ビッグデータ時代のアドミッション

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膨大な情報、ビッグデータを分析して戦略を組み立てることは、現在ではあらゆる業界で行われており、大学も例外ではありません。学生へのダイレクト・マーケティングから入学後の成績の予測に至るまで、あらゆるところでビッグデータが活用されています。今回は、大学がどのように情報を集め、その情報をいかに活用しているかについてお話しします。

データの利用は入学率を上げるため

アドミッションオフィスの目標は、欲しい学生を必要な人数分入学させることですが、その目標達成は年々難しくなっています。その理由として入学率(歩留まり)の低下が挙げられます。
 
大学受験者数の増加に加え、一人の学生が受験する大学数も年々増加傾向にあります。大学のアプリケーションは全てオンライン化され、「コモン・アプリケーション」などの共通出願システムの普及により、複数の大学に志願するためのハードルは大きく下がりました。難関大学の競争激化の影響もあり、今では、一人10校以上出願するのが一般的になっています。
 
一人の学生が数多くの合格通知を得ても、実際に入学するのは一校だけ。各大学にとって、アプリケーションの数が増えるのは喜ばしい反面、実際に入学する学生数の予測は困難を極めています。合格通知を送った学生のうち、実際に進学した学生の割合を示す入学率は、過去10年間で平均10%以上も下がっています。
 
入学率の高さは大学の人気度を示す指標となり、大学ランキングに直結するので、どの大学も入学率を極めて重視しています。また、歩留まりを読み間違えて必要な学生数が確保できなければ、授業料収入に影響するため一大事です。このように、大学にとって入学率は死活問題なのです。

欲しい学生確保のための情報収集

私立大学が学生獲得にかけるコストは、入学者一人当たり約2500ドルと言われています。欲しい学生をしっかり確保するためにはビッグデータの入手と緻密な分析が不可欠であり、そのためにアドミッションは経費を投入するのです。
 
では、大学はどのように学生の情報を入手するのでしょうか。最も簡単なのは、学生の情報を持っている業者からデータを購入する方法です。例えば、College BoardやACTはアドミッション・テストを受けた学生に200項目以上のアンケートを課し、情報提供を許可した学生のリストを提供しています。学生の成績やテストスコア、希望する大学のタイプや専攻、ファイナンシャル・ニーズなど、多面的な情報を大学は一人当たり約35セントで購入できます。SATやACTのテストを受けると、色んな大学から郵便やメールが届くようになるのは、このような理由からです。
 
大学が学生から直接得る情報もあります。キャンパス訪問に来た学生へのアンケートやメール、電話、ウェブサイト、Facebookなどを通じて受けた問い合わせなどから、大学は独自に学生のデータを収集します。このように学生の「自発的な接触」によって得られたデータは、大学にとって非常に大きな意味があります。

「関心度」の高い学生は優遇されやすい

大学がデータを分析する上で極めて重要なキーワードが「関心度」です。関心度は、受験生が大学に対して有する興味の度合いであり、関心度が高い学生は、最終的にその大学を選ぶ可能性が高いと考えられます。つまり、大学にとって学生の関心度を測ることは、入学率を予測する上で極めて重要なのです。そして、学生の大学への「自発的な接触」は、高い関心度の表れと評価されます。
 
大学は関心度の高い学生を優遇します。特にボーダーラインの学生にとって、関心度が合否に大きく影響します。逆に、どんなに優秀であっても、入学の意思のない学生には合格通知を出したくないというのが大学の本音です。大学にとって、入学率が下がるだけでメリットが全くないからです。
 
従って、受験生は自分が希望する大学に対して、高い関心を持っていることをきちんと伝えていくことが重要です。そのためのベストな方法は、自ら積極的に大学にコンタクトすることです。メールのやり取りやソーシャルメディアを通じたコミュニケーションなど、「自発的な接触」は全てアドミッションのデータとして収集され、関心度の評価に反映されるのです。

アドミッションがビッグデータを分析して学生の関心度を測ることは前回説明しました。大学は関心度の高い学生をアドミッションで優遇するため、受験生は希望する大学に対して高い関心を持っていることを伝えることが重要です。では、効果的なコミュニケーションの方法について説明します。

自発的なコンタクトが重要

大学と受験生のコミュニケーションは、願書提出後に始まるわけではありません。学生が大学に資料請求の電話をしたり、キャンパスツアーに参加したりすれば、その時点から始まるのです。最近はFacebookなどのソーシャルメディアを通じて大学に連絡する学生が増えてきましたが、そこでのやり取りは全て大学のデータベースに記録されます。
 
このように、学生が自発的にコンタクトすることを大学は極めて高く評価しますので、ある大学に興味を持ったら、まずはアドミッションに自ら連絡を取ることをお勧めします
興味のある大学なら、質問してみたいことはいろいろあるはずです。特定の専攻やプログラムについての質問も、まずはアドミッションを通して聞いてください。自分が大学に連絡した、という足跡をアドミッションに残すことが大切です。その頻度や方法も重要で、一度連絡したらそれで十分というわけではありません。アドミッション・カウンセラーとは継続的に連絡を取り、質問があれば積極的に聞きましょう。
 
合否に最も大きな影響力を持つのはアドミッション・ディレクターではなく、自分の地域を担当しているアドミッション・カウンセラーです。むろん、アドミッションから受け取ったメールには必ず返信してください。
 
自発的なコンタクトの方法はいろいろありますが、中でもアドミッションが最も高く評価するのが、キャンパス訪問。実際にキャンパスに足を運んで施設を見学したり、学生と話したりする学生は、関心度が極めて高いと評価されます。従って、自分が興味を持った大学はなるべく訪問するようにしましょう。単にアドミッションで有利になるだけでなく、大学への理解が深まり、進学準備を進める上でも大いに役立ちます。
 
キャンパスに一度も訪問しない受験生の入学率が非常に低いことは、データで証明されています。遠方の大学ならともかく、州内の大学を受ける際に事前にキャンパス訪問をしていない受験生は、アドミッションで不利になる可能性が高いでしょう。

願書を早めに提出して大学に関心度を示す

締切直前に願書を提出する学生よりも、早期に提出する学生の方が入学率が高いことも、ビッグデータの分析から明らかになりました。願書のオンライン化に伴い、学生が願書を提出した日時を大学が把握しやすくなったこともあり、提出時期を関心度の評価に使う大学が増えています。
 
じっくりエッセイを練りたいという受験生の考えも分かりますが、他の受験生より早く願書を提出する価値は大いにあることもぜひ考慮しましょう。早期提出で、早めに合格通知が得られたり、奨学金やファイナンシャル・エイドで有利な条件が得られる可能性もあります。 早期締切(Early Action)が設定されている大学もあるので、ぜひこの制度を利用しましょう。ただし、その場合でも締切直前ではなく、早めに提出する方が関心度の評価で有利となります。

データ活用方法の進化と今後の見通し

ビッグデータ活用の進化に伴い、関心度の評価方法も日々進化しています。例えば、最近ではFAFSAのデータが関心度の評価に利用されるようになりました。FAFSAとはファイナンシャル・エイドを受ける際に大学に出す書類ですが、これには堤出する大学を10校まで申請できるようになっています。このリストの上位に記載されている大学は、学生が実際に入学する可能性が高いことから、このFAFSAのデータを関心度の評価に積極的に活用する動きが出てきました。
 
今後も学生の関心度を測る新たな指標が出てくると思いますが、一方でこのようなビッグデータの分析から得られる情報は表面的なものであり、人と人のコミュニケーションに取って代わるものではありません。どんなにデータの活用が進化しても、受験生にとって、アドミッション・カウンセラーと直接やり取りして、信頼関係を築くことが大切だということに変わりはありません。
 
(2015年2月16日号、3月16日号掲載)

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