ドッググルーマー(サービス・サポート系):加藤真理さん

ライトハウス電子版アプリ、始めました

飼い主にとって犬は赤ちゃんのようなもの
ワンちゃんが快適に過ごせる空間を作りたい

アメリカで夢を実現させた日本人の中から、今回はドッググルーマーとして活躍する加藤真理さんを紹介しよう。結婚のために渡米した後、以前から興味のあったグルーミングの学校へ。マリブの店で修業を積み独立。5月中旬には、ついに夢だった犬のブティックとグルーミングショップをオープン。

【プロフィール】かとう・まり■1974年生まれ。東京都出身。99年、結婚を機に渡米。02年、ハシエンダ・ラプエンテ・アダルトエデュケーションのグルーミングスクールを卒業後、マリブのショップに勤務。マリナデルレイの店の一角を借りて独立。05年5月、ベニスにペットブティックとグルーミングショップをオープン。

そもそもアメリカで働くには?

ウェブに掲載したら、高級店からオファー

ヘアカットの真っ最中

日本にいた頃、黒いプードルを飼っていたのですが、月に1度トリミングに連れて行くとかわいくなって帰ってくるので、家でもトリマーの真似事をしていました。トリミング学校にも行きたかったのですが、仕事をしていると忙しくて実現しませんでした。
 
99年、結婚を機に渡米して2カ月ほど経った頃、新聞でグルーミングショップの求人広告を見つけました。日本ではトリミングと言いますが、アメリカではグルーミングと言うのですね。未経験者可だったので応募したのですが、私はまだやっと車の免許を取ったばかりで、結局不採用になりましたが、オーナーが6、7人集めて、ハシエンダ・ラプンテ・アダルトエデュケーションという州運営の職業訓練所の中にあるドッググルーミングコースを紹介してくれました。州運営ですので学費も安いし、先生が元全米トップグルーマーで、今では3年先までいっぱいだそうです。
 
でも渡米後間もなかったので英語も話せなかったし、主婦には週4日11時から7時までの授業も大変でした。「グルーミングよりアルファベットを勉強したら」などと意地悪を言う人もいて、本来なら9カ月で卒業なのですが、なかなか続けて通えませんでした。でもある時ふと、せっかく道具を買ったのだし、犬も好きだから最後までやろうと思ったのですね。それからは毎日しっかり通いました。同時に入学して卒業したのは結局2人だけでした。
 
学校に通っている時から、週末はグルーミングショップで犬を洗ったりブラシをかけるバイトをして、卒業後は近所の店でインターンをしていました。私は電話帳で調べて就職活動をしたり、グルーマーのウェブサイトに自分の経歴を掲載していたのですが、ある日、ウェブサイトを見たマリブの店から仕事のオファーが来たのです。面接に行ったら、日本人で経験もないのにオーナーがなぜか気に入ってくれて、教えてもらいながら仕事をすることになりました。と言っても給料は通常通り払ってくれると言うので、願ってもない話でした。

今ある技術のすべてを、マリブの店で教わった

マリブの店でオーナーと

店長はドッグショーの出身で技術も高いし、客扱いもうまい。小さな店でしたが、場所柄セレブの顧客が多く、アダム・サンドラー、ジャネット・ジャクソン、ケイト・ハドソン、ダイアナ・ロスなどが気軽に遊びに来るような店でした。ここでは、技術はもとより電話の受け方、顧客との接し方から英語まで、本当に多くのことを学びました。私の技術は、すべて店長の技術だと言っても過言ではありません。学校を出ても基礎しか知らないのですね。実践を通して、骨組みに肉をつけていくんです。今の私があるのは、この店で働くことができたおかげだと思います。
 
ただその分厳しい面も多く、店長には「速く、速く」と急かされて泣いたことも多々ありました。この仕事はスピードも重要なのです。でも悔しいと思っているうちに、気がついたらスピードも速くなり、指名客もたくさん付くようになっていました。高級店だったので収入も良かったし、チップも多かったのですが、将来的には自分の店を持ちたいという夢がありました。
 
そんな時、ペットショップを経営している友人から、「店のスペースが空いているからグルーミングをしないか」と話がありました。できる範囲でやっていこうと思って始めましたが、びっくりするくらい顧客が付いたのです。ですが残念なことに、事情があってその店が今年の2月、急に閉店することになりました。

夢だった店をオープン。不安もあるが夫に感謝

せっかくこの界隈でやり始めたので、今度こそ自分の店を開けたいと思い、ベニスでこの5月中旬にオープンするのが「マリナドッググルーミング」と「ベニスペッツ」です。ベニスペッツは犬のブティックで、学校に行っていた頃から、半分がグルーミングショップで残りの半分がブティック、という店をやるのが夢だったのです。
 
飼い主にとって、犬は赤ちゃんみたいなものです。ですので飼い主が安心して赤ちゃんを預けられるように、すべてオープンウィンドーにしてカメラも設置しました。またハイドロサージシステムという装置も導入しました。これは水のプレッシャーでアンダーコートまできれいに汚れを落とすだけでなく、ツボも刺激してくれるものです。シャンプーなどもすべて高級製品を使用し、ワンちゃんができるだけ快適に過ごせるようなスペースを作りたいと思っています。厳選したハイクオリティーのフードやかわいい洋服、首輪、ベッドなどをたくさん用意しています。
 
新しく自分の店を立ち上げるに当たって、不安はもちろんあります。最初に考えていたよりスペースも倍ほど広い。でも学校に行っている頃から主人が協力的で、全面的にサポートしてくれているので感謝しています。
 
アメリカのグルーミングのスタイルは、カットの仕方なども日本とは違うようです。日本では、学校を出ても最初は洗わせてもらうことすらできないと聞きますが、アメリカは実力主義です。日本のトリミングスクールを出た人がこちらに勉強に来れば、日本とは違った技術が学べるのではないでしょうか。
 
(2005年5月16日号掲載)

「アメリカで働く(多様な職業のインタビュー集)」のコンテンツ