働く
JOB

アメリカで働く(多様な職業のインタビュー集)

現地情報誌「ライトハウス」が長年に渡り連載してきた人気コラム「アメリカで働く」は、アメリカで働く日本人・日系人、100名以上の皆さんへのインタビュー集。業種も、職種も異なる100名以上の皆さんそれぞれにとっての「アメリカで働く」とは?アメリカでの"キャリア"や"仕事"が見えてきます。

ライトハウス編集部
ライトハウス編集部

ロサンゼルス・ドジャース アジアンオペレーション・シニアマネージャー(その他専門職)

佐藤弥生さん

自分の手掛けたことで5万6000人の球場がいっぱいに
ワッと球場が盛り上がるのを肌で感じられる


アミューズメントパーク、ゲーム制作会社、メジャーリーグ球団と、エンターテインメント業界のさまざまな業種で仕事をしてきた佐藤弥生さん。ロサンゼルス・ドジャースでは、ベースボールオペレーションとビジネスディベロップメントの2つの大きく異なる業務をこなす。「巨大な組織の中で、その一部を担えることが楽しい」と語る佐藤さんに話を聞いた。


【プロフィール】さとう・やよい◉東京ディズニーシー建設時の通訳として働いた後、2002年に渡米。日系商社に勤め、03年、アジア部アシスタントとしてドジャース入社。翌年、香港ディズニーランド立ち上げのため、香港へ。1年半の業務が終了し、05年再渡米。オンラインゲーム日本語版制作会社の立ち上げに関わった後、再度ドジャースに入社。以来、現職

大きな組織で働く面白味とやりたいこととの差

日本では、「東京ディズニーシー」建設の際、クリエイティブ部門のバイスプレジデントの通訳をしていました。それが終わって、2001年に渡米しました。

渡米後は、日系の商社で仕事をしていたのですが、ある日オンラインで、ロサンゼルス・ドジャースで人材を募集しているのを見つけました。小さい頃からスポーツ観戦が大好きで、特に野球は父親の影響もあったと思います。父に連れられてよくナゴヤ球場に足を運び、家では毎晩のようにナイターを見ていました。それくらい好きな野球に、仕事で関わることができるなんてとても素晴らしいと思い、すぐに応募し、アジア部のアシスタントとして働き始めました。

ドジャースで働き始めて1年ほど経った時、日本で働いていた時の上司から連絡があり、「香港ディズニーランドの建設プロジェクトに、コーディネーターとして参加しないか」と声をかけていただきました。プロスポーツ業界での仕事に面白味は感じていたのですが、正直、アシスタントという仕事が、自分のやりたいことと少し違うかなと感じ始めていた時でしたので、ドジャースを辞め、香港に渡りました。

香港ディズニーランド立ち上げの仕事が1年半で終わり、05年にアメリカに戻り、『Lord of the Rings』のオンラインゲームの日本語版を作る会社の立ち上げに携わりました。それが終了し、達成感を感じながら「さぁ、次はどうしようかな」と思っていた時でした。ドジャース時代の上司から、「部を強化するので、戻って来る気はないか?」と声をかけていただきました。仕事内容も前回よりやりがいがありそうでしたので、「ぜひ」ということで、08年から再度ドジャースで働くことになりました。


一度も球場に来たことのない層にリーチしたい

サンリオ社と行ったプロモーションイベントにて

現在私が受け持つ仕事は、大きく分けると2つあります。一つは、選手の「スカウト」「育成」「編成」「トレード」など、チーム強化のためのベースボールオペレーションの仕事です。もう一つは、「スポンサーセールス」「マーケティング」「PR」などビジネスサイドの仕事です。日本、韓国、台湾のマーケットを「アジア」と我々は呼んでいるのですが、この3つのマーケットを統括するアジア部の担当部長として、部をまとめています。

今、サンリオ社と組んでプロモーションを行っています。今年で2年目になるのですが、昨年は、ドジャースのユニフォームを着たハローキティのぬいぐるみを作りました。チケットパッケージとして1万個限定で販売するプロモーションだったのですが、シーズン途中にスタートしたにもかかわらず、2週間ほどで完売。さすがキティーちゃんの威力はすごいなと大変驚きました。

野球に限らずスポーツ観戦は、体験すればわかると思うのですが、生で観戦するのはとても楽しいことです。野球は他のスポーツに比べて試合時間が長く、のんびりと食べたり、飲んだり、話したりを楽しみながら観戦できる、ソーシャルなスポーツだと思います。でも、その楽しさを知らない人たちに、球場まで足を運んでもらうことは、私たちにとって大変難しい挑戦です。野球は、やはりお客さんが見に来てくださることで、すべてが成り立っています。それが、去年はキティちゃんの威力のお陰で、今まで野球には興味のなかった人、ドジャースタジアムに足を運んだことのなかった層を呼び込むことができました。

それを受け、今年は来場先着5万人にキティちゃんのボブルヘッドを配るプロモーションを7月1日にすることになり、今はその製作が進んでいます。また、毎年ドジャースでは「Japan Day」を開催しているのですが、今年はキティちゃんのプロモーションを、Japan Dayに合わせることにしました。ドジャースは、日曜日の試合前に、スポンサーやベンダー企業に出店していただくイベントを駐車場で行っています。このJapan Day にはたくさんの日系企業にご協力いただいて、日本色を出したいなと思っています。その参加企業を探すのも私の仕事です。そして、このような大きなイベントの日は、始球式や国歌斉唱など色々なプログラムがありますので、それらをプロデュースする手配も同時に進行しています。


日本から来る選手たちが花開くのを見届けたい

ベースボールオペレーションの仕事とビジネスサイドの仕事と、常に同時進行のプロジェクトがあるので、切り替えがとても難しいです。今どの仕事にウエイトを置いて進めていくべきか、スケジュールを自分でしっかり管理しなくてはいけないので、そこがチャレンジです。でも、私は少し飽きっぽいところがあるので、一つのことをずっとするより、色々なことに携われることを楽しんでいます。

私は、このJapan Dayを総括していますが、セレモニーには誰をブックするのかをエンターテインメント関係を扱う部署と話し合い、ボブルヘッドの製作に関してはスポンサーシップを管轄する部署と進めていきます。球団のほとんどの部署と関わりながら進めていきますので、大きなプロジェクトに関わっているのを感じられるところが醍醐味ですね。

ドジャースは去年、日本の大学生と高校生の2人とマイナーリーグ契約しました。彼らは言葉も通じず、文化も野球のトレーニング方法も違うアメリカにいきなり来るわけですから、最初の2年間は通訳を付け、生活面も含めてサポートします。私はその通訳と毎日コミュニケーションを取って、練習や英語の勉強、生活面はどういう様子なのか、問題点なども含めてレポートを上げてもらいます。いかに彼らが野球に集中できる環境を作るのかが、私たちの仕事です。ですので、彼らが4、5年後にメジャーリーグに上がって、ドジャースタジアムで投げる日を本当に楽しみにしています。自分たちが獲得してきた選手が、フィールドに出て活躍するこのワクワク感は、やはり何とも言えないですね。


生活の中にもっとドジャースが浸透してほしい

私はこの仕事がすごく好きで、とても楽しんでいます。ですので、このまましばらくはドジャースで仕事をしていきたいという気持ちがあります。その中での夢は、やはり自分が手掛けた選手がメジャーに上がって活躍する姿を見ること。それから、日系のコミュニティーとこれからもっともっと強いコネクションを作っていきたいです。ドジャースに日本人の選手がいる、いないにかかわらず、皆さんの生活の中にドジャースという球団がもっと浸透していって、頻繁に球場に足を運んでいただけるような強いつながりを持っていきたいと思っています。

アメリカにスポーツ関係の学位を取りに来る日本人留学生などから、仕事についてEメールで相談をいただくことがあります。これはどの仕事に就く場合にも言えることだとは思いますが、一番大事なことは、その業界のことを勉強することだと思います。球団は、日本もアメリカも非常に大きな組織です。ただ「野球に関わる仕事がしたい」ではなく、球団というのはどのように構成されているのかを事前にきちんと勉強して、自分がその中で何ができるのか、どんなところで活躍できるのかを明確にして、面接に挑まなくてはいけません。アメリカの会社はぼんやりと来てもダメです。日本人にとって自分を表現することは少し苦手なことではありますが、自分の長所をしっかりアピールして、なおかつ的をしぼった質問を面接時にぶつけられるようにしておくと、良いのではないかと思います。