認定介護士(医療・福祉系):吉田直美さん

ライトハウス電子版アプリ、始めました

クライアントの目となり鼻となり耳になって
安心して生活できる環境を作ることが第一

アメリカで夢を実現した日本人の中から、今回は認定介護士の吉田直美さんを紹介しよう。高校生の頃から身体障害者の活動を手伝うボランティアを続け、渡米後はカレッジ卒業後、専門学校で介護を勉強。認定介護士として活動を続け、現在は介護関係のスーパーバイザーとして活躍している。

【プロフィール】よしだ・なおみ■福島県出身。1968 年生まれ。高校卒業後、88 年に留学で渡米。93 年、イーストLA カレッジ卒業後、ホームヘルスエイドとナースアシスタントの資格を取得。99 年、ミレニア設立を機に、パーソナルケア部門のクライアントサービス・スーパーバイザーに就任。日本の介護医療関係者へのコンサルティングなど、多方面で活躍中。

そもそもアメリカで働くには?

高校生の時から 身障者の手伝い

クライアントの立場に立ったサービスができるよう、
スタッフへの教育にも力を入れている

 子供の頃から人を助ける何かがしたいと思っていました。高校生の時に、駅前で身体障害者の人が募金の呼びかけなどの活動をしているのを見かけ、「何かできることはありませんか」と声をかけました。それ以来3年間、彼らが作る新聞作成のお手伝いなどをしていました。祖父はよく発作を起こしていたのですが、祖父を助けてあげられなかったことも、人を助けたいと思った原因かもしれません。
 
 海外へは、小学生の時から、夏休みを利用してホームステイをしている同級生が何人かいたので、ずっと行きたいと思っていました。それで高校を卒業後、海外留学を決めました。
 アメリカでは、最初から医療関係の勉強がしたかったので、カレッジで看護の勉強をしました。ですが、カレッジ在学中にグリーンカードの抽選に当たり、看護の勉強は途中であきらめて、就職するためにとりあえず卒業しました。看護師の資格を取るにはさらに勉強が必要だったからです。
 
 卒業後は4カ月間、ホームヘルスエイドとナーシングエイドの学校に行きました。ホームヘルスエイドとナーシングエイドは、仕事の内容はほぼ同じですが、ご自宅でお世話をするのか、引退者ホームや介護施設などの施設内でお世話をするのかで呼び名が変わってきます。ご自宅でお世話をするのがホームヘルスエイドで、施設内でお世話をするのがナーシングエイドです。
 それぞれに州認定の資格があり、解剖学や微生物学などの専門知識が必要ですが、看護の勉強をしていたのがプラスになりました。州の試験に合格後、ホームケアのエージェンシーに所属しました。ここが現在いる会社「ミレニア」の前身です。

できることは自分で できない部分を援助

研修では人形を使って着替えや
介助の方法を教えている

 ロサンゼルスからオレンジ・カウンティーまで、毎日平均5軒ほど回って在宅介護をしましたが、病院など施設で行う学校の実習とは違い、実際の現場を見ることができて勉強になりました。99年、社長が新しくミレニアを設立し、ヘルパーを派遣するパーソナルケア部門という介護部門を新設したのを機に、スーパーバイザーに就任しました。
 ご連絡をいただくと、まずクライアントにお会いし、身体状況や家庭状況などを査定してサービス内容を決定しますが、できるだけご本人ができることを尊重し、必要な部分でサービスを提供するようにしています。すべてをしてあげれば本人も楽ですし、時間も短縮できますが、それをすると悪影響が出るからです。
 
 日本でも2000年4月より介護保険が始まりました。日本人は親切なので至れり尽くせりのサービスを提供していましたが、それで反対に、生活に支障の出る人が増えるという結果になりました。その後、06年4月より介護保険制度が一部改正され、現在では日本でもできるだけ介護を必要としないように、予防介護の指導を始めています。
 
 人として生まれたのですから、自分でできることは自分でしないと、生きていると実感できません。日常生活の援助をするのが私たちの仕事ですので、ご本人ができることは自分でして、できないところをお手伝いするようにしています。介護というのは、肉体的な面もありますが、精神的なサポートも必要です。それは声のかけ方1つで変わってきます。
 
 高齢になると目が悪くなったり、鼻が利かなくなっていたりするので、安全の確認が第一です。目が悪いために、部屋が汚れていてもわからないことがあるのです。スタッフには、クライアントの目となり鼻となり耳となって、安全な環境を作るように指導しています。そしてクライアントが自分の家で、安心して心地よく生活できるような環境作りを心がけています。ただ、介護に費やせる時間は限られています。決められた時間の中で後悔することがないように、できる限りのサービスを提供したいと思っています。

笑顔で迎えてくれる その瞬間がうれしい

 この仕事をしていてうれしいと思うのは、「また来てくれて、ありがとう」と言われる時です。私が行くのを待っていてくれる、顔を見ると笑ってくれる、その瞬間に喜びを感じます。反対に哀しいと思うのは、危ないと思うことに対して配慮をしても、認知症などでそれをご本人が理解できない時です。そうすると自分でできることが制限されるので、それを見るのが哀しいですね。
 
 当社は社長が日本人ですので、スタッフも日本人が多く、クライアントも日系人が8割、残り2割が日本から移住された方と他の人種の方々です。日系人の方も日本食を希望される方が多く、その点でも日本人のスタッフが必要とされます。高齢者の方が本当に喜んでくださるサービスは食事の準備です。作ったものを一緒に食べて、楽しく時間を過ごすのを楽しみにされているのです。そのため、サービスの中でも食事が占める比重は大きいですね。
 日本も今後は高齢者が増えて、アメリカのように政府の援助が届かなくなってくると思います。その時に戸惑わないように、アメリカのエージェンシーのシステムなど組織的な部分を日本に伝えることができれば、と思っています。
 
(2006年6月1日号掲載)

「アメリカで働く(多様な職業のインタビュー集)」のコンテンツ