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JOB

アメリカで働く(多様な職業のインタビュー集)

現地情報誌「ライトハウス」が長年に渡り連載してきた人気コラム「アメリカで働く」は、アメリカで働く日本人・日系人、100名以上の皆さんへのインタビュー集。業種も、職種も異なる100名以上の皆さんそれぞれにとっての「アメリカで働く」とは?アメリカでの"キャリア"や"仕事"が見えてきます。

ライトハウス編集部
ライトハウス編集部

ウェディングコーディネーター(企画・コーディネート系)

前田麻余さん

人生で1番ハッピーな結婚式という瞬間を
手伝えるのは、本当にありがたいこと


アメリカで夢を実現した日本人の中から、今回はウェディングコーディネーターの前田麻余さんを紹介しよう。日本の大学で結婚文化についての論文を書き、卒業後、インターンシップを経てワタベUSA Inc.のラスベガス店に就職。現在はウェディングコーディネーターとして活躍している。


【プロフィール】まえだ・あさよ■佐賀県出身。1977年生まれ。2001年、西南学院大学国際文化学科ドイツ文化コースを卒業。在学中にホームステイを経験後、02年5月よりワシントンDCでインターンシップを探すための研修に参加。同年11月、ワタベUSA Inc.ラスベガス店で働き始める。現在同店で、ウェディングコーディネーターおよびプランナーとして活躍中。

ウェディング会社でのインターンシップを探す

ボニー・スプリングス挙式の際の
コーディネーターのコスチュームで

 通っていた西南学院大学には留学生が多く、また海外留学する人も多くいる環境でした。私も3年生の時に1カ月間、カリフォルニアでホームステイをしましたが、英語で対等に話ができたのは5歳の子供がやっとというレベル。それでもっと英語を勉強したいと思い、お金を貯めて学生時代に海外旅行をしました。大学の卒業論文では、事実婚や、離れて暮らす結婚など、様々なスタイルを寛容に受け入れるドイツやフランスの結婚文化について書きました。今考えると、世界の結婚について考えたことも、現在のキャリアにつながっているのかもしれません。
 卒業後は、インターンシップを斡旋する会社の米国研修に参加。ワシントンDCで6カ月間、英語のレジュメの書き方や、インタビューの受け方などを勉強しながらインターンシップ先を探しました。希望は、ウェディング関連の会社でした。ただ漫然とですが、米国スタイルの結婚式を見てみたかったのです。米国のウェディング会社に電話をしたり、メールで履歴書を送ったりして、合計50社ほどに問い合わせましたが、いろいろ情報に触れるうちにウェディング関連の会社で働きたい気持ちが強くなっていきました。ただ、滞在していたワシントンDCにはウェディング関連の会社はあまりありません。友人に尋ねたところ、結婚式関連ならラスベガスがいいのではないかと言われました。そこでラスベガスの教会にも問い合わせ始め、最終的には、今働いているワタベUSA Inc.のラスベガス店と、ラスベガスの教会、そしてニューヨークの会社から採用の返事をもらいました。


ハッピーな笑顔に出会える仕事が好き

挙式後「楽しかったです」と言ってもらえる
時が1番うれしい瞬間だと話す

 迷った末、基本的な仕事のシステムができており、常にお客様と接することができるワタベを選びました。まずは、専属トレーナーの仕事を見せてもらいながら仕事を覚えます。お婿さんの衣装合わせや、衣装メンテナンス、その片づけを学び、しばらくして、花嫁さんの衣装合わせも手がけるようになりました。今では基本的に、お客様の送迎から挙式の立ち会い、DVDやビデオなど商品のデリバリーまでを、できる限り1人で担当するようにしています。
 仕事はとても楽しいですね。いろいろなお客様と出会えますし、やはり皆さん笑顔ですから。人生で1番ハッピーな結婚式という瞬間をお手伝いできるのは、本当にありがたいと思います。
 ラスベガスには、結婚式と旅行を兼ねて来られる方が多いので、長いフライトの後に疲れ果てた顔で打ち合わせにみえる方もいます。でも、挙式の当日は、やはり皆さん笑顔です。担当したお客様から「すごく安心して、挙式もフォトツアーも楽しめました。ハリウッドスターになった気分でした」というメールをいただいた時は本当によかったなあ、という気分になりましたね。ラスベガスという慣れない土地で、日本語で対応するとお客様は安心されるようで、「日本語が話せる人としゃべれて良かった」とか「お茶だ!」など、ささいなことでも喜んでくださることがあります。


かゆいところに手が届くコーディネートを目指す

 「ウェディングコーディネーターは、気がきかない人には向いていない」と言われたことがあります。お客様が何を1番欲しているのかを理解して、その気持ちをくむことが求められる仕事なのです。例えば「かわいい」花嫁姿を望んでいるお客様に、「きれい」なドレスをすすめるわけにはいきません。お客様のこだわりをくみ取った上で、似合いそうなドレスを提案します。かゆい所に手が届くコーディネートとでも言いましょうか。自分がいくら完璧なコーディネートだと思っても、お客様の希望と違ってしまえば、単なる自己満足になってしまいます。打ち合わせの時点で、お客様の希望をどこまで聞き取れるかが、私たちにとって1番重要なことです。
 日本からのお客様に対しては、すでにセットアップされた結婚式をこちらでコーディネートしますが、ラスベガスやロサンゼルスなど地元のお客様の場合は、問い合わせの時点から、いろいろなやり取りを経て結婚式を作り上げていきます。何もないところから作り上げていくので、コーディネーターというより、ウェディングプランナーですね。この部分を今後はもっと得意分野にしたいという希望はあります。いずれは全米ブライダルコンサルタント協会(The Association of Bridal Consultants)が発行する、ブライダルコンサルタントの資格にも挑戦してみたいと思っています。
 私が今、ラスベガスで労働ビザをもらって働けるのは、一緒に働くなかで私をサポートしてくださった皆さんのおかげです。アメリカの企業だと自分の実力を強力にアピールするのが普通かもしれません。でも私の場合は自分の力というより、周りでサポートしてくれる方がいたから。お世話になった方たちに足を向けて寝られません(笑)。
 ウェディングコーディネーターというと、華やかな世界の仕事だと思われるかもしれません。でも、あくまでも裏方でお客様の幸せのお手伝いをする仕事なので、人の気持ちをくみ取れる心配りが大切ですし、そういう人に向いている仕事だと思います。

(2006年8月16日号掲載)