働く
JOB

アメリカで働く(多様な職業のインタビュー集)

現地情報誌「ライトハウス」が長年に渡り連載してきた人気コラム「アメリカで働く」は、アメリカで働く日本人・日系人、100名以上の皆さんへのインタビュー集。業種も、職種も異なる100名以上の皆さんそれぞれにとっての「アメリカで働く」とは?アメリカでの"キャリア"や"仕事"が見えてきます。

ライトハウス編集部
ライトハウス編集部

パラリーガル(その他専門職)

野々山浩代さん

お客様の文化を勉強しながら
それに沿えるような形で仕事をして行く


アメリカで夢を実現させた日本人の中から、今回はパラリーガルの野々山浩代さんを紹介しよう。大手法律事務所に入社後、職務をこなすうちに、パラリーガルの知識を身に付けた。現在は、コーポレート・パラリーガルとジャパンビジネスチームのマネージャーの2足のわらじを履く。


【プロフィール】ののやま・ひろよ■愛知県生まれ。関西外国語大学に在学中に交換留学し、メーン州コルビー大学にてスピーチ・コミュニケーションを専攻。卒業後、イリノイ大学大学院にて、比較言語学およびアジア学を専攻。1990年、国際法律事務所Baker & McKenzieでジャパンデスク担当。Pillsbury Winthrop法律事務所で8年の勤務を経て、現在、Reed Smith法律事務所勤務
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仕事をこなしていたら
パラリーガルに

同僚のパラリーガルとも、頻繁に意見交換する

 イリノイ大学大学院で、アジア学と比較言語学を専攻しました。卒業後、日本語の教師をやっていたのですが、主人の仕事の関係で、カリフォルニアに引っ越して来ました。それが1990年でバブルがまだ弾ける前ですから、日本語を話せるというだけで、仕事を探す上で重宝されました。

 1番条件が良かったのがBaker & McKenzieという、大きな法律事務所でした。ジャパン・ビジネスプラクティスという、日本企業を担当する弁護士で作っているグループのコーディネーターとして入ったんですね。日本企業さんが来られて、案件をまずお聞きして、それぞれの分野の担当弁護士に、その案件を取り扱ってもらうという架け橋です。

 クライアントのための通訳や翻訳から始まって、そのうち弁護士と仕事をする機会がかなり増えました。それで弁護士の補佐をしているうちに、パラリーガルになってしまいました。ですから、私の場合、特に専門的なトレーニングは受けていません。実地で必要に応じて仕事をこなしているうちに、パラリーガルという肩書きをいただくようになったのですね。

 Baker & McKenzieでは4年間働き、Pillsbury Winthrop(当時)に8年間、それから現在のReed Smithに移って来ました。Reed Smithに弁護士は1500人くらいいるのですが、ここでも選抜された40名くらいの弁護士で、ジャパンビジネスチームを作っています。私はそのマネージャーもしています。


クライアントと
共に学ぶ毎日

パラリーガルは通常、大半の時間を
オフィス内での事務作業に費やす

 コーポレート・パラリーガルとして大変なのは、やはり言葉の問題ですね。日本の経営の仕方、あるいは日本のビジネスのやり方と、アメリカでのやり方というのは全然違います。だから、まずアメリカの会社の仕組みを日本語で説明しなければならないのですが、私は日本で働いた経験がありませんから、日本企業がどういう仕組みになっているか、知らなかったわけです。逆に日本のお客様から教えていただいて、こちらもアメリカのことを教えて、そういう具合に日本の法律も、アメリカの法律も、叩き上げで必要に応じて勉強してきました。

 私たちは国際法律事務所として、お客様の文化を勉強しながら、それに沿えるような形で仕事をしていくというのがモットーです。そこが大変ですし、やりがいのある所だと思います。だから、私がチームに入って、少しでもスムーズにその取引が進んだりすると、「ああ、私は無駄じゃなかったな」と、満足感を感じます。

 大きな弁護士事務所で、一見、私のような者の役割というのは、そんなに重要ではないと思っている方が多いと思います。でも実際に日本企業のクライアントと仕事していく上で、少しでも相互理解のギャップを埋めることができる人がいると、かなり仕事がスムーズに進みます。そのクライアントが継続して、うちの弁護士を雇ってくれるというメリットもあります。そういうメリットを理解してくれる事務所でないと、長続きしないと思います。


忍耐とユーモアが
必要な資質

 パラリーガルになろうと思ったら、パラリーガルスクールで資格を取るのが第1歩だと思います。資格がなければなれないということはありませんが、今、ほとんどの弁護士事務所は、資格を持たない人は採用していません。競争が激しいですから、やはり持っている人の方が優先されるでしょう。

 ただし、例えばUCLAのパラリーガルスクールを卒業してレジュメを出しても、すぐに大手弁護士事務所からオファーが来るということは、ほとんどないと思います。まずスクールに行って知識を得て、最初はパラリーガル・アシスタントとして、一生懸命に実地の知識を習得するのです。その上で日本語も英語もうまく書け、読め、話せるということであれば、パラリーガルとしての価値が2倍にも3倍にもなると思います。

 本来のパラリーガルの仕事だけをするのであれば、デスクワークなのでクライアントと会う必要もないし、本当に事務仕事です。紙とコンピューターと自分の、3人の闘い。それができる人でないと難しいですね。後は細かい所に注意が行き届く人が適職です。几帳面で、数字だとかをキチンと出せる人。

 ただし、そういう仕事だけならネイティブの方が、英語も不自由なく適役です。ですから、ネイティブのパラリーガルよりも自分ができることをドンドン見つけて、それをアピールしていく、それが1番良いと思います。

 私のような日本企業との架け橋となるパラリーガルで1番大切な資質は、我慢強さです。クライアント側と弁護士側の要望を、間に立って調整しなければなりません。ちょっとした事で悩んだり、怒ったりしてしまうと、仕事にならないんですね。また、ミスは誰でもするわけですから、ミスをしたら修正して謝る。ミスをした時にどういう風にフォローするかが、クライアントから信頼してもらえるか、もらえないかの分岐点ですから。そして、「これから頑張ろう」というガッツと忍耐、それから周りの雰囲気を和ませるユーモアのセンスがないと、やって行けない仕事だと思います。

(2007年3月16日号掲載)