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独立・起業マニュアル
(1)開業準備編

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モデル:AFC社 社長石井龍二さん
AFC

「アメリカンドリーム」という言葉がある。それだけアメリカは、多くの人々の夢を叶えてきた歴史があるということだ。鉄鋼王アンドリュー・カーネギーや自動車王ヘンリー・フォードからビル・ゲイツまで、一代で世界のビジネスリーダーになった成功例は跡を絶たない。そこで今回から2号連続で、アメリカンドリームを実現するための成功ノウハウを検証した。まずは独立・起業の際の心構えや手続きについて専門家に聞いてみよう。

起業する前の心構え

お金儲けは目的ではない

阪本啓一 さかもと けいいち
◉経営コンサルタント
大阪大学人間科学部卒業後、旭化成に入社。
19年間勤務の後、2004年に独立・渡米。
ニューヨークでコンサルティング会社
「Plamtree Inc.」を設立し、2006年には
世界にJOY(喜び)とWOW(感動)を広め、
浸透させたいという理念から、株式会社
JOYWOWを設立。現在同社取締役会長。
著書多数。本誌「マーケティングサー
フィンUSA」
でもおなじみ

 「ビジネスは君を表現するアートだ」と提言するのは、本誌でもおなじみのブランディング・コンサルタント、阪本啓一さんだ。「生きるということは、何かを表現することです。人として生まれた以上、子供でも、専業主婦でも、引退した老人でも、サラリーマンでも、生きている以上、表現しています。表現することを『アート』と呼ぶならば、仕事は、自分自身を表現するアートなのです」と阪本さんは話す。だから「お金儲けがビジネスの目的であってはならないのです」と言う。

 「きれいごとに聞こえるかもしれませんが、お金儲けは結果であって、目的ではありません。ビジネスの成功の定義は、高層ビルのオフィスでも、高級外車でも、何億円もの資産でもなく、その先にある目に見えない精神的な満足にあります。それは、家族や友人・クライアントの大きな笑顔かもしれません。自分は何を成すためにこの世に生まれてきたのか、ということを学ぶための手段が仕事なのです」。

 自分のビジネスを創業するにあたり、何より大切なのは「志」だと阪本さんは強調する。

 「志とは経営理念と言い換えてもいいでしょう。これがしっかり確立されていれば、成功の50%は約束されたようなものです。最近は企業の不祥事が新聞紙上を賑わせていますが、どれも皆、煎じ詰めれば志の低さに原因があります。自社ブランドを製品につけた以上、いかなることがあったとしても、顧客に向き合う時は自分のせいなのです」。

 そのため、起業する際には、自分が何をしたいのかを考えて、紙に書き出してみるのがいいとアドバイスする。その際には、「××という商品(製品・サービス)を売る」というような「商品の販売による定義」をしないことが重要だとか。

 「マーケティングの観点から言っても、これはビジネス領域を狭める結果になります。例えば豆腐の製造・販売をしたとすると、『この豆腐を年間10万個販売する』ではなく、『このとびっきりうまい豆腐を食べて、1人でも多くの人をハッピーにする』のが志なのです」。

 例えば、誰かが始めた牛丼屋には連日お客さんが行列を作っているから、自分も牛丼屋を始めよう、というのは、競争を作っているに過ぎない。「競争」ではなく「共存」が、新しい世界の新しいビジネスルールだと阪本さんは語る。

 「市場がどんなに成熟して、もう入り込む余地はない、と思っていても、きっとそこにはまだ誰も手をつけていない白紙があるはずです」。その例として阪本さんが挙げるのは、ノンフロン冷蔵庫、紙パックの要らないサイクロン式掃除機、ドラム式洗濯乾燥機など。これらは家庭普及率100%に近い成熟しきった市場に新しい価値を提案し、市場を創造した例だ。周りを見渡すと、「ありふれたものなのに、新しい工夫がある」という日常生活品は少なくない。そんなちょっとした不満や不便を解決してくれる喜びと感動の中に、ビジネスチャンスは見つかると、阪本さんは応援する。

お金の代わりに知恵を出す

 日本でも2006年に会社法が改正され、手元にまとまった資金がなくても会社を設立できるようになったが、アメリカではそれこそ100ドルの資本でも株式会社を設立することができる。資金がなくても起業は可能だが、注意したいのは「簡単に始められるビジネスは、他の人にとっても簡単で、すぐに参入できる」という点だ。特にウェブなどITを使ったネットビジネスは、ネットに接続したパソコン1台で誰でも始められる。だが、始まりの容易さが経営の甘さにつながらないようにしなければならないと、阪本さんは注意を促す。

 一方で、「借金はしてはいけない」というのが、阪本さんの持論だ。
 「家計でも同じですが、借金は金額がたとえわずかでも、マイナスの波動が出ます。手元にある範囲、身の丈のビジネスをわきまえることが重要です。また借金すると、借金をした相手が口を出します。銀行であれ、企業であれ、個人であれ、志に背向くことを言われかねません。シンプルな経営のためにも、借金はせず自前主義で行くのが1番です」。

 お金が今、ビジネスの流れのどこにいくらあるかを頭に入れておくためにも、支払いも入金もすべて現金主義で行くべきだという。必要最低限の会計の知識を学ぶには、キャッシュフロー経営について、ていねいな説明をしている『実学入門 経営がみえる会計』(田中靖浩著、日本経済新聞社)がオススメとのこと。

 また起業に際して、「清水の舞台から飛び降りるのは感心しない」と阪本さん。ビジネスを始める時は、リスクは1つでも減らすことが肝心だ。そのためには、手元に1円もないという想定で始めてみるのがコツだとか。

 「私はこれをゼロスタートメソッドと呼んでいますが、お金を出す代わりに知恵を出す。小さく始めるに越したことはありません。美しいビルに入居したからといって、売り上げにはまったく関係ないのです。ただし、お客さんの目に触れる部分はケチるべきではありません。現代人は目が肥えています。店舗、会社用封筒、名刺など、お客さんの接触する要素には、できる範囲で良いものを使うようにしましょう」。

 統括すると、自分を表現するアートを見つけ、そのアートを使って社会に還元する知恵を出すところから、起業はスタートする。


 では実際に、アメリカで成功した人はどのような心構えや経緯で成し遂げたのかを次章で検証してみよう。