ファイナンシャル・エイドの基礎(1)ニードベースとメリットベース

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(LA版2022年7月16日号掲載)

アメリカの大学進学を考える上で忘れてはならないのが学費の問題です。物価上昇の影響もあり、学費は高騰しています。大学によっては年間8万ドルに上る学費を楽に払える学生は多くありません。

アメリカでは、経済的な理由で学生から学ぶ機会を奪うべきではないという考え方が根付いています。そのため、さまざまななファイナンシャル・エイド(奨学金)を用意し、なるべく多くの学生に学ぶ機会を提供しています。アメリカ人だけでなく、ビザ滞在者や外国人留学生も、大学からファイナンシャル・エイドを得て学費の自己負担額を下げて進学するのが一般的です。

大学が学生に提供するファイナンシャル・エイドの額は一律でなく、学生に対する評価や、家庭の経済状況などにより金額が異なります。学生が実際に大学に払う学費は一人一人異なると言っても過言ではありません。従って、アメリカで進学する大学を決める際に、どの大学に合格できるかは重要ですが、その大学にいくらで進学できるのかは、もっと重要です。

COAとネットプライス

大学の学費の中で大きな割合を占めるのが「授業料(Tuition and Fees)」と「寮費・食費(Room & Board)」です。これ以外にも、教科書代などの教材費、実家に帰省する際の交通費、医療保険の保険料などの費用がかかります。1年間大学で学ぶのに必要な費用を合算したものを、コスト・オブ・アテンダンス(COA)と言います。各大学のウェブサイトには、一般的な学生のCOAの金額が記載されています。

ただし、全ての学生がCOAを全額負担して進学するわけではありません。多くの学生はファイナンシャル・エイドを大学から得て、学費を下げて進学します。アメリカの奨学金は全て返済不要の給付型なので、獲得すれば負担する学費が下がります。学生が、1年間大学に通うのにかかる実際の費用をネットプライスと言います。つまり、COAから給与された奨学金などの額を引いた金額が、ネットプライスです。ネットプライスは、各学生が1年間に実際に大学に支払う費用を示す重要な値です。

ニードベースの奨学金とメリットベースの奨学金の違い

大学が提供するファイナンシャル・エイドにはさまざまな種類がありますが、特に重要なのがニードベースとメリットベースの奨学金です。

家庭の所得が学費を全額負担するのに十分ではないと判断された場合、不足分(ファイナンシャルニード)の一部または全部を大学が負担する制度がニードベースの奨学金です。学生のファイナンシャルニードをどのように負担するのかは、大学により大きく異なります。ニードベースの奨学金は、米国市民と永住者を対象とする大学が多いですが、一部の大学は、外国人留学生にもニードベースの奨学金を給付しています。

これに対し、メリットベースの奨学金は、学生個人の評価に対して提供される奨学金です。国籍や滞在資格にかかわらず、誰でも獲得できる可能性があります。大学進学を目指す多くの学生にとって、最も価値の高い奨学金と言えます。メリットベースの奨学金は、大学がその学生をどの程度欲するかで金額が決まる場合が多いため、その額は一人一人異なるのが一般的です。極めて評価の高い学生には、授業料の全額免除や、寮費なども含めた学費全額免除が提示される場合もあります。

大学によって、ファイナンシャル・エイドの提供方法は異なります。ニードベースの奨学金のみを提供する大学もあれば、多くの学生にメリットベースの奨学金を提示する大学もあります。ニードベースを狙うのか、メリットベースを狙うのか、またはそれ以外の奨学金制度と組み合わせるのかなど、家庭の状況や、進学したい大学に応じ、戦略を立てることが重要です。(2022年7月16日号掲載)

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