(2025年5月号掲載)
アメリカの大学のアドミッション(入学審査)では、複数の大学に共通で利用できるアプリケーション・サービスを採用する大学が大半を占めています。最も多くの大学に採用されているのがCommon Appです。一方、近年、全米の難関校55校で採用されているQuestBridgeが注目されています。QuestBridgeはCommon App同様、複数の大学にアプライできる共通アプリケーション・システムです。
低所得家庭の才能のある学生を支援
QuestBridgeは低所得家庭の才能ある学生の難関大学への進学を支援するNational College Matchというユニークなプログラムを有します。
National College Matchのファイナリストに選ばれた学生は、QuestBridgeを採用する大学に進学する際、家庭の負担がゼロで進学できるよう、各大学から奨学金が給付されます。National College Matchの学生は、4年間で1人平均32万5000ドルの奨学金を大学から得ているそうです。
National College Matchは、12年生が対象です。駐在ファミリーなど、非永住ビザの学生も対象で、永住権や市民権を持つ生徒は、米国外の高校に在籍していても対象となります。
National College Matchの利用には世帯年収の上限があります。4人家族の場合、世帯年収が6万5000ドル以下で、保有する資産が最小限であることが条件となります。
また、高校でAPなどレベルの高いコースを履修し、ほとんどのクラスでAを取っていることが求められます。さらに、優れたライティングスキルを有し、知的好奇心にあふれ、成功をつかむことへ高い意欲を示す学生であることも重要な要件となります。
2024-25年度のアドミッションでは、National College Matchに2万5500人が応募し、7288人がファイナリストに選ばれました。そのうち、2627 人の学生がEarly Admissionsでの入学を決めています。これは、2年前の1755人と比較すると、50%の大幅増です。
National College Matchの学生は、QuestBridgeからサポートが得られるため、経済的な理由で進学コンサルタントの支援が得られない場合も、安心して進学準備に取り組めます。
ダイバーシティーに寄与する仕組み
難関大学がQuestBridgeを重視する背景には、マイノリティー学生の減少があります。連邦最高裁判所は23年に「アファーマティブ・アクション」(積極的差別是正措置)が合衆国憲法に違反すると判断を示しました。以来、大学はアドミッションで人種を考慮することが難しくなりました。
例えば、Brown Universityは、人種を考慮するアドミッションを廃止したことによりマイノリティー学生が10%減少し、同時に90人のNational College MatchのファイナリストをEarly Admissionsで受け入れました。MITでマイノリティー学生は9%減少しましたが、QuestBridgeの学生をEarly Admissionsで100人受け入れました。早期入学者の10%以上を占めます。
QuestBridgeは人種に基づくプログラムではありません。しかし、低所得家庭支援でダイバーシティーが広がるのであれば大学には好都合です。QuestBridgeによると、National College Matchの学生の81% はFirst Generation(両親が大学以上の学位を有していない)でした。
対象となる学生は、大いに活用することをお薦めします。
(2025年5月号掲載)
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