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JOB

アメリカで働く(多様な職業のインタビュー集)

現地情報誌「ライトハウス」が長年に渡り連載してきた人気コラム「アメリカで働く」は、アメリカで働く日本人・日系人、100名以上の皆さんへのインタビュー集。業種も、職種も異なる100名以上の皆さんそれぞれにとっての「アメリカで働く」とは?アメリカでの"キャリア"や"仕事"が見えてきます。

ライトハウス編集部
ライトハウス編集部

マニキュアリスト(その他専門職)

小宮 詩江さんさん

アメリカのネイルは、
爪の健康に配慮した
ナチュラルな仕上がり


アメリカで夢を実現した日本人の中から、今回はマニキュアリストの小宮詩江さんを紹介。爪のケアから華やかなネイルアートまで、美しい指先を生み出すネイルのエキスパートだ。


【プロフィール】こみや・ふみえ■東京生まれ。オハイオ州にある「Inner State Beauty School」にてネイルアートを学び、マニキュアリストとなる。現在、サンディエゴ市サウスパークにあるLulu's Beauty Salonにて、マニキュアリストとして活躍中。www.lulusbytravisparker.com/lulus_we_believe.html
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ネイルに興味を持ち、日本で短期集中学習

ナチュラル系のネイルアートを
得意とする

 中学生の頃には、既にネイルに興味を持っていて、その頃から爪を整えていた記憶があります。日本で就職した会社では、女性が多い職場だったこともあり、みんな競うようにファッションやネイルに情熱を燃やしていました。もちろん、私もそのうちの1人(笑)。特に私はコンピューターを使う仕事をしていたため、指先を見られることも多く、爪のお手入れは欠かせませんでした。

 2001年に、夫の転勤でオハイオ州に住み始めたのですが、のんびりした田舎だったせいか、雇用数も職種もすごく限られている印象を受けました。その時に、「今後、アメリカで暮らしていくのなら、手に職を付けておいた方が良いかも」と思い始め、ネイルの仕事はどうかなぁと、家の近くでネイルスクールを探し、訪ねてみました。

 ところが、実際に校長先生とお会いし、カリキュラムの内容などをうかがったのですが、分厚い教科書を使いながら皮膚の構造や衛生面、病気についての勉強が中心ということを知り、私の持っていたネイルのイメージとは全然違うことがわかりました。

 しかし、さらに調べていくと、3カ月コースを持つネイルスクールが日本にあることを知り、単身日本に戻って、その学校に入学しました。そこで日本の華やかなネイルアートと技術を学んだ後、オハイオに戻って来ました。ですが、最終的にはアメリカで資格を取らなければならなかったので、あまり興味の沸かなかった近所のネイルスクールに通い始めました。


州ごとに異なる資格 他州での実務経験が活きた

資格取得後に働いていた
オハイオ州のネイルサロン

 州の定める資格試験を受けるためには、200時間の単位が必要だったのですが、近所の学校では技術的な指導はほとんどなく、衛生面や医学的な知識の習得が中心でした。また、一般の人たちをモデルにした実践練習も単位に換算されます。

 資格試験合格後は、ベトナム人家族が経営するネイルサロンで働き始めたのですが、そこのオーナーのネイル技術は高度なもので、彼の仕事を見ながら技術の習得に励みました。そこで2年半働いた頃、再度夫の転勤で、サンディエゴに引っ越すことに。

 マニキュアリストの資格は、州ごとに試験を受けなければいけないので、私はカリフォルニア州の試験について調べてみました。すると、カリフォルニア州では、400時間の単位が必要だということがわかりました。また学校に通わなければならないのかと思いましたが、オハイオ州での2年半の実務経験が認められて、不足単位はそれで補うことができました。

 カリフォルニア州のテストは、オハイオ州のものと方法も違えば内容も異なっていたので、戸惑うこともありましたが、無事試験もパスし、いくつかのサロン勤務を経て、現在はサウスパークにあるLulu’s Beauty Salonで、マニキュアリストとして働いています。

 オハイオ州で働き始めた最初の3カ月くらいは、緊張のあまり手に力が入り過ぎて、筋肉痛になってしまうこともよくありました。ネイルアートの中には、爪に接着剤のようなジェルを塗るものがあるのですが、乾いたジェルの表面をドリルを使って滑らかに仕上げなければなりません。ちょっとでもドリルが皮膚に触れるようなことがあれば、お客様にケガをさせてしまうと思うと、心臓はドキドキ、額には冷や汗が。まさに、毎日が緊張の連続でした。


アメリカ人にとってネイルは「日常的な身だしなみ」

 この仕事を始めて5年ほどになりますが、マニキュアリストは、ただうまくマニキュアを塗れればいいというものではないと強く感じます。例えばペディキュアを希望されるお客様の中には、かかとの角質が極端に厚くなっている人がいます。そういう人は糖尿病を患っている場合が多く、皮膚に傷が付くと出血が止まらなくなる危険があるので、「失礼ですが…」と、事前に病気についておうかがいし、ネイルニッパーなど鋭利な道具の使用は避けるようにしなければなりません。

 また、爪のコンディションが良くない人や、爪を噛む癖があるため極端に爪が小さい人などは、ご希望のスタイルに添えないこともあります。そんな時は、その人の爪に合ったデザインや、ほかの方法を提案することも必要です。

 また、私にとって仕事の励みになっているのは、「やっと、自分に合ったマニキュアリストを見つけた」と、私を指名してくださるお客様がいらっしゃることですね。お客様にそう言っていただけるのは、プロとしてやっぱりうれしいものです。

 日本人にとって、ネイルは華やかなファッションであり、ちょっとスペシャルなイメージがありますが、アメリカ人のネイルに対する認識はちょっと違っている気がします。日本に比べて手頃な料金で受けられるということもあると思いますが、爪をキレイにしてもらうことは、「日常的な身だしなみ」という感覚で、気軽にサロンを利用される人が多いですね。お客様の中には、来店されるたびに、1週間後の予約を入れて帰られる方もいらっしゃいます。

 日本のネイルブックを見ればわかるように、日本のネイルアートはデザインだけでなく、マテリアルや技術面でもものすごい速さで進化しています。それと比べ、アメリカのネイルは、日本ほど派手さはありませんが、爪の健康に配慮したナチュラルな仕上がりで、日常生活の邪魔にならないものが多いです。

 今後は、日本とアメリカのそれぞれの長所を取り込んでいき、お客様の身だしなみのお手伝いをしていけたらいいなと思っています。

(2008年2月1日号掲載)