優さん

ライトハウス電子版アプリ、始めました

人を楽しませるウェイトレスは女優と同じ
日本の文化や言葉を自分流に伝えたい

アメリカ初の〝メイドカフェ〞として話題の「Royal/T」に、立ち上げから携わってきた朝倉優さん。女優として活躍するかたわら、メイド姿のウェイトレスやバリスタとして店のサービスを仕切っている。アメリカの若い世代に今の日本文化、日本語を伝えていきたいと意欲を燃やす朝倉さんに聞いた。

【プロフィール】あさくら・ゆう◉横浜市で生まれ、兵庫県川西市で育つ。東京外国語大学英語学科卒業。2000年に渡米。Theater of Artsの演劇科で4年間学ぶ。ハリウッドの映画制作会社で通訳として勤務した経験を持つ。2008年より、カルバーシティーのギャラリー・カフェ「Royal/T」にウェイトレス、バリスタとして勤務。UNION SAG、AFTRAメンバー。Infi nite Talent Agency所属。出演作品に『Love Talk』(2005)、『現-Utsutsu』(2010)など。ハリウッド在住。公式サイト:www.yuuasakura.com 

そもそもアメリカで働くには?

日本文化を伝える 身近な女の子という役割

カフェも演技を磨くための〝舞台〞。スタッフと

Royal/Tは、2008年初めにオープンした店で、アートギャラリーとカフェ、ショップの3つから構成されています。日本のポップアートのコレクターであるアメリカ人女性、スーザン・ハンコックがオーナーです。彼女のプライベートコレクションを中心としたポップアートを展示するギャラリーを開くことが店の当初の目的でしたが、それに秋葉原のメイドカフェの要素を加えたカフェと、ポップアート系の商品を扱うショップを併設した複合施設としてオープンしました。
 
ギャラリーでは、モダンアートを中心に、毎回違うキュレーターによる企画展を6カ月ごとに開催し、多目的スペースでは、世界のお茶のフェスティバルや、ジャズコンサートなど、多彩なイベントも行っています。私は、オープン当初からウェイトレスとして入り、現在はチーフウェイトレスとして、またバリスタとしてフロア全体をまとめています。
 
「メイドカフェ、アメリカ初上陸」といった触れ込みで、さまざまなメディアにずいぶん取り上げられてきましたが、秋葉原のメイドカフェのようなサービスはしていないんですよ。コスプレーヤーやアニメファンをターゲットにしたカフェと言うよりも、コンセプトはあくまでも〝アート志向〞と言ったらわかりやすいでしょうか。
 
カフェのメニューもハンバーガーやサンドイッチのほか、カツカレーや丼物、ヤキソバなど、日本の料理も出しています。ソニースタジオなどが近いので、エンタメ業界の方々のビジネスランチや家族連れ、デートなどで来られる方も多いですね。特に当店が日本のメイドカフェということを知らずに入って来られる方も多いようです。
 
ここの求人を知った時、私も最初「メイドカフェなんて、自分には無理!」と思いましたが、実際にこの制服を着てみると、意外と普通だったのにびっくり(笑)。最初は週1日のお手伝いだったのが、2年ほど前から頻繁に入るようになり、現在ではフロアの取りまとめ役を務めるチーフウェイトレスとして、またバリスタとして働くように。ギャラリー、ショップ含めてスタッフは総勢20名ほど、そのうちカフェは14人、なかでもウェイトレス、バリスタは約10人ですが、日本人は、私を含めて3人ほど。皆若く、人の入れ替わりが頻繁ですので、マネージメントはなかなか大変です。
 
日本文化を紹介する「Japan-ology」というイベントを開催していて、日本映画の上映と映画に登場する日本食の試食、お酒のテイスティングなどを行っています。こういったイベントで来店されるお客様は、特に日本文化に興味を持っておられるので、話していて楽しいですね。日本語や日本文化、ファッションなど、色々なことを聞かれます。
 
私たちウェイトレスは、彼らにとって一番身近な所にいる〝普通の日本人の女の子〞代表としての役割を、果たしているのではないかと思います。ランチタイムには行列もできるほど忙しい店なので、サービスはスピード優先の面もありますが、テキパキと仕事をしつつ、せっかく楽しみにして来てくれているお客様との会話も楽しみながら、この店のイメージや品位を守っていきたいと思いますね。お客様の気分を、明るく楽しくすることがカフェのモットーです。

女優としては 日本人にこだわらない

アメリカには、女優を目指してやって来ました。日本で大学を卒業後、1年間バイトをして資金を作り、ロサンゼルスに来たのは00年のクリスマスのことでした。
 
兵庫県川西市出身で、宝塚市が隣にあり、中学・高校の頃はずっと宝塚歌劇団に憧れ、宝塚に入りたいと思っていました。宝塚音楽学校に入るため、踊りやお芝居の勉強もしてきました。でも、高校卒業後に入試を受けたところ、見事落ちてしまって。ちょうど阪神・淡路大震災の後で、これから自分はどうしようか、途方に暮れてしまいました。関西で生まれ育ってきたので、一度、東京に出てみようと思い、東京外国語大学を受験、英語学科に入学しました。
 
そして、英語学科の講義で出会ったのが、ハリウッド映画の世界でした。宝塚がダメなら、ハリウッド女優を目指すしかないと思いました。英語は得意でしたし、アメリカに行ってみたいという気持ちが膨らんで、卒業後、ロサンゼルスに渡り、アクティングの学校に入って4年間学びました。
 
CMや映画出演などのほか、年に1、2回は舞台に立つようにしています。ハリウッドの劇団のほか、昨年は日本人の役者で構成された劇団「IKI・粋」で、時代劇に出ました。演技力を磨き、自己表現力を付けるために舞台は大切。ロサンゼルスでは舞台役者だけでは生活していけませんが、いい演技ができるよう、楽しんでやっています。
 
映画で仕事を得るのは、大変なこと。これは日本人のみならず、アメリカ人でも難しいことです。最近は、オーディションで人種が問われないことが増えていますが、日本人だからといってチャンスが増えるわけではありませんし、自分自身、日本人であることに、こだわらないようにしています。以前、Lizard Theaterでもらったのが、50代のおしゃべり女教師の役。「面白いからやってみろ」と言われて。また、渡米間もない頃に口汚い女の子の役をもらい、辞書にも載っていないようなスラングを連発するという経験もしました。気合でやり遂げましたよ。こうした経験から、「そうか、日本人ということにこだわらなくてもいいんだ」と実感したわけです。
 
どんな役にも挑戦してみたいですが、やはり「この役は優ちゃんにしかできない」と言われるような仕事がしたい。俳優仲間からは、〝極妻系〞が合っているなどと言われますが、それもいいかなと(笑)。自分自身、年を重ねてから売れるタイプだと思っていますので、これからもどんどん自分を磨いていきたいです。演技のセミナーやクラスに参加し、ヒップホップやジャズ、フラなどダンスにも力を入れています。最近は少林寺拳法も始めました。

楽しい日本語クラスを 提供したい

店の仕事とはうまく両立できていると思います。やはり女優業がメインですので、オーディションがある時、舞台のある時などは、そちら優先させますが、理解してもらっています。また、店に出ることで、世の中の動きにアンテナを張っていられます。アメリカ人にどう接したら喜んでもらえるかという勉強にもなりますし、人に見られているという意味では女優と同じ。メイドカフェのウェイトレスは女優のような部分もあるように思います。
 
また、Royal/Tはユニークな店ですので、店のブランドを確立するための手助けが何かできたらという思いもあります。日本に帰るたび、ショップで扱うポップアートっぽい商品を買い付けたり、東日本大震災の被災地に向けたチャリティーイベントの企画に参加したりしてきましたが、これからもできる範囲で店に貢献していきたいです。
 
それから、店でお客様と接していて気付いたのですが、日本語会話の練習相手を探しているアメリカ人が随分といるようです。文法も習得し、ある程度話せるのに、ブラッシュアップする場が少ないようなのです。また、以前ハウツーもののビデオクリップに日本語講座の講師として出演していたのですが、インターネットで見た人たちは、私が日本語教師だと思ってコメントをたくさんくださりました。反響がとてもうれしかったですね。自分が語学を専攻していたこともあり、とても興味のある分野ですので、店内にクラスを設けて直接教えてもいいですし、世界どこからでもアクセスして学べるオンライン講座を立ち上げるのもいいですね。何か実現させたいと構想しているところです。
 

(2011年7月1日号掲載)

「アメリカで働く(多様な職業のインタビュー集)」のコンテンツ