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アメリカで働く(多様な職業のインタビュー集)

現地情報誌「ライトハウス」が長年に渡り連載してきた人気コラム「アメリカで働く」は、アメリカで働く日本人・日系人、100名以上の皆さんへのインタビュー集。業種も、職種も異なる100名以上の皆さんそれぞれにとっての「アメリカで働く」とは?アメリカでの"キャリア"や"仕事"が見えてきます。

ライトハウス編集部
ライトハウス編集部

ランドスケープ・アーキテクト(クリエイティブ系)

橋本 純さんさん

デザインがきちんとした根拠に
基づいていなければ、
納得してもらえません


アメリカで夢を実現させた日本人の中から、今回はランドスケープ・アーキテクトの橋本純さんを紹介。つらいことも大変なこともすべてが勉強と、個人邸から商業施設まで、さまざまなプロジェクトを手がけている。


【プロフィール】はしもと・じゅん■1974年宮崎生まれ。アリゾナ州立大学を卒業後、ハーバード大学院でランドスケープ・アーキテクチャーを学んだ後、ワシントンD.C.で就職。現在、ソラナビーチにある「The Office of James Burnett」(www.ojb.com)で働く一方、友人と設立した「skye design studio」(www.skyedesignstudio.com)でも活躍中。
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職業適性検査で適職のキャリアを選ぶ

集めた雨を循環させるレインガーデン

 私がランドスケープ・アーキテクトになったのは、実は1つのテストがきっかけでした。

 日本で短大の英文科を卒業後、ペンシルベニア州の中学校で、日本の文化を教えるインターンシッププログラムに参加したのですが、その学校にいた美術の先生にすすめられて、「職業適性検査」というテストを受けてみたのです。そのテストによると、私の適職は「ランドスケープ・アーキテクト」。それを機に興味を持ち始め、インターンシップ終了後、ランドスケープ・アーキテクトを目指すことに。

 宮崎出身の私は、寒い冬が苦手だったので、アリゾナ州テンピにあるArizona State Universityに入学を決めました。そこで4年間ランドスケープ・アーキテクチャーについて勉強したのですが、例えば、「もし、ここに公園を造るとしたら?」「もし、この街を再開発するとしたら?」といったことを仮定し、その場所を取り巻く環境やさまざまな条件を考慮しながら、自分のアイデアを出したり、実際に図面を描いたりするクラスがありました。

 2年目の最終学期では、生徒が半分に減らされるので、そのプレッシャーもありましたし、つらくて止めようと思ったことも。ですが、先生に励まされながら、なんとか乗り越えることができました。


夢を実現するためにハーバード大学院進学

ショッピングモール内のコートヤード

 卒業前のインターンシップは、この業界の先端を行くオランダで行いました。

 まずは、「Wageningen Agrucultural University」という大学が設けている、ランドスケープのためのインターナショナルスクールに2カ月間参加し、オランダの街を活性化させるためのディスカッションを行ったり、公園や街並みを実際に見ながら学習しました。

 その後、アムステルダムにあるランドスケープ事務所でインターンをすることになり、そこでは個人邸から大きなプロジェクトまで、積極的に参加させてもらいました。オランダは、伝統や文化の中にモダンなデザインやトレンドを織り交ぜていくというスタイルも多く、アメリカのランドスケープとの違いを勉強する良い機会でした。

 アリゾナ州立大学を卒業後は日本に戻り、少しの間、ランドスケープから離れてみたのですが、やはり、どうしてもランドスケープのことが気になって「もっと勉強したい」という気持ちが強くなり、結局、ハーバードの大学院に入学することを決めました。

 なぜ、ハーバードにしたかというと、国際的な雰囲気の中で勉強できることや、世界的に知名度も高いため、色々なことを学ぶチャンスがあると思ったからです。ハーバードは、実際に色々な分野間でのコラボレーションがあり、自分の未知の分野に触れられることも大きな魅力でした。ただハーバードは、世界中から優秀な人たちが集まって来ているため、競争も激しく、在学中に2回「Low Pass」という成績を取ると退学になるという厳しさ。みんな泊まり込みで必死に頑張っていましたね。

 大学院卒業後は、ワシントンDCでの就職が決まりました。DCのオフィスでは、病院内のヒーリングガーデンや、コンドミニアム周辺の景観、リゾートスパのランドスケープなどを手がけました。

 病院のヒーリングガーデンのプロジェクトでは、水の使い方や植物の種類に配慮したり、パーキングエリアや待合室から見た時の景観にもこだわりました。また、この場所で患者さんのカウンセリングが行えるよう、さりげなくプライバシーが保たれる小さな空間も作りました。ランドスケープは、ただ美しく見えるだけでなく、その場所の目的や機能性など、幅広い視点で考えていかなければいけません。

 DCでの仕事も順調だったのですが、2年半経った頃、「他社ではどんな仕事をしているのだろう?」と思い、アリゾナ州立大学の先生に相談したところ、現在働いているサンディエゴのソラナビーチの「The Office Of James Burnett」を紹介され、現在に至っています。


つらいと思うこともきっと将来役に立つ

 デザインは、日照時間の問題や、建物の位置、その土地の天候や植物の特性、そして予算など、諸条件を基に考えていきます。ランドスケープ・アーキテクトが手がけるのは、個人邸や商業施設のほか、ゴルフ場や公園などさまざまです。ですが、どのプロジェクトにも共通することは、「どうしてそのデザインにしたのか」という理由が必要だということで、そのデザインがきちんとした根拠に基づいていなければ、クライアントになかなか納得してもらえません。

 また、ランドスケープの仕事依頼は、建設プロジェクトの最後の方で決められることも多く、予算がタイトな場合もよくあります。実際にクライアントが納得するまで、何度も違うアイデアを提案し、ミーティングを重ねることも多くあります。

 今後のビジョンとしては、最近、友人と立ち上げたランドスケープ事務所「skye design studio」の規模を大きくし、そちらをメインに仕事をしていきたいと思っています。そのためには経営についても勉強しなければいけませんし、今、「つらい」と思うことも、きっと将来役に立つ日が来るのではないかと思って、頑張っています。

 職業適性検査でこの職業が向いていると言われた私ですが、どうやらそのテストの結果に間違いはなかったようです(笑)。

(2008年3月1日号掲載)