臨床栄養士(医療・福祉系):グロスナー早矢路さん

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運動と栄養のスペシャリストとして
多くの人を健康にしてあげたい

アメリカで夢を実現させた日本人の中から、今回は臨床栄養士のグロスナー早矢路さんを紹介しよう。健康に欠かせない「運動」と「栄養」、両方で資格を持ち、栄養士とフィットネス・インストラクターとして、2足のわらじを履きこなす。多くの人が健康な生活を送れるよう、指導に忙しい。

【プロフィール】ぐろすなー・さやじ■1962年広島生まれ。筑波大学体育専門学群卒業後、セントラルスポーツにてフィットネス・インストラクターとして勤務。渡米し、サンディエゴ州立大学で栄養学を専攻。資格取得後、UCサンディエゴ・メディカルセンター、日本クリニックにて臨床栄養士として活躍する一方、パーソナルトレーナーとしてエクササイズ指導も行っている。

そもそもアメリカで働くには?

健康管理指導に
欠かせない栄養学

RDとして「開業栄養士」について日本で講演

 私は現在、臨床栄養士として働いていますが、もともとは、筑波大学の体育専門学群を卒業し、セントラルスポーツという会社で、フィットネスクラブのインストラクターとして11年間働いていました。そこで、エクササイズによる健康管理を生徒たちに教えていたわけですが、健康管理の指導には「運動」と「栄養」の2つの要素があり、それらは切っても切れない関連性があります。しかし、その当時、私には栄養学についての専門的な知識まではなかったため、統括的な健康管理を指導するために、もっと栄養について勉強したいと思いました。
 
 その頃、自分の生活にも何か変化がほしいと思っていた頃でしたので、思い切ってアメリカへ留学してみました。初めは、英語もままならない状態でしたので、語学学校に通い、その後、コミュニティー・カレッジへ。
 
 当初は、大学院で栄養学を学ぼうと思っていたのですが、Registered Dietitian(RD:米国登録栄養士)は、大学で勉強できることを知り、サンディエゴ州立大学へ入学しました。ここで栄養学を学んだわけですが、正直言って、当時は英語での授業についていくだけで、やっとという感じでした。しかし、不思議なことに、科学系の授業は、日本語よりも英語の方が頭に入りやすく、その点は助かりました。
 
 プログラム修了後には、9カ月間のインターン研修があり、大学で学んだことを病院、フードサービス、透析センター、学校などの現場で、実践を通して学んでいきました。そして、このインターン期間が終了して、いよいよRDとしての認定試験が受けられることに。
 
 大学を卒業後、Registered Dietitianのテストに合格して1年後に、CSCS(Certified Strength and Conditioning Specialist)、2年後にCNSD(Certified Nutrition Support Dietitian)の資格を取得しました。2003年10月からUCサンディエゴ・メディカルセンターにて、Clinical Dietitian(臨床栄養士)として働いています。

ドクターを含め
医療チームの一員

Clinical Dietitianの同僚たちと。下段中央が
早矢路さん

 大学で資格取得を目指して勉強していた時は、まさか自分が病院で働くことになるとは夢にも思っていなかったのですが、学生時代のインターンシップを通して、臨床の現場に興味を持ったことがきっかけでした。また、患者さんのための栄養管理を学ぶことは、将来、健康維持のための栄養指導をする時にも、必ず役に立ってくるのではないかと思い、臨床栄養士になることを決めました。
 
 病院では、病気や事故などが原因で、自分では食事が取れない人たちを中心に、栄養プランを立てています。ドクターを含め、さまざまなポジションの人たちで構成される医療チームの一員となり、その患者さんの状態に合わせ、栄養の摂取方法や配分の種類を選びます。
 
 ドクターは忙しいこともあり、栄養士の意見に耳を傾けない人も、中にはいます。ですから、自分の立てた栄養プランの必要性をきちんと理解してもらうのに、苦労することもあります。逆に、重症だった患者さんが回復していく姿を見ると、大変うれしいですし、私にとっても大きな励みになりますね。

運動・栄養の知識を
共有、提供したい

 また、UCサンディエゴ以外にも、サンディエゴのコンボイ・ストリート沿いにある日本クリニックで、栄養士として働いています。こちらでは、クリニックの患者さんの中で、食生活に注意が必要な方に対して栄養指導を行っているのですが、糖尿病や高脂血症を患っている方が多いですね。そのような患者さんへの適切な食生活のアドバイスが、私の仕事です。
 
 現在、臨床栄養士として働いているほか、フィットネス・インストラクターだった経験を活かし、パーソナルトレーナーとしても活動しています。自宅の一部をホームジムにしており、基本的には、ダイエットや健康維持などの目的に合わせて、その人たちに必要なエクササイズを指導します。
 
 このパーソナルトレーニングを申し込む人たちは、健康志向の高い人が多く、意外にダイエットが目的という人は少ないんですね。0歳から6歳までの子供を対象としたスイミングクラスも実施しており、泳ぐというよりは、子供たちを水に慣れさせるための内容になっています。
 
 私には、2歳と4歳の娘がいるので、子育てと仕事を両立させるのは簡単なことではありません。しかし、今後は運動と栄養のスペシャリストとして、さらに多くの人を健康にしてあげたいというのが、私のビジョンです。
 
 また、現在「eFit & Nutrition」(www.efitnutrition.net)というウェブサイトを運営していて、このサイトでは、私が行っているさまざまな活動に関する詳細が掲載されているほか、メールによる栄養指導なども受け付けています。世界中、どこに住んでいてもアクセスが可能なウェブサイトの利点を活かして、これからもっともっと多くの人たちに、私が持っている運動・栄養の知識を共有、提供していきたいですね。その結果、みんなが健康な毎日を送れるようになれればいいなと思っています。
 
(2007年2月16日号掲載)

「アメリカで働く(多様な職業のインタビュー集)」のコンテンツ